今年、5月から6月にかけて部活動の全国調査が行われました。
それによると、平日は8割近く、休日は6割ごえで地域のコーチでなく、教員が指導する従来の部活動が続けられていることがわかりました。
そのように、部活動の地域移行は、スムーズに進んでいないのが現状です。
まず、教員にかわる地域の指導者が不足しています。
平日は2時間、休日は3時間までという活動時間が決まっています。
そのため部活指導者として生計を立てることができない制度上の問題があります。
財源も確保できていません。
正直に言うなら、地域移行にかかわるそのようなさまざまな難しさは、現場経験のある学校教育関係者ならある程度は予想できていました。
ヨーロッパでは、住民の楽しみの場として地域のクラブが発展し、スポーツの裾野を広げてきたという歴史があります。
しかし、日本のスポーツは学校の部活動を通して全国各地に普及してきたのでした。
そして、種目ごとに(部ごとに)中体連の組織があり、地区大会→ブロック大会→全国大会へとつながる確固たる組織として、選手を育成するしくみが君臨してきたのです。
そして、基本的に学校の教員(顧問)が、自校の部活指導に加えて、大会運営を自分たちの休みを返上して担ってきたのです。
中体連のおかげで、生徒は学校という身近な環境で、さまざまな種目から好きなスポーツを選び、活動に参加できました。
保読者の金銭的負担も少なくてすみました。
学校が部活動を担うのは、日本特有のメリットであり、それを支えてきたのが、ボランティアとして部活動の指導に関わる教員だったのでした。
その日本独特の一連のしくみは、教員の選手育成の喜びと過重労働という矛盾を抱えながら何年も継続されてきました。
部活によって生徒の成長を支援できるという教育的な有用性を知る現場の学校教育関係者が、現状を継続する方向で努力を重ねてきたのです。
「問題があっても維持していくのがベストではないが、ベター」という、一定の合意のもとに歴史を重ねてきたのです。
校長会も、長年にわたり、学校が担わざるを得ない教育活動として、改革については沈黙を続けてきたのでした。
しかし、教員の働き方改革が進めるうえで、今回国としては部活動を地域に移行していく方針を大々的に打ち出したのです。
たとえは適切ではないかもしれませんが、いったん開けてしまったパンドラの箱は、もうもとには戻せません。
そして、移行にかかわるさまざまな問題が吹き出して、そのしくみ自体が揺らいでいるのが今なのです。
文科省は部活動を地域に移行していくという方針は示していますが、部活動を学校教育の一環であると、従来と同じ位置づけを学習指導要領で定めているままです。
地域に移行していくことを前提に、学習指導要領に表記して、財源と人材確保の課題にしっかり向き合い、地域移行を実現すべきです。
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