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ただの日記

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2020年05月06日 | 心の持ち様
2012.09/26 (Wed)

 安倍元総理が自民党総裁に再選されました。
 マスメディアは、まだ衆院選挙も行われないうちから、もう安倍総理が誕生したような物言いで、総裁叩き・自民党叩きを始めています。

 それ自体は問題ありません。
 三年の間、自民党が野党として学んだことは沢山あります。
 なかでも、慎重に言葉を選び、とにかく結束して事に当たる、ということの大事さを叩き込まれたわけですから、そうやすやすとは「ブレない」。
 また、民主党の御老体にインタビューして
 「政治が詰まらなくなったなぁ~」
 なんて東北弁で嘆かせたって、その民主党の代表選の情けなさを我々は数日前に見せつけられた後です、何の共感も持てない。

 それよりも、今回、色々なことを考えさせられました。
 安倍新総裁が、この三年間のお礼(ねぎらい)の言葉を口にした瞬間、谷垣総裁が涙を浮かべたこと。その後に、立候補者の全てが、まず「国のために」、国民のために一致結束してやっていく、と異口同音に宣言したこと。
 石原議員の、「私は体育会系(少林寺拳法三段)」だからという発言の意味するところ(本当にパパに頼り切っている坊ちゃんか?)。町村議員が安倍氏に「今回はやめておけ」と言ったこと。それでも、安倍議員が立候補したこと。石破議員が多くの党員票を集めたこと。

 それに、安倍新総裁が「体調を崩して退任せざるを得なかったこと」、「お友達内閣」との世評等々。
 こんなことを色々と挙げてみると、とても私のような物知らずだって、そう簡単には書けないことばかり、ということに気が付きました(ちょっと遅すぎますけど)。

 それで、今回「お友達内閣」について、以前書いた日記を転載しようと思います。
 先日、二世議員について書きましたが、この「お友達内閣」も同じく見直さねばならないことと思います。
 失敗があるとここぞとばかりに叩くのは世の常ですが、大概はその任を託した者は何の責任も取りません。
 実際、現政権の体たらくをあれこれあげつらっているのは、政権を取るように懸命に持ち上げていたマスメディアであり、民主党に「風」を吹かせた有権者です。
 そして、彼らは「民主党はダメだったけど自民党も~」と、自民党に投票もしないで一括りにして駄目と決めつける。

 いい加減に(無責任に)選んでおいて「好(よ)きに計らえ」と命じておきながら、「こんな筈じゃなかった。民主党はダメだったけど、自民党もね」、はないでしょう。

 でも、民主党に投票しなかった者だって反省すべき点はある。そしてその反省は、為されているとは言えない。 
 我が意に適った発言や行動があれば、ほめるけれど、何かあったらいきなり全否定をする場合が往々にして、ある。
 確かに「一事が万事」ではあるけれど、表面だけ、上っ面だけでそれをやったんじゃあ彼の国の官制デモを笑えない。
 自民党が三年間で学んだ如く、我々有権者は学んできたか。

 何だか前置きばかりになりましたが。
 二年半前に書いた日記です。
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 さて、重豪という藩主は名君であった、と書きました。しかし、それだけのことをやったものの、借財はとんでもない額になり、一年の利息が藩の年収の5倍以上、当たり前なら絶対に返せない状態になってしまった。

 名君です。何とかしなければと色々な工夫をしようとはします。
 しかし、文化、芸術面の優れた人が、経済に強いとは限りません。名君は、家来に仕事を任せます。

 で、結果は、やっぱり、、、です。
 「子孫に借金を残すな」とは、今も言われますが、思い通りにはいかない。重豪も息子に後を託すしかない年齢になり、借金返済が気になりながら、息子、斉宣に家督と借金500万両を譲ることになりました。

 このままでは大変なことになるわけですから、斉宣は藩政の大改革に乗り出しました。抜擢されたのは、樺山主税。島津一門の名家です。

 家老に取り立てられ、藩政改革に取り組むことになった樺山は、同じ学派で「近思録」の輪読会仲間であった秩父太郎季保を呼び出し、全てを託すために、彼を家老に推挙します。

 一門家の樺山が家老になるのは分かります。しかし、その家老が、今度は同じ学派の仲間とは言え、下級武士でしかない秩父太郎を同じ立場の家老に、と推挙し、藩主斉宣もこれを許す。普通に考えたらあり得ないことですが、あった。

 どうも、これは、藩主斉宣の考えが先にあったようです。
 藩政改革のために藩校の学者の中から優秀な人材をと思ったものの、藩校は先代の重豪がつくっているのですから、主流の学者は先代の藩主側についています。そして、彼等は藩政改革ができなかった。
 
 「近思録の勉強会を熱心にやっている秩父太郎という者が居ると樺山が言う。樺山も仲間らしい。よし、それなら、樺山に改革をさせてみよう。」
 「改革のために打つ手は、父重豪が、まだやっていないこと、だ」

