ここ浜田では美味しいものが少なくて我慢がならない。
かつて、郵便局のお姉さんの話を書いたと思うけど、「なんでこの町に来たの?東京に居れば何でもあるのに」と言われて。そこで「いや、人はなんもかも必要なことはなくて、そんなにいらないよ」と答えたが・・・。やはりおいしいものは食べたい。ある程度覚悟はしたが、仕方がないと思って、料理の本をたくさん買ってきた。
和食、中華、京料理、おせち、パンの本、パスタ、魚料理とさばき方、世界の野菜、などなど。もし結婚していたら、奥さんがきっといろいろ試してくれて、おいしいものも教えてくれたに違いない。これだけは、後悔先に立たず!!で、仕方がないから自分で創ろうとしてきた。父が生きていたころ、年末はおせちを作って重箱に入れて届けた。最大25品が記録だ。黒豆、野菜の炊き寄せに始まって、伊達巻たまごに真鯛の西京焼きなど、やれるだけ試したが、銀座のデパートで買えた頃が楽でよかった。独身男が人のために作っているというのも奇妙な絵面だ。
やはり、自分が作ったものより、人に作ってもらった方が美味しい。
先日、上京した時、渋谷の東横デパートの地下、食品売り場でイタリアンチーズにサラミ、スペインのハモン、オリーブの塩漬けを買い、御徒町の吉池ではホヤの塩辛、カニなどを買った。(カニはホテルでビールを飲みながら食べてしまった)みな浜田にないから、都会に出かけた時はこうして物資を調達する。しかし思った通りにものが見つからない。上野に行けば、昔よく食べに行った「絵のある街」という焼肉屋に行ったが、肉も質が落ち、もみだれ、着けだれもまるで別物になっていた。もう行かないだろう。食い意地が張りっぱなしで浜田に戻る。
結局、東横デパ地下で買った、なつかしの「クスクス」を作る。これはベルギーで画学生をしていた時、お金が無くてたどり着いた「腹いっぱいになる食事」として、美術アカデミーのモロッコ人のクラスメイトに教えてもらったアラブ料理だ。クスクスとは小麦粉で作ったパスタのようなものを顆粒状に粉のようになったものに野菜っスープをかけて食べる、要するに「ぶっかけめし」だ。クスクス鍋というものがあって、下でスープ、上でクスクスを蒸す二段鍋だ。貧乏画学生でも、これを買って持っていた。これを最近、再現して食べてみた。当時、鶏がらを買ってきてお出汁を取って、野菜スープにした上等なものにしたら、おいしかったが、5回続けて食べたら、もうしばらく食べたくなくなった。昔を思い出して、懐かしかったからイイカ。まあ、作り過ぎたカレーみたいなものだ。
この町で食べれる美味しいもので満足すべきものは、となりの水産高校のN先生の無添加で塩だけで発酵させて作る「いかの塩辛」「無添加のさつま揚げやマグロやサバの缶詰」「かまぼこ」などが美味しい。他に家の前で春にとれる「わかめ」「アカモク」。渡船金時丸で沖の波止に連れて行ってもらえば、時期が来ればヒラマサや真鯛がいるし、今この頃、剣先イカが釣れている。このイカは釣れたてが美味しい。3日寝せた方が美味しいという人もいるが、釣りたてはぷりぷりで味が繊細で品がある。夜釣りだがまな板やしょうゆにワサビを持参して最高の味が楽しめる。これは東京にはなかった。
そう言えばまだ出雲そばの本格的なものを食べていない。神田の出雲そばは年の暮れによく行ったが、島根は本場だろうが、意外と求める質の高い物には出会えない。
世界は美味しいものであふれていません。手間暇をかけて、お金があればね。
追記:生ハムを作ろう
豚肉は肩ロース肉が良い。塊が大きくて少し脂肪のさしが入っている方が良い。①塩を全体にまんべんなく、しっかりかけて、二日間水気を出してやる。②ソミュール(漬け汁)を作る。A.日本酒に漬けるタイプは、酒にお砂糖を入れて漬ける。B.白ワインに漬けるタイプは、ニンニク、セージ、ローズマリー、タイムなど好みの生ハーブをミキサーにかけたものにやはり砂糖を入れて、月桂樹の葉を一二枚入れて、そこに二三日つけこみ、何度かひっくりかえして味がきんとうにしみこむようにする。そして乾かす。AもBも乾かす時にあらびきの黒コショウを振りかけてから、カギにひっかけて風通しの良いところに干す。陽に当ててはいけない。脂肪が溶けだしてしまう。ヨーロッパの家屋の地下は室温が18度kurtid保てるので良いが、日本では梅雨時期はカビに注意。乾燥した日を選ぶ。乾燥は肉の塊の硬さが均等に硬く、どうじに反発力がある弾力がある状態が良い。乾燥が進めば、売っている様な表面に塩気が白くなって出て来て、中の肉は美しい赤黒い色に変化する。食べるときは薄切りで、じっくり噛んで味わえる硬さが良いだろう。Aのタイプは少しだし醤油を入れても良い。その後にイタリアンハーブミックス(市販の)を振りかけて乾燥させても良い。保存方法はラップに包んで冷凍か、冷蔵する。冷蔵で一週間ほどするともっと味わいが深くなる。
薄く1ミリ程度に切って、ビールのつまみに。次はサラミを作ろう。