箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

演劇の特質とは

2024年08月16日 06時25分00秒 | 教育・子育てあれこれ

先日、わたしは『この世界の片隅に』というミュージカルを、新しくできたSKYシアターMBSへ観にいきました。

客席からの視界は前の列の席と席の間になるような配席構造になっており、とにかく音響設備の素晴らしさが画期的な劇場でした。

そのことはともかく、いまわたしの中に残っているもので、観た演劇について目に見えるものは何も残っていません。

あの劇が演じられていた空間を思い出し、「よかった」という感想が残っているだけです。

そのように、芸術家のなかでも、役者や俳優は残せるものがありません。

音楽家や画家なら、創作物として作品が残りますが、役者や俳優ほそのときそのときの観客のリアクションがあるだけで、創作物として残るものはなにもありません。

もちろんビデオに録画すれば、録画物は残るのですが、それはそのときのコピーに過ぎません。

この見方でいくと、役者や俳優は人間と人間の間の空気のようなものを作る仕事であると言えます。

観客も、セリフよりも役者が醸し出す空気に引き込まれるのです。

世の中は移り変わっても、役者や俳優がつくり出している空気や本質的なものは変わらないのでしょう。

情報が洪水のようにあふれるいまの社会や多忙な日々のなかでも、不動のものとして役者や俳優は存在するのです。

それが、演劇が他の芸術とは異なる特質なのです。

戦争の記憶が薄れるなかで

2024年08月15日 05時57分00秒 | 教育・子育てあれこれ
今日は終戦記念日。
第二次世界大戦の終戦から、来年でまる80年になります。

世界情勢でいえば、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエル・ガザ戦争などが連日報道される中、日本は戦争のない状態、いわゆる平和を維持してきています。

日清戦争が1894年、日露戦争が1904年、第1次世界大戦が1914年、第二次世界対戦が1939年と頻発した戦争の歴史があります。

そのなかで80年間、非戦を続けてこられたのは、その支柱に平和憲法があるからです。

しかし、非戦が長年続くということは、戦争の記憶が、一つまた一つと失われていくことです。

私たちに何ができるのでしょうか。

戦争とは過去のものではありません。

戦争は忘却との戦いです。

戦争の薄れいく記憶を、次世代につなげていくことが、私たちに課せられた使命です。

世界じゅうの人びとが平和に暮らせるよう、わたしは願います。

防災への対策

2024年08月14日 07時44分00秒 | 教育・子育てあれこれ

日本での震度5以上の地震の回数

2022年 15回
2023年 8回
2024年 23回(6月末時点)

