日暮しの種 

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安全に対する意識

2015-04-04 12:45:00 | 編集手帳

3月29日 編集手帳

 

「水と安全はタダ」という言葉の原典は、
高度成長期のベストセラー 「日本人とユダヤ人」だといわれる。
イザヤ・ベンダサンと名乗る自称ユダヤ人の著者が、
「日本人は、安全と水は無料で手に入ると思いこんでいる」と書いた。

命の長い警句である。
本の出た四半世紀後に阪神大震災とオウム真理教の無差別テロが起きたときも、
危険に無防備な日本人を語る際の枕ことばになった。

さ らに20年がたち、
さすがに少し時代に合わなくなってきた感もある。
安全に対する意識に限らない。
店で水を買って飲む。
以前は想像すらできなかったことが当たり前になった。

東京都水道局が今年に入り、
水道水をテーマに川柳、短歌、四コマ漫画を募集した。
小学生が詠んだ入選作を紹介したい。
〈小学校まいにち 行列水飲み場〉。
校庭で汗をかいた子供には水道の水もごちそうだろう。

どんな水を飲むかは好みの問題である。
水道水の復権に加担するつもりもないが、
安全な水が簡単に飲めることのありがたみは忘れずにいたい。
原発事故で、
校庭から子供の姿が消え、
蛇口も閉められた学校があった。
つい4年前である。

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そこには恐ろしき酒の精のひそめば

2015-04-04 07:30:00 | 編集手帳

3月27日 編集手帳

 

なぞかけがある。
歌舞伎の好きな方に説明は要るまい。
「理想の酒」とかけて「義経千本桜」と解く。
その心は「静かに、ただ飲む」。
源義経の愛人・静(しずか)御前と家臣・佐藤忠信(ただのぶ)の 名を配したシャレである。

桜の咲く頃は何かと酒の席も多くなる。
飲める人は静かに、
ただ飲む。
飲めない人には無理じいをしない。
改めて、
なぞかけを肝に銘 じていい季節である。

〈未成年飲酒、
 過度の飲酒、
 無理な飲酒を『しない』『させない』ことを約束します〉。
本紙の北海道版によれば、
小樽商科大学が新入生全員に対して誓約書の提出を求めるという。

若い人の命を奪う飲酒事故ほど、
つらく悔しい思いに駆られるニュースはない。
履歴書の趣味欄に「飲酒」と書きたいクチの身で申し上げるのも僭越(せんえつ)だが、
新入生に限らず、
誰もが宴席の前には服用すべき言葉だろう。

北原白秋に『酒の精』という詩がある。
〈酒倉に入るなかれ、
 奥ふかく入るなかれ、
 弟よ
 そこには恐ろしき酒の精のひそめば〉(岩波文庫『北原白秋詩集』)。
自分の人生を断ち切ってまで、
誰かの命を縮めてまで、味わう価値のある酒はこの世にな い。

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