宇宙のはなしと、ときどきツーリング

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観測開始!  JAXAの惑星分光観測衛星“ひさき”

2013年12月04日 | 宇宙 space
JAXAは、惑星分光観測衛星“ひさき”に搭載された、極端紫外線分光装置による木星と金星の分光観測を、11月19日に行い、装置が正常に機能し、科学観測が可能になったことを確認しました。

“ひさき”は、今年の9月14日にイプシロンロケットで打ち上げられた、惑星を専用に観測する衛星です。

打ち上げ後2か月間は、観測のために衛星の姿勢を制御する装置と、観測装置の確認を行っていたんですねー

対象天体を高精度に追尾する“視野ガイドカメラ”は、“ひさき”に搭載された極端紫外線望遠鏡の機能で、すでに正常に動作すると確認されています。


極端紫外線分光装置で撮影した木星のスペクトル
左側が視野ガイドカメラの画像で、そのスリットを通り抜けてきた光の極端紫外線分光画像が右側。
右側の図の横軸は波長を表し、広がって観測されているのは、主に地球周辺の大気の光、そのほかに木星磁気圏の光や、木星オーロラも検出されている。


今回、極端紫外線分光装置も正常に動作すると確認したことにより、科学観測を行う準備が整ったんですねー






視野ガイドカメラで撮影された、
月面クレーターの可視画像。




2014年1月からはハッブル宇宙望遠鏡などと共に、木星の観測を協調して行い、
4月以降は日本のX線天文衛星“すざく”、NASAの“チャンドラ”X線観測衛星、ヨーロッパ宇宙機関のX線天文衛星“XMMニュートン”とも、木星の協調観測行う予定になっています。

今回、観測を行った金星は、惑星の周りを取り巻く磁場の渦“磁気圏”が弱く、
木星は反対に地球よりもはるかに磁気の力が強い、といった違いがあることが分かっています。

“ひさき”は、極端紫外光と呼ばれる波長がごく短く、地球上では大気に吸収されてしまうため観測が困難な紫外線をとらえることができます。
これにより、木星と金星を観測した後には、火星の磁気圏の観測を行うことが目的になっているんですねー

110億年前の銀河系の姿

2013年12月03日 | 宇宙 space
わたしたちの太陽系がある天の川銀河。
この天の川銀河の誕生間もない110億年前ごろの想像図を、NASAが公表しました。
この画像は、ハッブル宇宙望遠鏡による、銀河系に似た約400の銀河の観測をもとに作成されたんですねー

現在の銀河系が、無数の星で白っぽく輝いて見えるのに対して、
淡い青色で、星の材料となる大量のガスを含んでいたとみられています。

太陽系も誕生しておらず、生まれてまもない星を含んだピンク色の星雲も見えるんですねー

現在の銀河系は、上から見ると渦巻状なんですが、このころは中央のふくらんだ円盤状だったようですよ。

プログレスM21-M補給船打ち上げ 新型ドッキングシステムを搭載

2013年12月02日 | 宇宙 space
ロシア宇宙局は11月26日、国際宇宙ステーションへの補給物資を搭載した、プログレスM-21M補給船を打ち上げました。

同機には、将来のプログレスやソユーズ宇宙船での使用を見越した、新型のランデブー・ドッキング・システムが搭載されていて、
今回、国際宇宙ステーションへの接近時に試験が行われるんですねー

プログレスM-21Mを搭載したソユーズUロケットは、11月26日にカザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地から打ち上げれ順調に飛行。
約9分後には、プログレスを軌道に投入しています。

プログレスM-21Mには、国際宇宙ステーションへ補給するための水や推進剤、酸素、そして滞在している宇宙飛行士のための食料や衣類など、合計2398キロの補給物資が搭載されています。
そして、今月の30日にロシアのサービスモジュール“ズヴェズダ”にドッキングする予定になっています。