日本列島は、統計でいうと、大地震の多発期に入っていると考えられるそうです。

南海トラフ巨大地震は、「30年以内に70〜80%の確率で発生する」といわれています。

ところが、直近の調査では、「防災対策はとくにはしていない」、「どちらかといえばしていない」という人が65%にのぼっていました。

そこに、8月8日、宮崎県日向灘を震源とする震度6弱の地震がおこりました。

南海トラフの地震が起こる可能性が高まったという見解と、防災対策をするようにという注意喚起が報道されました。

次の日から、関西ではスーパーからは2リットルの飲料水がすぐに売り切れになりました。

また、非常持ち出し品を揃える人が増えました。

今後は、都市部、平野部、山間部に関係なく、防災対策をするは人が増えるでしょう。



桔梗の花

2024年08月13日 08時09分00秒 | 教育・子育てあれこれ


桔梗(ききょう)は、以前はよく日が当たる道の脇に見かけることが多くありましたが、最近ではほとんど見ることがなくなりました。

この紫色の高貴な花は、西洋でも「気品」という花言葉とともに、大切にされてきました。

韓国では「トラジ」と言われ、さまざまな調味料といっしょに使われるなくてはならない食材です。

太い根にはサポニンが蓄えられ、のどの薬として今でも使われています。

かすみ草などの花と組み合わせると、素敵な花束となります。

首都圏と地方都市

2024年08月12日 06時21分00秒 | 教育・子育てあれこれ

今、首都圏にある名門の中高一貫校は5年で全てのカリキュラムを終え、高3の1年間は受験勉強に集中するカリキュラムが組まれている場合が多いです。

地方都市と首都圏との間には受験準備に限らず、環境面、それも情報面でかなりの格差があります。

インターネットが発達して情報の格差は縮まってはいますが、たとえば書店の規模や数で、圧倒的な開きがあります。

また、学習塾の数も目的も違います。

東大志望特化型の塾は地方都市にはありません。

そのような首都圏の中高一貫校の出身者が多く東京大学に入学しています。


東京などの中高一貫校から東大に入ってきた人たちからは、経済的にも、心理的にも余裕があります。


しかし、一方で今までの勉強で疲れてしまい、入学時には、すこし息切れしているような側面もあるようです。


今後も首都一極集中が続くなら、東京大学は首都圏の中高一貫校からの入学者が主流になる傾向は変わらないでしょう。



女性活躍の時代とは

2024年08月11日 06時45分00秒 | 教育・子育てあれこれ

中央教育審議会初等中等教育分科会は、2018年に「令和の日本型学校教の構築を目指して」という「中間まとめ」を発表しています。


そのなかで、新しい時代として将来が予測困難な時代を掲げて、それに応じた教育の役割を提起しています。


「将来の変化を予測するのが困難な時代を前に、子供たちは、現在と未来に向けて、自らの人生をとのように開いていくことが求められているのか・・・」


以上の指摘を受けて、わたしが考えるのは、これからの時代は、従前とは異なり、かなり複雑な、単純ではない教育内容が、求められるようになるという課題意識です。



そのうちでも、どんな人財が必要になるかという点では、集団やチームが高まるための、リーダー像も変わってくると思われます。



予測困難な時代に、自分らしくアクションを起こせる人が、リーダーになります。


先頭に立ってグイグイとメンバーを引っ張っていく統率型リーダーというよりも、メンバー一人ひとりの個性を見きわめ、心配りをしながらチームとして最強になれるかを考える人がリーダーとなります。


学校のクラスの中でなら、「オレについてこい」という学級委員ではないのです。


児童生徒一人ひとりに目を配り、丁寧に意見や考えを尋ねて、合意をつくって、いっしょに活動していく学級委員です。


つまり、いわゆる「サーバントリーダーシップ」のある人です。


不安を感じたり悩んだりした時に仲間とともに考え、寄り添いながら前に進んでいく。そのうちに気がつけば周りからまとめ役やリーダーとして認められている。


そのような児童生徒がいま、これからののリーダーになります。


そのことだけを見たとき、新しいリーダーにふさわしいのが男性か女性かという固定的な見方ではありませんが、女性がリーダーになる可能性を広げていくことになるのはたしかです。


そのような広がった可能性が。ほんとうの意味での「女性活躍の時代」の到来なのでと考えます。


音楽学の講義

2024年08月10日 07時33分00秒 | 教育・子育てあれこれ

大学の研究成果は論文や学会での発表がほとんどです。


一般の人びとがその研究成果を知ろうと思ったらかなり手間がかかります。


関西学院大学の「音楽学レクチャーコンサート」は、音楽学を専攻する大学院生の研究を、一般の人びとが市民講座的に気軽に知ることができる機会になっています。


そもそも人文学の研究は生活を豊かにするものであり、一般の人びとに伝えることは大切です。


音楽を楽しむとは、知識よりも感性で聞くものという考えもあります。


それでも楽しめるでしょうが、作曲家や楽器について知識をもっていれば、より深く味わったり、思考が深まったりします。


知識は「荷物」にはならないのです。


そもそも音楽は、歴史的な背景と切り離されるものではないのです。


なぜこのクラッシック音楽が作られたかなどを知れば、何も知らずに聴いたときよりも、思索が深くなるのです。









平和式典が訴えるメッセージとは

2024年08月09日 06時14分00秒 | 教育・子育てあれこれ
今日は、長崎に原爆が投下され、まる79年です。


ほとんどの人びとにとって、被爆地を訪問するのは一生に一度の機会です。


原爆資料館を訪れて遺品と対面し、被爆者の証言に耳を傾ければ、そのとき受けた印象や平和への願いは深く心に刻まれるのです。


このような惨劇に至ったのはなぜなのか、核兵器が使われたら、どんなことが起きるのか。


知識と考えを深めて平和の願いを持ち帰り、おのおののフィールドで平和を広げるのです。


国際情勢や状況がどうであれ、ヒロシマ・ナガサキが訴えてきた普遍的な平和とは何でしょうか。


それは国家という論理を超えた非戦・非核・非力の願い・理念だと思います,


1年に1度、8月6日・9日の平和式典に集った人々は平和の理念とそれを守っていく責務を改めて共有しなおし、連帯しあうのです。


紛争・戦争が起きるどうしようもない世界情勢に行き詰まったとしても、それぞれの地に帰って行動する。


それが平和式典が国という枠を超えた「市民の式典」といわれるゆえんです。




一方、平和と核兵器廃絶のメッセージを世界に発信するならば「唯一の被爆国という被害者の立場だけでは不十分です。


戦争を起こしアジアの人びとを死に至らしめたという過去の歴史に向き合い、戦争を二度と起こさないという決意を固めなければなりません。



小さな子どもの成長にかかわる仕事

2024年08月08日 05時52分00秒 | 教育・子育てあれこれ



学校の教員志願者が減っています。


じつは、保育士や幼稚園教諭を目指す若い人も減っています。


志願者が減るとともに、保育者を養成する教育機関が閉校したり、募集を停止したりしています。


保育士を養成する大学や短大はここ5年間で22校が開校しました。


 

