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浮世の川の仕事は“あはれ我がのどにも紐ありき”

2015-05-19 07:30:00 | 編集手帳

5月12日 編集手帳

 

岐阜県立長良川鵜(う)高等学校の校歌にある。
♪鵜の真似(まね)をして水に入る
 うかれカラスを笑いしに
 あはれ我(わ)がのどに紐(ひも)あ りき
 我が長良川高等学校

実在する学校ではない。
鵜飼いの鵜たちが通う高校があれば歌詞はかくもあろうかと、
画家の安野光雅さんが作詞した。
動物学校の架空校歌集『大志の歌』(童話屋)に収められている。

「鵜の真似をするカラス」とは身のほど知らずの人真似を笑うことわざだが、
のどに紐をもつ鵜は鵜で、
気ままに飛び来ては飛び去るカラスの境遇をうらやむときがあるのかも知れない。

岐阜市の長良川できのう、
1300年の伝統をもつ鵜飼いがはじまった。
〈叱 られて又(また)疲れ鵜の入りにけり〉(一茶)。
大型連休の終わりと重なるせいか、
お互いにまた、
浮世の川で仕事だね…と、
勤め人にはどこか身につまされる風物詩ではある。
水と炎の荘厳にして華麗な光景に酔ったあと、
ふっとよぎるかなしみも鵜飼いの妙味だろう。

残念ながら、
この目でまだ見たことがない。
今年こそは時間をつくってと、
篝(かがり)火(び)を瞼(まぶた)に描くのがこの季節の習いだが、
あはれ我がのどにも紐ありき。

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