モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

白いステンドグラスの様なウスバシロチョウが舞う陣場平。ホタルカズラ、シュンラン、リュウキュウツツジ、シナノタンポポ(妻女山里山通信)

2023-04-29 | アウトドア・ネイチャーフォト
 ゴールデンウィーク初日は晴れ。在京時代はアート・ディレクターといえどもサラリーマンなので、家族を連れて深夜とか早朝に信州とかに出ましたが。観光地や名所は大混雑なので遠出しないのが帰郷してからの慣例です。花後の貝母の保全作業もあります。9時過ぎに陣場平へ。すでに鞍骨城跡に向かった人達がいたようです。

 なんとウスバシロチョウが1頭だけですが舞っていました。初見です。こんな早く目撃したのは初めてです。ウスバシロチョウ(薄羽白蝶)チョウ目アゲハチョウ科ウスバアゲハ亜科。別名はウスバアゲハ。アールヌーボーのステンドグラスのランプシェードのような翅は僅かに透けています。北欧から中近東の山岳地帯、ヒマラヤ、中央アジア高原などに棲息する北方系の蝶で、氷河期の生き残りです。そのため古典的な蝶といえるわけです。バタバタと羽ばたいて滑空するあまり飛ぶのが得意とはいえない様が、なんとも愛嬌があります。幼虫は、ムラサキケマン、ヤマエンゴサクなどを食べます。

 その幼虫の食草のシロヤブケマン(白藪華鬘)。結実し始めました。ムラサキケマンの白花で、花びらの先端が紫。全部真っ白なのはユキヤブケマンです。

 貝母の花はほとんど散り結実がたくさん見られます。ハナアブとミツバチ達に感謝です。いい仕事してくれています。ラウンドアップなどのネオニコチノイド系農薬を使うと、ハナアブやミツバチは全滅し農業が成り立たなくなります。原料のグリホサート剤も同様。発がん性が強く絶対に使ってはいけません。

 貝母の群生地にある苔むした倒木脇にアカネ(茜)の群生。染色に使います。ヘビイチゴは咲いています。もうすぐキジムシロも咲くでしょう。背後には山蕗が。小一時間採りました。干しホタルイカと煮物にします。大きくなったらソフト鰊と。土を喰らう十二ヶ月の滋味です。

 眩しい日差しに光る貝母。中央にウスバシロチョウが舞っているのが分かるでしょうか。5月中旬には数え切れないほど舞います。初夏の信州は、里山から高原まで本当に素敵です。ぜひおいで下さい。

 貝母の実。直径12ミリぐらいに育っています。最終的には30ミリぐらいになりホウセンカのように弾けます。

 前回エノコログサ(猫じゃらし)を除去した穴を掘り下げ、さらに移植用の穴を掘りました。土は柔らかいのですが、ノイバラの地下茎があってそれを切りながらの作業は腰に来ました。ここに移植します。弾けた種は西に飛ぶので向こうに見えるベンチまで群生は数年で増えていくことでしょう。

 試しに森の奥に散った株を移植してみました。小さな株なので球根もそう大きくはありませんが、来春には開花します。梅雨入りまでにメンバーを集めて2回ほど除草と移植作業をします。

 シロヤブケマンの葉にアカスジキンカメムシの5齢幼虫。背中が人の顔みたいで面白い。成虫になると緑に赤のラインが入って全く別のデザインになる変身昆虫。

 山蕗の葉にアシブトハナアブ。複眼が離れているのでメス。

 ホタルカズラが次々に咲き始めています。赤紫は蕾。

 シュンランはどうなったかなと行ってみたらまだ咲いていました。花期が長いのです。アリが訪問中。

 昼は堂平大塚古墳へ。純白のリュウキュウツツジが満開です。300年前ぐらいに作られた園芸種のツツジ。北アルプスを眺めながら、小鳥のさえずりを聞きながらまったりとランチタイム。

