2014年7月1日(火)の毎日新聞の夕刊の一面に、「路線価 下げ幅縮小」の見出しと共に2014年度の路線価のニュースが大きく掲載されていました。太平洋ベルト地帯の要衝である東京、大阪、愛知の大都市部で上昇し、それ以外の地方部ではおおむね減少という結果でした。投資資金やオフィス需要増、訪日外国人などの増加がその理由とされています。
路線価:下げ幅縮小 6年ぶり、東京、大阪、愛知など上昇
2014年07月01日 11時05分(最終更新 07月01日 15時17分) 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20140701k0000e040198000c.html
国税庁は1日、相続税や贈与税の算定基準となる2014年分の路線価(1月1日時点)を公表した。全国約34万地点の標準宅地の変動率は平均で前年比0.7%減。6年連続で下落したものの、下落率は前年より1.1ポイント縮小した。宮城、福島、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪の8都府県で上昇し、沖縄県は横ばい。残る38道府県も下げ幅が縮小し、底打ちが鮮明になった。3大都市圏の中心部となる東京、愛知、大阪がそろって上昇したのは6年ぶりで、景気回復を裏付ける形になった。
東日本大震災で被害の大きかった岩手、宮城、福島の3県では、宮城は前年に続き上昇し、福島も上昇に転じた。岩手は前年より1.7%下落したものの、下落率が2.3ポイント縮小した。岩手や宮城の沿岸部では、高台を中心に上昇し、福島でも東京電力福島第1原発事故による避難先となった地域で、上昇や横ばいの地点が目立った。原発事故に伴う旧警戒区域と旧計画的避難区域は、引き続き評価額を「ゼロ」とした。
下落率が3%を超えたのは11県。このうち、和歌山、徳島、高知の3県は東南海・南海地震の発生時に津波被害が予想される地域。青森、秋田、鳥取、群馬、山梨、山口、香川、佐賀の8県も下落率が大きい。
都道府県庁所在地の最高路線価は、札幌、仙台、静岡、京都、神戸、奈良、福岡など18都市で前年より上昇。さいたま、東京、横浜、金沢、名古屋、大阪、広島、那覇の8都市は上昇率が5%を超えた。
路線価日本一は29年連続で東京・銀座の文具店「鳩居堂」前の銀座中央通りで、前年比9.7%増の1平方メートル当たり2360万円。
みずほ証券の石沢卓志・チーフ不動産アナリスト(55)は「アベノミクスにより、大都市の地価が上昇したが、全国平均では下落しており、過疎化が進んでいる地域は相当に厳しい。都市と地方との格差が依然として大きいと言える」と話した。【太田誠一】
【ことば】路線価
主要道路に面した土地1平方メートル当たりの評価額。毎年1月1日時点の価格を国税庁が算出し、相続税や贈与税を計算する際の指標となる。年末までに下落するケースを想定し、毎年3月に国土交通省から公表される公示地価の8割程度を目安に、売買実例などを考慮して決める。
路線価(ろせんか)とは、市街地的形態を形成する地域の路線(不特定多数が通行する道路)に面する標準的な宅地1平方メートル当たりの土地評価額のことを言います。課税価格を計算する基準となるものであり、相続税や贈与税の基となる相続税路線価と、固定資産税や都市計画税・不動産取得税・登録免許税の基となる固定資産税路線価があります。単に「路線価」と言った場合、相続税路線価を指すことが多いそうです。
ちなみに、国税庁が発表する「路線価」と、国土交通省が発表している「地価」は全く別物です。
東京と名古屋では、昨年との比較で10%もの上昇も
2014年度の路線価の1位~4位までの順位の都市です。左側の数字が2013年度の路線価(単位は千円)、右側の数字が2014年度の路線価となっています。%の数字は、対前年変動率となっています。
1位 東京都中央区 中央区銀座5丁目/銀座中央通り 21520→23600 9.7%
2位 大阪府大阪市 北区角田町/御堂筋 7120→7560 6.2%
3位 神奈川県横浜市 西区南幸1丁目/横浜駅西口バスターミナル前通り 6180→6660 7.8%
4位 愛知県名古屋市 中村区名駅1丁目/名駅通り 6000→6600 10%
銀座中央通りでは9.7%、名駅通りでは何と10%もの上昇率となっています。銀座周辺では外国人観光客が増加し、高級ブランド品の売り上げが伸びてきていること、御堂筋北側の阪急梅田周辺は、商業施設や高層オフィスビルの建設ラッシュが続いていること、そして名古屋駅周辺では再開発による高層化が進んできていることが大きな理由です。
日本経済新聞のこの記事が、路線価の上昇を詳しく分析しています。この記事を参考にして、自分なりにまとめてみました。
路線価、大都市圏で上昇鮮明 投資資金やオフィス需要増
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF0100Y_R00C14A7EE8000/
不動産投資信託(REIT)の投資マネー流入も大きな要因?
この日経新聞の記者さんの記事によると、大都市を中心とした日本経済の活性化だけではなく、「不動産投資信託(REIT)」のマネーの流入が増えてきたことが大きな要因の一つであると書いてあります。
では、不動産投資信託(REIT)とは何か? 公衆から調達した資金を不動産に投資する金融商品の一種のことで、特に日本の国内法に則った日本版REIT(J-REIT)のことを単にREITという場合があります。2013年のREITの物件取得額は約2兆2千億円と過去最高を記録しています。そのことによって日銀の金融緩和で資金調達がしやすくなり、物流施設や商業施設の取得を活発化している、という分析になっています。
日本の不動産投資信託の歴史は浅く、2001年(平成13年)に始まったばかりなのです。時価総額の規模で米国、豪州、フランスに次ぐ規模になっていますが、対GDP比ではシンガポールや香港等よりも低い水準にあります。日本が、サッチャー改革後の英国のような金融大国を目指していく以上は、これらの金融工学を駆使した新しい市場をもっと増やしていかなければいけません。
企業のオフィス需要も、地価の押し上げを後押しした
これについては、非常に明快な理由の一つだと思います。実際に東京駅周辺を歩いてみれば、2000年代前半から始まった街全体の再開発工事によって風景そのものが一変してきています。至る場所で高度成長期時代に建設された古いオフィスビルが取り壊され、最新鋭の高層オフィスビルへの建て替え工事が続けられています。この15年間で、東京駅周辺の路線価は急上昇して来ているのです。
記事では、東京都心5区の2014年5月末のオフィス空室率は6.52パーセントで11カ月続けて前月を下回っています。一昔前は、大都市のオフィスの過剰供給が問題になるとの報道が多かったですが、2012年12月から安倍政権による経済政策「アベノミクス」によって、経済が活発になってきています。
28年連続で路線価日本一となった東京・銀座「鳩居堂」前の銀座中央通りです。
「日本一は鳩居堂ではなく、山野楽器ではないのか?」と疑問に思われるかもしれませんが、今回のように毎年7月1日に発表される(その年の1月1日時点の)相続税路線価(国税庁)の日本一が鳩居堂です。山野楽器の場合は、毎年3月下旬に発表される(その年の1月1日時点の)地価公示(国土交通省)の日本一です。