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ただの日記

蛇足ながら(太刀と刀)

2020年06月25日 | 重箱の隅
2015.11/01 (Sun)

 前回、日本刀のことについてちょっと思いついたことを書いたんですが、そういえば柔術と柔道の違い(というより関係)とか、剣術と剣道の違い、なんて、意外と知ってるようで知らないものです。現実、ネットで調べたって、ここを的確に捉え、説明している文章には滅多にお目にかかれない。知ってる人は書かないし、知らない人は、「そんな些細なこと、大した問題じゃないだろ?」って。

 以前にこんな文章を書いたので、ちょっと転載します。

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 「刀のこと」                      

 刀の種類って、色々あるんです。そのため、遣い方も似ているようで違うし、破壊力も、殺傷の形も違います。

 まあ、あんまり昔の、剣に似た直刀の片刃刀や、るろうに剣心の逆刃刀なんてのはカットします。

 初めに「太刀(たち)」と「打刀(うちがたな)」の違いを書きます。

 平安時代の武官や、戦国期の鎧武者が、紐で腰に提げているのが「太刀」です。これを太刀を佩(は)く、「佩刀(はいとう)」と言います。
 左手で鞘を握り、固定しないと刀を抜けません。柄(つか)は短く、棟側に大きく反っています。振った勢いで刀を取り落とすことがないようにするためですが、その分、切っ先が対象に届きにくくなるため、柄の反り具合とは逆に切っ先はかぶせ気味になっているように見えます。

 いずれにせよ片手刀法であるため、体の捌き方と刀法は直結し、馬上は言うまでもなく、地面に足を着けての戦いでも、あまり強力な武器とは言えませんでした。
 ただし、名刀と言われる、姿の良い、切れ味の鋭いものは、平安、鎌倉期の、太刀が多いようです。

 「太刀」に対して、室町期以降の武士が、平時、腰の帯に差していたのが「打ち刀」で、一般に「刀」と呼ばれるのは、こちらです。
 帯に差す、帯するので、「帯刀」と言います。
 刃を上に向けて腰に差すため、柄が太刀のように反っていると邪魔です。また、直接腰に差している訳ですから、歩く時、左右に振れて結構歩きにくいものです。(試してみればすぐ納得!)
 そのため、柄反りは小さくなり、刀身とのバランスもあって、柄も長くなりました。
 柄反りが小さくなり、また、長くなった結果、切っ先は太刀のようにかぶせ気味にする必要はなくなります。
 長くなった柄を両手で持つようになったことで、日本独自の両手刀法が生まれました。これは画期的なことです。大発明と言ってもいいでしょう。
 ヨーロッパの、剣を両手で持って戦う場面を、映画などで見られたかもしれませんが、正直、刀法と言えるほどのものではありません。「両手で持たないと重くて辛抱できないから」、程度から向上はしていません。

 「太刀打ち」という言葉は推論ですが、「太刀で打ち合う」のではなく「太刀や打ち刀による争闘」を意味するのではないでしょうか。
 また、「太刀」は「断つ」「截つ」、切り分けるの意味から来ており、
「打ち刀」は「打つ」、ぶつけるようにして遣う刀の意味でしょう。
 「打ち刀」の方が武器として、より実用的になった代わりに、太刀の持つ霊的な力を弱めてしまっているのは、間違いありません。
(「太刀」という名前には布津主神(経津主神)の発動があります)

 
 打ち刀の利便性の高さは、鎌倉時代末期には打ち刀の方が主になっていることでも分りますが、何よりもの証拠は、色々な種類の打ち刀がつくられたことにあります。
 「反りの少ない柄は両手刀法を生んだ」と書きましたが、柄を長くすれば(両の握り間をあければ)少々重い刀でも、つまり、非力でも刀を遣えます。
 重い刀でも遣えるのなら寸延びの刀でも遣えるということになり、刀身が長くなります。
 刃渡り二尺四寸(約72センチ)ほどの刀が、どんどん長くなっていきます。最大の刃渡りは四尺余りにまでなりますが、それに比例して柄も長くなります。柄も四尺余りです。
 戦さには小者に肩に担いで持って行かせ、戦場で自分が刀身だけ抜いて遣う。これを「大太刀」「大野太刀」「背負い太刀」などと言います。
 勿論、前述の「太刀拵え」ではありません。
 叩く様に遣ったり、脚払い(馬の脚)、刺突(しとつ)など、単純な技ながら剛強で、便利な武器だったようです。

