4月8日 キャッチ!
インドネシアを導く全く新しい指導者として
国民からの高い期待を受けて大統領に就任したジョコ・ウィドド大統領。
「今こそすべての国民が手を取り合ってインドネシアを偉大な国へと変えよう。」
この半年の間に公約としていた内政改革を次々に実行に移してきた。
貧しい家庭で育った庶民派の大統領が力を入れたのが
経済成長とともに広がる格差の是正。
ジャカルタ東部に家族5人で暮らすヘルマワティさん一家。
夫がバイクタクシーの仕事をして生計を立てているが
月収は日本円で約2万円。
毎日食べていくのがやっとである。
ジョコ大統領は去年11月 低所得者向けの医療費の無料化を開始。
ヘルマワティさんも瀬尾の制度を利用している。
今まで受けられることが出来なかった小児科の専門医による診察が受けられるようになった。
(ヘルマワティさん)
「いつどんな病気になるかわかりませんからこうした制度はとても助かります。」
ジョコ大統領が取り組むもう1つの課題はインフラ整備。
道路は整備が不十分で年々渋滞も深刻さが増している。
また急速な経済成長に伴い電力使用量はこの10年で倍増したが
発電所の建設は追いついていない。
今年1月 インフラ整備に必要となる海外からの投資環境を整備するために
関係省庁の連携を促進するサービスを開始した。
新たに設けられた事務所にはそれぞれの省庁の担当者が常駐し
何度も各省庁を訪問する必要が無くなった。
ジョコ大統領はこの仕組みを利用することで
これまでに発電所の許認可取得だけで3年かかっていたものを半年近く短縮できると強調している。
(インドネシア投資調整庁 フランキー・シバラニ長官)
「許認可の申請状況はすべてインターネット上に掲載され
投資家は進ちょく常用をいつでも見ることが出来ます。」
ところがこうした改革にもかかわらず
今年に入って大統領の支持率は急落している。
就任前には72%だったが今年1月末には42%に下落。
ジョコ政権は難しい立場に立たされている。
主な要因となっているのが苦しくなった国民の生活である。
インフラ整備や医療費などの資金をねん出するために燃料に対する国からの補助金を撤廃したため
一時ガソリン価格は30%も上昇。
さらに去年からの通貨ルピアの下落に伴い輸入品を中心に物価の値上がりが続き
庶民の生活に大きな打撃となっている。
議会で議席の過半数を握る野党勢力は
ジョコ大統領は国民に負担を押し付けていると批判を強めるなど
苦しい立場に追い込まれている。
また今年1月には自らが指名した国家警察長官候補に汚職疑惑が発覚。
汚職とは無縁の清廉さが支持を集めていただけに政権に対する国民の失望が広がった。
注目を浴びた就任からわずか半年。
ジョコ政権にインドネシアの変革を期待した国民からは
大統領の指導力に対する不満が高まっている。
(市民)
「生活必需品が通貨安の影響で値上がりして大統領の政策にはがっかりしています。」
「ジョコ大統領のリーダーシップが感じられず
何か圧力に負けているように見えます。」
インドネシアの研究所が今年1月に行ったアンケート調査で
医療サービスに対するジョコ政権の満足度は56%と高かった一方
雇用創出政策に対する満足度は36%と最も低く
貧困の撲滅も44%で過半数を割り込んだ。
調査を行った研究所は
“ジョコ政権に対する期待はまだ高いものの実績とのかい離が大きい”として
国民の期待にジョコ大統領が応えきれていないと分析している。
庶民派のジョコ大統領は国民からの支持を失うことだけはどうしても避けたいところである。
そこで大統領が打ち出しているのが国民感情に配慮した
海外からのインドネシアの主権や利益を守る愛国的な政策の強化である。
最近ではインドネシアの領海内で拿捕した外国籍の密漁船について
船を相次いで海上で爆破するなど
外国船の密漁に対して非常に厳しい態度で臨んでいる。
またオーストラリアなど海外の麻薬の密輸犯の死刑に関しても
死刑の中止を求める国々がある中
大多数の国民の意向を受けて予定通り執行する姿勢を見せている。
ジョコ大統領としても外交に活路を見出したい考えである。
港湾施設の整備や海上保安組織の増強などを通じて
インドネシアを海洋国家に押し上げることを掲げている。
3月には日本と中国を歴訪したほか
今年6月にはアメリカを訪れることにしており
主要国と経済面安全保障面を強化することにより
太平洋地域でのインドネシアの存在感を高めたい考えである。
また南シナ海の島々の領有権をめぐり中国とフィリピンなどが対立を続ける中
問題の鎮静化に向けてジョコ大統領は仲介役を果たしたいとしている。
これまでの政治家と違う新しい大統領として国民の高い期待を受けて誕生したジョコ政権。
改革を推し進め
インドネシアのさらなる発展を実現することが出来るのか。
ジョコ大統領の手腕が問われている。