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アメリカが警戒する中国の「千人計画」

2020-04-08 07:00:00 | 報道/ニュース

3月17日 NHKBS1「キャッチ!世界のトップニュース」


アメリカ政府は
中国によるサイバー攻撃や産業スパイなどの取り締まりに力を入れているが
近年 注視しているのが中国の「千人計画」である。
「千人計画」は中国政府が2008年に打ち出したプロジェクトで
国外の優秀な科学者や専門家を中国に招き
高度な技術や知識を得る代わりに高額な報酬などを提供する。
アメリカではこの「千人計画」を通じて
知的財産や先進技術が不当に中国に流出していると
警戒する動きが強まっている。

アメリカの名門ハーバード大学。
ここで1月 全米を揺るがす事件が起きた。
科学学部の学部長を務めるチャールズ・リーバー教授が逮捕されたのである。
ナノテクノロジーの権威としてノーベル賞候補にも名前が挙がるリーバー教授の逮捕に全米が驚愕した。
(司法当局 健司)
「教授は中国の千人計画に参加していた。」
リーバー教授はアメリカ国内で国防総省などの政府機関から多額の研究費を受けていた。
しかしその裏で
中国の大学や中国政府とも千人計画の契約を交わしていたのである。
日本円にして毎月500万円余の報酬に加え
年に1,500万円を生活費として受け取っていた。
外国から資金を受ける科学者はアメリカ政府に説明の義務があるにもかかわらず
教授は中国との関係を隠して
虚偽の説明を行ったというのである。
近年 アメリカ連邦議会では千人計画を問題視する声が高まっている。
国内の科学者が大勢千人計画に参加し
情報が流出していると危機感が強まっているのである。
(カーパー上院議員)
「千人計画は
 アメリカが開発した技術の所有権を中国に与えるものです。
 さらに中国は参加する研究者に関係を隠すよう求めています。」
こうした声を受けて司法省とFBIは
「チャイナ・イニシアチブ」と呼ばれる対策チームを起ち上げ
取り締まりを強化している。
リーバー教授だけでなく
核兵器の開発を担うロス・アラモス研究所の科学者や
海洋大気局の研究者など
千人計画の参加者を虚偽の説明という容疑で逮捕してきた。
千人計画への参加自体は違法ではないため
“アメリカ政府に虚偽の説明をした”という容疑をかけて
逮捕に踏み切っているのである。
(チャイナ・イニシアチブ ラリング検事)
「米中の学術協力への悪影響の懸念は否定できません。
 中国が行うアメリカからの技術収奪には
 取り締まりが必要なのです。」
しかし司法省の取り締まりの手法に
批判の声も出ている。
元検事のザイデンバーグ弁護士は
“虚偽の説明”という容疑は恣意的な逮捕を招く危険性があるという。
(ザイデンバーグ弁護士)
「操作本来の目的は新技術の中国への流出の取り締まりです。
 しかし逮捕された科学者らは
 ただ報告を誤っただけです。」
千人計画の捜査による冤罪事件の被害者も声をあげ始めている。
テンプル大学の物理学者 中国系アメリカ人のシャオシン・シー教授。
シー教授は5年前
企業秘密にあたる情報を中国に渡した疑いでFBIに逮捕された。
ところがその後 企業秘密ではないことが判明し
釈放されたのである。
(テンプル大学 シー教授)
「誰かが責任をとらなければなりません。
 また同じことが起きてしまいます。」
シー教授は司法省を訴えて
事件の責任を追及。
千人計画に関連する取り締まりの強化は
自由で開かれた学術研究の場に深刻な影響を及ぼすと
警鐘を鳴らしている。
(テンプル大学 シー教授)
「当局の捜査対象になると
 とても苦しい立場に追い込まれます。
 特に近年
 中国と協力している人は誰でも標的になります。
 非常に恐ろしい状況です。」



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