さらに、2025年度に募集を停止することがきまっている23校のうち19校に保育科や幼稚園教育科があります。


その背景にあるのは志願者の減少です。


2024年度の私立大学の一般選抜の教員コースの志願者は、2023年度の87.9%でした。


しかし「保育」は83.9%で、保育系の減少のほうが深刻です。


保育園や幼稚園の実習で、「一人でこんなにたくさんの子どもを見る自信がない」と保育志望をやめる学生が少なからずいます。


また、以前は「小さい子どもが好き」という若い人がいました。しかし、少子化で家庭で小さい子どもに接する機会と減ってきている現実も関係しているようです。


さらには、保育現場で起きた事故が相次いで報道され、「現場はたいへん」という印象が広がったからとも考えられます。


教員と同じく、保育者は人の成長にかかわることのできる仕事で、子どもの成長を親御さんと共に喜びあえる仕事です。


また、最近は不評だった給料面でも待遇改善が進んでいます。


子育て支援の高い専門性をもつ保育者の大切さと保育職の魅力が、社会全体に広がることを願っています。











人口減は消滅にあらず

2024年08月07日 07時27分00秒 | 教育・子育てあれこれ

わたしは、大阪府のなかでも過疎化が進む町に住んでいます。


日本のすべての自治体の4割が「消滅可能性自治体」である。


3カ月ほど前に、そんな試算が発表され、話題になったいます。


過疎化が進み、少子化、高齢化、そして人口減少が社会問題となっています。


ただ、その論議を通して過疎は悪いことと決めつけられているようでモヤモヤする気持ちをいだくのは、わたしだけでしょうか。


何かしら、大都市からの上から目線も感じます。


実際に人びとが暮らしている地域、自治体に「消滅可能性」という言葉を使うのは、過疎地に住む住民にしてみれば、負の烙印を押され、生きることを否定されたように感じるのです。


地方に軸足を置く、そんな生き方を否定されているように感じるのです。



小さいからこそ小回りが利く。医療・介護・福祉がヨコの関係でつながり、スタッフも使命感を持ちます。


顔が見える関係の中でいっしょにやっていくという機運が醸成されていて、住民は安心感をまちます。


そのような自治体もあるのです。


「人口減=終わり」ではありません。


人口が減った中でどう住みやすくするかが大切であり、住民たちが自分で考えて決めていくしくみをつくることが大切ではないでしょうか。


被爆遺構が語るもの

2024年08月06日 08時08分00秒 | 教育・子育てあれこれ
広島への原爆投下から、今日でまる79年となりました。

被爆体験者が高齢になり、原爆被害の実相を語ることができる人が少なくなっています。

生きた人間が語る原爆被害の凄まじさは、たしかに聴く人の心に大きな力で迫ってきます。

ただし私は、ちょうど30年前に被爆地長崎を訪問して、原爆の遺構を見ることから原爆の被害を学びました。

吹っ飛んだ浦上天主堂の鐘、片足で立って残っている鳥居などを見て立ちどまってしまったことは、今でもはっきりと覚えています。

遺構は言葉を語りませんが、原爆の威力や凄まじさを、その存在そのもので人間に無言のメッセージを送ります

もの言わぬ被爆者である被爆遺構は可能な限り保存していってほしいと願います。


ときには、被爆遺構は生きた人間が言葉を語るかわりに、存在そのもので核兵器使用を廃絶しなければならないという、無言のメッセージを送り続け、私たちはその声に耳を澄ますことができるのです。



