5月11日 編集手帳
レゲエの神様ボブ・マーリーの、
今日は命日である。
他界から34年。
今もベスト盤は世界で毎年25万枚売れるという。
「アラブの春」の若者たちの合言葉は
〈勇気を出せ、立て、闘いをあきらめるな〉(『ゲットアップ・スタンドアップ』)だった。
父は白人の英軍人。
母は現地黒人女性。
父に見捨てられ、
スラムに育つ。
母の愛と友に恵まれたが、
ジャマイカの黒人社会は混血の少年を妬みもした。
悩み多い青春だった。
邪悪や差別、
偽善を断じる歌の多くは苦悩の産物 だったろう。
恍惚(こうこつ)を誘う旋律とリズムに「光」を見る人は多い。
長い人気の秘密を、
今年出版した伝記的な写真集で評論家の藤田正さんが説いている。
アメリカのこの人々も「光」を求めているのだろうか。
手荒な警官の銃弾や暴力に命を奪われる黒人たちの話である。
リンカーンの奴隷解放令から150年。
警察署長、司法長官、大統領を黒人が務める時代でも闇は消えないらしい。
オバマ氏は黒人だけの肩を持たない。
世論分断を避けたいのだろう。
だが「史上初」の重みを背負う大統領でこその仕事もある。
〈あきらめるな〉の歌を贈る。