教育では、子どもにときとして、大人から「〜しなさい」と命じることが必要な場合があります。
中学生に向き合い、力強くその子を方向づけるかかわり方は、中学教師には必須です。
しかし、いつも子どもに命令したりする必要はないですし、大人が子どもに命令するという関係は、基本的に望ましくありません。
まして、スポーツや部活動では、いつも選手を怒鳴りつける監督、コーチ、顧問の先生が、一昔前にはけっこういました。
試合中に、「どアホ!」とか、「帰れ!」とか、熱中するあまり、言葉を選ばず怒鳴る人が、一昔前の中学校の部活では、見られました。
しかし、部活でも学級でも、授業でもですが、いまの時代は、生徒に問いかけるという指導が必要だと考えます。
「○○をどう思う?」とか「○○だけど、どう思う?」と、いつも生徒に問いかけ、考えさせるのです。
最初は、なかなか対話にならず、ふざけて答える子もいるかもしれません。
答えられない子がいるかもしれません。
それは子どもが、問われ、考えることに慣れていないからです。
しかし、続けていると、怒鳴らなくても、子どもたちは指導者のいくことを聞くようになります。
落ち着かない子は、最初は集中力がないですが、まわりの雰囲気に包まれ、だんだんと聴くようになっていきます。
考えさせる集団活動が生徒同士のしっとりとした関係を紡ぎ出すという効果です。
生徒たちがぐちゃぐちゃにならず、集団の規律が生まれます。
実際に、この指導のしかたを実践している教師がいます。
その教師の授業は、教室に一歩足を踏み入れるだけで、生徒たちが集中している雰囲気が、私に伝わってきます。
授業は、当然どの子にとっても楽しいものとなります。
クラスにいわゆる「まとまり」があり、騒がしくないのです。
そんなクラスでは、学習意欲が高く、知的好奇心に溢れていて、多くの子が「居心地がいい」というのです。
このことは、スポーツにもあてはまります。
怒鳴られないようにビクビクしてプレーするよりも、のびのびとできます。
バス練習もドリブル練習も、選手は規律あるなかで自由にできます。
このように、問いかける指導は、選手が自分の力を引き出して、伸ばしていくのに、ふさわしい環境をつくります。
根性論だけで、 スポーツをする時代は、昔の部活動でした。
大声を出して、強い口調になり、怒鳴らない指導を続けるうちに、中学生なら顧問の先生は何かを考えさせようとしているのだと理解するようになります。
このとき、クラブのなかに、子どもたちのなかに、自発性や自主性が芽生えるのです。
「こうするのだ」という答えを言わず、一貫して子どもたちに問いかけ、考えさせる指導こそが、子どもたちの中のチカラを引き出して、伸ばして育てる秘訣です。
やんちゃな子が多く、学校が生徒指導上荒れていた時代には、怒鳴ったり、命じたりする指導が必要でしたが、いまの時代には、常に問いかける指導こそが求められます。
そして、このやり方は、学校だけでなく、家庭での子育てにもいかせることができると、私は思います。