 絶体絶命、最後の一手だったのかもしれません。輪読会の首領とは言え、下級武士を家老に取り立てての藩政改革です。これまでに何の実績もない者に、藩政改革を委ねるのです。ですから、藩主斉宣の決心も尋常ではないということになります。
 結果はともかく、斉宣もまた、名君と言えるでしょう。

 「樺伊賀は上から読めばそれはそれ 逆さに読めば馬鹿と読みたり害と読みたり」
 こんな狂歌が残っています。

 樺山主税による藩政改革は厳しい緊縮財政だったようです。  
 あまりの厳しさにネを上げたいのですが、樺山をはじめとして改革に乗り出した者が率先して取り組んでいるのですから、正面切って文句を言えません。

 不満は「樺山が藩政を私している」という形で出てきました。
 確かに、この改革は、近思録の輪読会仲間(近思録党)ばかりが職に就き、それまで藩政改革に当たってきた者は全て罷免されてしまったのです。更に、いくら首領であるとは言え、下級武士の秩父太郎が家老に取り立てられている。

 先代藩主重豪の施政を悉く批判する形になってしまったこの改革は、遂に重豪の知るところとなり、激怒した重豪は、藩主斉宣を隠居させ、改革を中止させます。そして樺山主税、秩父太郎、共に、責任をとって、切腹。
 「近思録崩れ」、という大事件となりました。

 「仲間ばかりで藩の実権を握り、藩政をほしいままにした」事件ということになります。ただ「事実を並べて眺める」だけ、ならそうなります。
 一般的な歴史学者はこれで終わりです。そこから何を汲み取るのか、そこからどんな「論理」という筋道が見出せるのか。それこそが歴史を学ぶ意義です。

 樺山の所領地の領民は、後になって、樺山の墓を建てます。領民には慕われていたということなのだそうです。土地ではいい顔をして、中央ではやりたい放題?
 その辺りの消息を、海音寺潮五郎の短編「太郎死なず」を読んで、考えさせられました。簡単に書いてみます。

 貧乏の不満を口にすることなく、日々学問に明け暮れていた太郎は、樺山から、一緒に藩政改革に取り組んで欲しいと頼まれます。
 太郎は、引き受けることを決心します。親戚一同は大喜び。
 早速、藩職にあるもの、まだ無役の者、上級武士等多くの者が太郎の元に求職にやって来ます。
 ところが太郎はそれらを全て断ってしまいます。

 無役の者は問答なし、で断ります。
 藩職にあるものは「これまでできなかった方が、何をしようと言われるのか」とやり込められる。
 上級武士には俸給はなし、用もなし、と頭ごなし。一族の者も採用しない。
 職に就いたのは、太郎の、ごく近い友人か、近思録党ばかりです。
 周囲の不満は高まる一方。見るに見かねた、一族の長老が、太郎に意見をしに来ます。
 「一族の者は使わぬ、というのは良い。だが、仕事のできる者や、人となりを見て、もう少し何とかならんのか。これでは、お前を恨むものばかりになってしまうぞ」
 すると太郎は
 「この仕事は、これまでに多くの人が取り組んで、誰一人成功しなかったのです。最後に私に回ってきたと思っております。しくじればもとより死ぬ覚悟ですが、私一人が死ぬだけでは済まない。一緒に死ぬる者でなければ、この仕事はできないのです。どんなに仕事のできる人であっても一族であっても、一緒に死ね、とは言えません。」
 つまり、掛け値なしの「一蓮托生」です。「死ぬ時はみんな一緒」です。
 確かにこの覚悟が必要でしょう。でも、普通、そこまで思いつめないようにする。
 
 「仲間ばかりで藩の実権を握り、藩政をほしいままにした」という文から見える印象は最悪、最低の腐りきった藩政です。
 しかし、こんな差し迫った状態の藩政を私して好き勝手に、なんて考える方がおかしいでしょう。
 この文からは正反対の、「秩父太郎以下、近思録党は決死の覚悟だった」という意味を読み取る方が自然ではないでしょうか。

 「太郎死なず」では、切腹の当日、時間の来るまで、いつもと同じく我が子に論語を暗誦させ、教え続ける太郎の姿が書かれています。
 そして、親戚の者に「この人は、死んでも後を子が継ぐ。この人は、死んでも死なないのだ」と呟かせています。

 後年、西郷隆盛は、この藩政改革のために命をなげうった秩父、樺山の学んだ「近思録」を、同じ志から勉強しようと輪読会をはじめます。
 大久保利通、海江田信義(有村俊斎)らも参加したこの会は、「誠忠組」となって、薩摩の近代化の原動力となっていきます。
 まさに、「太郎死なず」、です。

  「仕えるのは藩か主君か(島津重豪という名君②)」から
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