12月15日(木) 続き
寝坊をして早朝散歩が不可能になったとは言え、それで一日流しちゃならないから、昼過ぎ、買い物に出た。
その帰り道。
交差点で信号待ち。左側にバイクの音が聞こえた。そして、並んで止まった様子。
どんなバイクだろう、排気音の位置がロードバイクより高いからラフロードバイク?
目を向けるとライダーと目が合った。V-strom?
いきなり「人生を楽しんでますなぁ」と声を掛けてきた。
どうもこちらの風体と、寒空の中、マフラー巻いて帽子を被ってまで屋根を開けて走る姿から「数寄者」と見たらしい。
「バイクは寒いでしょう」
と言ったら、待ってましたとばかりに
「寒いのは少しも気にならんのです」「楽しいだけです」
、と、勢いよく喋る。
「寒いでしょう」に続けて「私もバイクに乗ってるんです」と言い繋いだ言葉は、全く耳に届かなかったらしい。
信号待ちだったからそれ以上話すこともできず、実際すぐ信号が変わってしまったので走り出したのだが、彼のあの喋り方からするとおそらく七十代。
歳を取ってからバイクに乗り始めたか、仕事や家庭の事情で長らく辛抱していたリターンライダーなのか。
いずれにしてもこの大柄な男性は今、言葉通りにバイクに乗るのが楽しくて仕方がないのだろう。
こういう人を見るといつも「あ~、バイクで出てりゃ良かった」と思う。
「用事があるから」、「買い物だから」、「荷物を運ばなきゃならないから」と思いながら出た時は大体そんなもんだが、今日みたいにバイク側から声を掛けられることなんて滅多にないから、余計にそう思う。
けど、今日はその滅多にない経験(ライダーから声を掛けられる)をしたので色々なことを思った。
彼からすれば、「軽で屋根開けて走っている物好きな奴がいる。どんな奴だろうと並んで止まった時、そいつを見たら全く仕事をしている雰囲気のない格好で乗っている。おまけに髭まではやしている。どう見たって七十以上だろう。自分と似たような年齢か。物好きな奴もいるもんだ」みたいなところだったろうか。
きっと、買い物に出た帰りとは思ってない。
「そうか。そういう風に見えるんだ」
と思う。
彼は信号待ちで並んだ十数秒の景色のことしか知らない。だからその前後は知らないわけで、買い物に出たことももちろん知らない、屋根を閉めていると気が滅入るから開けているとか、運転がへたくそで走行中、外が見えなくなることが不安だから等の諸事情についてはまったく知らない。
だから判断は「信号待ちで並んだ十数秒」の情報だけで行う。
当然と言えば当然のことだけど、他人というものは、当然その瞬間だけを見て判断するのだということが分かる。
これが「美しい誤解」というやつかもしれない。
とにかく家に帰るまでニヤニヤが止まらなかった。
「人生を楽しんでますなぁ」。
確かに、そう言われてみればそうだ。
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