7月8日 キャッチ!
ニューヨーク コロンビア大学ジャーナリズム・スクールは
優れた報道に与えられるピューリツァー賞でも知られる著名なジャーナリスト ジョゼフ・ピューリツァーが20世紀初頭に創設した大学院である。
これまでアメリカを中心に多くの人材を輩出してきた。
この伝統校がいま拡大するネット社会で活躍できる新しいジャーナリストの育成に取り組んでいる。
コロンビア大学ジャーナリズム・スクールが最も力を入れているのがインターネットを利用したデジタル・ジャーナリズムと呼ばれる分野。
学生たちが自ら立ち上げたプロジェクトの発表会の日。
選挙などのデータを簡単に集めて分析できるようにしたソフトなど20のプロジェクトが披露された。
(コロンビア大学 ベル教授)
「記事が瞬時にネットで共有されるほど現代の報道はデジタル化されています。
膨大な情報による変革で何が起きるか見極める必要があります。
そこではビッグデータの存在が大きな意味を持つでしょう。」
コロンビア大学のジャーナリズム・スクールは創立から今年で102年。
アメリカの優れた報道などに贈られるピューリツァー賞の事務局を務めていることでも知られている。
留学生は学生全体の30%以上にのぼるが最近増加しているのが中国からの留学生。
フォトジャーナリズムを学ぶ中国人の留学生が中心になって立ち上げたサイトでは
ニューヨークの路上生活者いわゆるホームレスの人たちを取材しタンブラーというソーシャルメディアを通じてインターネットで写真を公開している。
(中国人留学生 コン・ヤンさん)
「街中のホームレスの人たちを撮影しインタビューしました。
実情を取材して記事を書けば人々の関心を得られると思います。」
中国人留学生のコンさんとミンさんはアフリカ系のアメリカ人が多く住むニューヨークのハーレム地区を撮影地に選んだ。
しかしお金を要求されたり交通局の職員に撮影をやめるよう求められたりして思うような写真が撮れなかった。
(中国人留学生 ミンさん)
「街角の撮影という意味ではニューヨークは最高ですが
ここでは顔を撮影されることを嫌がる人が多いのです。」
ジャーナリズム・スクールでは撮影や編集の技術的なノウハウは教えない。
こうした知識は学生同士が協力しながら自ら習得するものだとされている。
教授が指導するのはこれとは別のことだと言う。
(中国人留学生 コン・ヤンさん)
「この学校ではただ写真を撮るのではなく
それで“何をどう伝えるのか”を学んでいます。」
一方 ビジネスジャーナリズムを学ぶ学生もいる。
イタリアの大手新聞社の記者として政治の分野を担当してきたダビデ・カラチさん。
数年前 イタリアが財政危機や経済の低迷に苦しんだことで経済報道に関心を持ったと言う。
ジャーナリズム・スクールでは自ら取材し定期的に長文のレポートを提出することが義務づけられている。
カラチさんはニューヨークで関係者に取材しながらヨーロッパの統合や自動車メーカーの再編をテーマにしたレポートを作成した。
(イタリア人留学生 ダビデ・カラチさん)
「教授から教わったのは“ビジネス”とは結局は人の手によるということです。
誰が会社を経営しているのか
誰が役員を務めているのか
ビジネスの話題には常に人が関わっています。」
5月下旬 卒業を控えた学生たちにとって特別な日がある。
“ジャーナリズム・デー”。
教授たちが優秀な学生を表彰するイベントである。
イタリア人留学生のカラチさんはムードメーカーとして学生をまとめた“ナイス・ガイ賞”を受賞した。
イタリアに帰国しこれまで勤めてきた新聞社にもどって政治と経済の両面で幅の広い取材をしたいと考えている。
(イタリア人留学生 ダビデ・カラチさん)
「ジャーナリストとしていい仕事が出来ればイタリア経済の再建や監視に自分が役立つと思います。」
一方 中国人留学生のコンさんとミンさんは卒業後もしばらくアメリカにとどまりジャーナリズムを学ぶ予定である。
ただふたりとも将来は帰国し格差の広がる中国で社会問題などを取材したいと考えている。
(中国人留学生 ミンさん)
「アメリカ流 そして国際的な視点で物事を見られるようになりました。
世界で起きる複雑な問題を報道するためには多様な経験と文化的素養が備わったジャーナリストが必要なのです。」
ジャーナリズム・スクールで学んだ学生たちが
取材のノウハウや最新のデジタル技術を生かしてどのようにニュースを世界に発信していくのか注目される。