今回のプログレス補給船の特徴は、何といってもクールスNAと呼ばれる新型のランデブー・ドッキング・システムが搭載されていることです。

クールスNAは、現在のプログレス補給船やスユーズ宇宙船が使用している、クールスAを代替するものです。
クールスAを構成する6基のアンテナのうち、2A0-YKAと3基のAKR-YKAアンテナが、A0-753と呼ばれる1基のアンテナに代えられています。

これにより外見がすっきりしたのですが、もちろん利点はそれだけではないんですねー

消費電力が少なくなったことと、
2A0-VKAとAKR-VKAでは展開式だったのが、A0-753は機体に固定されているので、展開機構に起因する問題が起こらなくなります。

プログレスはM-19Mの時に、アンテナの1つが展開しないまま国際宇宙ステーションとのドッキングを強行したことがあります。

アンテナが閉じたままドッキングすると、国際宇宙ステーション側の何らかの部品と干渉して、損傷を与えたり、ドッキングが妨げられるのではないか、っと心配されたことがありました。
なので、このような心配は今後は起こらなくなるんですねー


またクールスAはウクナイナの企業が製造していて、これまでロシアに対して価格をつり上げるということあったそうです。
でも、今回のクールスNAはロシア製なので、ウクライナへの依存から脱却できることになります。

クールスNAは2012年に、プログレスM-15Mで初めて試験されています。
このときの結果をもとに改良が加えられ、今回のプログレスM-21Mでの正式採用となったわけです。

今後はプログレス補給船での実績を積んだ後、
いずれ有人のソユーズ宇宙船にも搭載されるようです。

標準的なガンマ線放射モデルに合わない? 最大級のガンマ線バースト

2013年12月01日 | 宇宙 space
今年4月に観測されたガンマ線バースト。
比較的近くの宇宙で起こっていたのに、宇宙初期の遠方で起こったものと同じ性質を持つことが分かったんですねー

ガンマ線バーストの可視光での残光(画像中央)

今年の4月27日、極めて強いガンマ線バーストが、しし座の方向に検出されました。
分光観測によって発生源までの距離を測定したところ、ガンマ線バーストとしては近い38億光年だったんですねー
この距離はビッグバンから100億年という宇宙年齢に相当します。

このガンマ線バースト“GRB 130427A”は、モンスターとも言うべき巨大な爆発で、
同規模のものが、38億光年という近傍宇宙で観測される頻度は、60年に1回程度と推定されているんだとか…
宇宙年齢70億年以降に発生したガンマ線バーストとしては、観測史上最大のもののようです。

“GRB 130427A”は、もともとの放射エネルギーが最大級だったうえに、異例と言えるほど近傍で発生したので、過去23年間では、もっとも強いガンマ線と明るいX線残光・可視光残光が観測されました。
そして爆発的な初期の放射から、数日後まで続く残光への時間的発展が、いままでにない精度で調べれたんですねー

遠くの天体を観測することは、過去の宇宙の姿を見ていることになります。

今回のバーストが起こった場所は、
わたしたちの天の川銀河に近く、現在とほぼ同じ宇宙環境と言えます。
にもかかわらず今回のバーストは、初期の宇宙に発生している大多数のガンマ線バーストと同じ特徴を持つことが分かりました。
これは、従来からの標準的なガンマ線放射モデルに疑問を投げかける結果となりました。

従来のモデルでは、巨星の爆発で光速に近い速度で噴出したガスが、周りのガスと衝突して衝撃波が形成されます。
その衝撃波で加速された高エネルギー電子からのシンクロトロン放射が、ガンマ線バーストの残光として観測されるんですねー

このようにシンクロトロン放射で放たれる光子のエネルギーには、理論的な限界があります。

でも今回のバーストでは、その限界を超える950億eVものエネルギーが検出されています。
なので、ガンマ線がシンクロトロンとは異なったメカニズムで、放射された可能性があるようです。