 大野太刀は強力ではありましたが、何しろ、デカイ。
 それよりも、大薙刀(おおなぎなた)と打ち刀の間くらいのものはないか。
 それで、刀と薙刀の柄を合わせたような、長巻というのが作られました。

 薙刀のように振り回して遣うには刀身が長すぎる。かと言って、背負い太刀ほどの破壊力は、ない。しかし、これは密集したところでも、ちょっと気をつければ室内でも、随分と有利な武器です。
 実際、赤穂浪士の吉良邸討ち入りの際には多くの隊士が柄を換え、長巻様にしていたと言います。

 もう一つ、特殊な物として「斬馬刀」があります。
 形態は色々のようですが実際に見た物では柄二尺、刀身五尺以上という、刀をそのまま拡大したようなのがありました。
 こんな物、持ち上げられるんだろうかと思うくらいのとんでもないシロモノですが実際持ち主は大力無双。これを戦場で振回していたそうです。
 残念ながら、薙刀の名手に討ち取られたそうですが。熱田神宮の宝物殿に入った、正面に展示してあります。

 基本は打ち刀ながら、そして、両手刀法は同じながら、「背負い太刀」、「長巻」、「打ち刀」は使用法も技術面でも、相応に違いがあります。

 しかし、日本刀法の真髄は、やはり、定寸の打ち刀による操刀法にあります。
 振り上げて振り下ろすという単純な動作の中にある大発明を書こうと思いましたが、今日はここまでにします。

                         2010.02/11 (Thu)

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 もう五年以上も前に書いたものですから、ご覧になった方は僅かと思います。
 で、今回、見直してみて、「太刀」と「刀(打ち刀)」の違いをもう少し。

 確か狂言だったと思いますが、科白(?)というか、一節に「御太刀かたな」という表現が出ていたような記憶があります。
 これは間違いなく「太刀」と「刀」は別物という捉え方からの言葉でしょう。

 実際に能く見るとその形状は大きく異なります。
 太刀の柄は鍔際から柄頭にかけて大きく反っていて、柄そのものが短い。刀の柄は太刀に比べ長く、反りも小さい。

 ややこしいことを言わなくても太刀と刀は置き方が全く違う。
 太刀は柄を上にして、立て掛ける。対して、刀((打ち刀)は刀架に掛ける。その方がおさまりが良い。
 太刀用の刀架に打ち刀を立て掛けたのなんて不細工で見てられない。長い柄が妙に目立つ。
 反対に打ち刀用の刀架に太刀を掛けると大きく反った柄がバランス悪く映る。

 太刀は片手で使うのが基本だから、撫で切りになる。その分、切っ先がグルカナイフのように心持ち、被さり気味になっているものの方が、「太刀(断ち)」の言葉通り、能く切れる。
 刀(打ち刀)は両手で使うのが基本だから、切っ先が被せ気味になっていなくても、修練さえすれば「撫で切り」でも「打ち切り」でもできる。

 またまた余分な話ですが。
 刀を納めるとき「チャリン」と音がするのは、時代劇だけですからね。あんな切羽の緩んだガタガタの刀を持ってたら、太刀筋(断ち筋)は通らなくなるし、目釘は折れて柄から刀身が抜けてしまいます。目「釘」と言ったって、普通は竹ですから。
 それに、効果音で「ビシュッ」、「ズバッ」なんてやってますけど、「パンッ」とか「ドンッ」て音はするでしょうけど、それ以上派手な音はしません。

 刀を抜いて切り合う時、鞘はどうするか。
 落とし差しであっても、閂に差していても邪魔になることは間違いない。突っ立ったまま斬り合うことはないんですから。
 その際は反りを返して(鞘を裏向きにして)ちょっと背中側に回すんです。そうすれば邪魔にならない。

 でも、時代劇で「チャリン」も「ビシュッ」もなくて、「ドンッ」「パンッ」みたいな効果音ばかり、反りを返した鞘が尻の上で踊ってる、なんてことをやると、あまりにも格好が悪い(みっともない)から、やらないんでしょうけどね。
 
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