4月2日 読売新聞「編集手帳」
テレビCMが、
お茶の間に笑顔を届けることがある。
そういう意味で、
樹木希林さん、
岸本加世子さんが演じた富士フイルムのCMは金字塔といわれる。
振り袖姿の希林さんがカメラ店を訪れ、
注文する。
「お見合い写真なものですから、
とくに美しく」。
店員の岸本さんが淡々と応じる。
「フジカラープリントでしたら、
美しい人はより美しく、
そうでない方は、
それなりに写ります」
初放映は1980年のことだった。
それから40年になる今年、
富士フイルムの社名がしばしばニュース記事にあることにお気づきの方は多かろう。
子会社が開発したインフルエンザ治療薬「アビガン」は、
新型コロナウイルスの治療薬になり得る既存薬の一つとして名を響かせている。
政府は治験、承認、増産という図を描く。
試験的な投与では重症化を防ぐ効果が確認されたといい、
計画が速やかに運ぶことを願うばかりである。
もちろん効能にも「それなり」以上の多大な期待をする。
アビガンに限らず薬さえ生まれれば世界に安心が広がることだろう。
どうか人々がくたくたに疲れすぎないうちに、
朗報を。
笑顔を届けて。