 米が切れそうなので籾米をもって精米のために下山します。12キロ200円。道すがら咲き始めたクサノオウ。(瘡の王) ケシ科クサノオウ属。別名は、皮癬草(ひぜんくさ)。生薬名は、白屈菜(はっくつさい)といいますが、非常に毒性が強いものです。瘡(くさ)・丹毒(たんどく)・湿疹を治す薬効があるために、くさ(瘡)の王と呼ばれるようになったとか。茎は中空で、折ると白汁が出て、橙黄色に変化します。花に触らないように。
 以前遠足の子供達が触っていたので先生に話したら、子供達に話してくださいと言われて拙書を見せながら妻女山山系の自然を分かりやすく話したことがあります。
 花にヤブキリ(藪螽蟖)の幼虫がいます。幼虫の頃は、花粉や花弁を食べ、成長すると肉食性になり昆虫を捕らえて食べるようになります。

 シナノタンポポの群生ですが、ここだけ茎が赤いのはなぜでしょう。シナノタンポポ(信濃蒲公英)在来種カントウタンポポの亜種で、ともに染色体数が2倍体なので受粉しないと種子ができません。外見上は、写真のように総苞片全体の大きさが太く、外総苞片と内総苞片の先端の小角突起とが全く無く、緑色した外総苞片と内総苞片の色の濃さが薄いなどの特徴があります。

 妻女山展望台から望む北アルプスの白馬三山。手前右に茶臼山。その右奥に虫倉山。いずれも自然豊かな歴史ある里山で、切所でも詳しく紹介しています。今夜から明日の午前中は大荒れになりそうです。北アルプスなどに登っている人は早めの避難を。2000m以上は冬山です。里山も強風時は落枝や倒木があり非常に危険です。まず安全を第一に。

 作業と撮影の合間に山蕗を採りました。干しホタルイカと煮ます。生でも茹ででもだめ。干しホタルイカでないと出汁が出ないのです。採りたての若い山蕗はアクが少ないので茹でこぼしは一度だけ。毎日火を入れて3日ぐらいから味が染み込んで美味しくなります。山蕗がもう少し大きくなったら味の濃い鰊との煮物にします。初夏の里山の滋味です。

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『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。地形図掲載は本書だけ。山の歴史や立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。10本のエッセイが好評。掲載の写真やこのブログの写真は、有料でお使いいただけます。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
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陣場平のインセクトホテルを完成。重労働エノコログサの除去。ウワミズザクラとイカリソウ。ミヤマセセリ。コシアブラの炊き込みご飯(妻女山里山通信)

2023-04-25 | アウトドア・ネイチャーフォト
 例年より10日から2週間ほど早い春。並木のアメリカハナミズキは満開です。茶臼山中腹のリンゴも咲いていました。妻女山ではシナノタンポポやクサノオウも。コゴミ、タラの芽、コシアブラなどの山菜は、もうお終いです。花も山菜もゴールデンウィーク前に終わってしまいそうです。

 妻女山里山デザイン・プロジェクトの作業で作ったインセクトホテルを完成させました。初めてなので見様見真似です。どんな昆虫や微生物が入ってくれるのか予想がつくものやつかないものもあり、楽しみです。

 色々な昆虫が集まれば、その昆虫を食べる昆虫や鳥も集まります。里山なら問題ないのですが、益虫も害虫も呼び寄せるので畑や住宅街に設置するときは注意が必要です。

 これが完成形というわけではなく、観察しながら替えていこうと思います。これを作ったのは、千曲市による松枯れ病のネオニコ空中散布が中止されて数年経つのに、一旦増えた樹液バーに集まる昆虫の数が、ここ2年間激減しているからなのです。原因は分かりません。樹液を出す切れ込みを作るとか、シロップのポットを置くとか対策を色々考えています。

 陣場平の貝母群生地へ向かう小道脇に設置しました。看板がないので、なんだろうと興味を持ってもらえると嬉しいですね。福一の原発核爆発の放射性プルームは、長野市にも流れました。主に犀川沿いを登ったので、飯縄山山頂や犀川沿いにはホットスポットが生まれ、野生のキノコや山菜が汚染されました。それは今も減っていません。半減期10万年ですから当然です。私は妻女山山系の各地をガイガーカウンターで測定しましたが、アラームが鳴ることはありませんでした。しかし、現在も軽井沢や佐久方面の山菜やキノコは基準値を超えるものがあります。詳しくは長野県のホームページで確認してください。

 貝母(編笠百合)の群生地。新しいベンチも景色に馴染んでいます。小鳥の鳴き声も増えてきました。まもなく”月日星ホイホイホイ”というサンコウチョウの鳴き声も聞こえるでしょう。