戦後、一貫して唯一の被爆国として、日本は核廃絶を訴えてきました。

その点で、日本は世界の中で非核のシンボル的存在でした。

しかし、今はアメリカの軍拡の「応援団」ともいう役割を強めていて、世界の平和希求のための非核の障害にもなっているといえそうな政治的な動きをとっています。

日本は、世界から核の脅威を減らし、その廃絶に向けて総力を挙げることこそが、被爆国としての責務であることを再認識しなければなりません。


被爆遺構のメッセージは、そのことを訴えかけているように、わたしは思うのです。






環境問題と子どもたち

2024年08月05日 08時04分00秒 | 教育・子育てあれこれ

2023年8月に国連子どもの権利委員会が環境問題に関する子どもの権利を示しました。


私たちは温暖化防止と聞いたり、環境問題にとりくむときには、とかく大人の生活への影響に視点を置いてしまっています


その点で国連が、温暖化対策や環境問題について子どもの権利に目を向けさせようとしたことには、意味があります。



将来にわたり、若い人ほど大きな影響を与えるようにになるのが気候変動です。


気候変動によって、いま子どもたちの生活は深刻な影響を受けかねない状況になってしまっています。


気候変動は子どもたちの将来の生活を脅かす大きな要因になっています。


また、気候変動に声を上げる子どもは増えてつつありますが、この問題への対策を決める意思決定プロセスにおいて、子どもの意見は尊重されているといえない。


そのような考えを国連が示したのでした。



その提起を受け、国内でも気候変動と子どもの権利をテーマにワークショップの取り組みをしている団体も生まれています。


環境負荷を減らすアイデアや、環境問題対策への子どもの参画の仕方などについて意見を交わしています。


私たちは、次世代の子どもたちに、少なくとも今の現状の環境の状態や気候状態を維持、または改善して引き継いでいかなければなりません。


そうでないと、今より悪化した環境を子どもたちは引きつぐことになるのです。




▶️
子どもたちよ  おまえたちは何を欲しがらないでも 凡てのものがお前たちに譲られるのです。  
太陽の廻るかぎり  譲られるものは 
絶えません  輝ける大都会も そっくり お前たちが譲り受けるのです。  
読みきれないほどの書物も  みんなお前たちの手に受け取るのです 幸福なる子どもたちよ  お前たちの手はまだ小さいけれど---。 
世のお父さん、お母さんたちは何一つ持ってゆかない。  
みんなお前たちに譲っていために いのちあるもの、よいもの、美しいものを、 一生懸命に造っています。 

(河井酔茗の詩集「花鎮抄」の詩 「ゆづりの葉」より)   7/25の詩再掲




子ども食堂の役割は大きい

2024年08月04日 06時20分00秒 | 教育・子育てあれこれ
いまの日本では、夏休みのようなまとまった長期休暇になると食べるのに困る子がいるのが現実です。

給食が食べられなくなるからです。

いまの日本では、三度の食事を十分には摂れない家庭の子がいるのです。

給食は栄養価を考えてつくられた食事ですが、夏休みになると食べられなくなります。

「子ども食堂」は、そのような子どもたちやその保護者たちに栄養のある食事を無料か低価格で提供することを通じ、地域の幅広い世代の人々が交流する場をつくるボランティア活動です。


新型コロナウイルス感染拡大期には、閉鎖に追い込まれた食堂もありましたが、いまはまた全国的に展開されています。


家庭環境によっては、家にいづらい家族関係の子がいますが、そのような子どもたちにとって、子ども食堂はは一つの居場所になっています。


また、ただたんに無料で食事をふるまうだけではなく、料理づくりから子どもたちが参加する子ども食堂もあります。

食は食べることにより命をつなぐ役割をもっています。


それだけではなく、人と人をつなぐ効果もあります。


というのは、おいしいものを食べると人は自然と笑顔になるからです。


苦しいときに「助けて」と言える人が身近にいる。


子ども食堂は、そのような地域をつくる一つの手段なのだと思います。


運営側は、子ども時代に食べておいしかったと思えるものを提供したいと考えます。


「ありがとう」「こんにちは」など、言われてうれしいと思える言葉を伝えていく役割も子ども食堂が担っています。


自己信頼感を維持する

2024年08月03日 06時01分00秒 | 教育・子育てあれこれ
人は生きていくうえでつらいことに出くわします。

他者に助けられて自分が楽しくなるとき、自分への信頼感が高まります。

何でも一人で解決することが強い人ではありません。


50代から60代にかけては、とくに自分の体の変化に加えて親の介護やわが子の自立、職場での立場の変化など激動の時期に重なります。


肉体的にも、精神的にもつらい時期になります。


ただし、つらいけれども、だからこそ考えられることもあります。




つらいときこそ、孤立しないようにしたいものです。人に頼ることで、自分で自分を助けることにつながります。








嫌われる勇気をもつ

2024年08月02日 06時40分00秒 | 教育・子育てあれこれ
人はできるだけ、周りの人たちからよく思われたいものです。

誰だって嫌われることを望まないのがふつうです。

しかし、組織のリーダーになる人は、嫌われる勇気を持つことも必要なのではないでしょうか。


「誰からも良い人だと思われることを目指すと、誰からもどうでもいい人になってしまいますよ。だからこれからは、嫌われる勇気を持ちなさい。」

この言葉は、秋元康さんが高橋みなみさんに伝えた有名な言葉です。

人から嫌われることを恐れるより、欠点や足りないところがあってもいいから、それ以上に魅力のある人になることを諭したのではないかと、わたしは思います。

人からどう思われるかと気にしすぎると何もできなくなるので、嫌われても自分の思うとおりにするのが、ときにはリーダーとしてのあり方なのかもしれません。