4月8日 編集手帳
『ここはどこだ』という歌がある。
永六輔さんの詞に、
いずみたくさんが曲をつけた。
〈ここはどこだ いまはいつだ なみだはかわいたのか〉。
1966年 (昭和41年)の作品である。
問いはつづく。
〈ここはどこだ いまはいつだ いくさはおわったのか
ここはどこだ きみはだれだ なかまはどこへいった
ここはどこだ きみはだれだ にほんはどこへいった〉
沖縄の戦争に想を得て作られた歌だが、
歌詞から思い浮かべる地名は戦没者の遺族によってさまざまだろう。
遺骨が眠りから目覚めたかのような独り語りに胸が波立つ。
天皇、皇后両陛下はきょう、
西太平洋のパラオを戦没者慰霊のために訪問される。
約1万人の日本兵が死亡した激戦地の島には、
見つかっていない遺骨も多い。
皇后さまが以前、
硫黄島で詠まれたお歌を思い出す。
〈慰霊地は今安らかに水をたたふ如何(いか)ばかり君ら水を欲(ほ)りけむ〉。
パラオに眠る人々も、
どれほどか命の水を欲したことだろう。
にほんはどこへいった…。その問いに答えるために、
日本人の一人ひとりが「戦後」という長い旅をしている。
そう思えてならない。