 積石塚古墳の横のベンチ。左の梅の木の枝やベンチの下側に、ムモンホソアシナガバチが巣を作ることがあります。近づくときはよく確認してください。ハイキングにはポイズンリムーバーの携行を。

 赤松の切り株に、粘菌(変形菌)のマツノスミホコリが。割れて胞子を飛ばす準備ができています。左上には未熟も見られます。

 翌日は雨が降る前にエノコログサ(狗尾草:猫じゃらし)の除去。シャベルで掘り出して裏返して根切します。40株ほど掘り起こしましたが、2時間半ほどかかり重労働でした。イネ科エノコログサ属の植物で、一年生草本ですが、株が大きくなると根をびっしりと張り巡らせます。貝母の群生地の方へ繁殖してきたので除去することにしました。小さい株はまた出てくるのでいずれ掘り起こします。この場所には、貝母の球根を移植します。

 陣場平の貝母群生地の周りにはウワミズザクラが何本もあり満開になりました。南側には3本の大きなウワミズザクラがあります。微風に揺れる様は優雅です。

 ウワミズザクラ(上溝桜)バラ科ウワミズザクラ属の落葉高木で、別名はハハカ(波波迦)、コンゴウザクラ(金剛桜)など。遠目で見るととても桜には見えませんがアップにすると、アッ、確かに桜だ。

 花穂をさらにクローズアップするとこんなです。蕾(杏仁香)や実は食べられます。果実酒にも。欧州ではジンに入れたりするそう。古くは占いに使われたことから占溝桜。

 ゴヨウアケビの葉に止まるミヤマセセリ(深山挵)。蛾に見えますがセセリチョウ科ミヤマセセリ属に分類されるチョウの一種です。

 ヒメオドリコソウ(姫踊子草)で吸蜜するミヤマセセリ。テングチョウと共に陣場平や林道でたくさん見られます。

 ウワミズザクラが咲いたのでもしやと思い帰路にイカリソウの群生地へ。やはり咲いていました。

 イカリソウ(錨草)メギ科イカリソウ属 の落葉多年草。漢名はインヨウカク(淫羊霍)といいいますが、その昔、一日に何回も交尾するヤギが、この草を食べていたという故事によります。イカリインという強精強壮成分を含みます。

 コシアブラと鶏むね肉の炊き込みご飯。出汁、醤油、酒、本味醂を全部同量の汁に浸けてから水を適量加えて炊き込みます。生の若葉を加えて蒸らすと香りが立ちます。おにぎりにしても超絶美味。

ゴルゴンゾーラ、ゴーダ、チェダー3種類のチーズのサイコロを入れたコシアブラの味噌ハンバーグ豆乳味噌ソース」という長過ぎる名前の激旨山菜料理。味噌は手作り信州味噌。リンクはオリジナル基本レシピ。

■C.W.ニコルさんの追悼式が信濃町で行われました。『勇魚』出版時には、取材した折に本にサインを頂きました。私が妻女山陣場平の保全活動を始めたのも、黒姫のアファンの森の活動に賛同したからです。森が豊かになれば麓の街も豊かになるのです。逆もまた真なり。ニコルさんと親交があった坂本龍一さんも神宮外苑の再開発による樹木の伐採に反対していました。大きなブナには4000種類の生物が共生関係にあるといいます。人も森なしでは行きていけないのです。

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妻女山SDP 陣場平の作業はベンチとインセクトホテルの設置と危険極まりない掛かり木の除去。昼はこだわりのBBQ(妻女山里山通信)

2023-04-22 | アウトドア・ネイチャーフォト
 今回の妻女山里山デザイン・プロジェクトの作業は、川中島の戦いで上杉謙信が本陣を築いた妻女山陣場平に新たなベンチとインセクトホテルの設置作業と、林道上に掛かり木になった落葉松の除去でした。これらは全て自費で行うボランティアです。ただ日本では誤解がありボランティアは無償活動のことではありません。有償ボランティアというのもあります。ここをマスコミも一般の人も勘違いしています。

 結実し始めた貝母群生地のベンチを取り替えます。新しいベンチはシラカシ(白樫)です。シラカシは水車の歯車に使われるなど堅牢です。防腐剤も塗ってあり耐久性もあり丈夫です。まず接地面を固めます。ベンチはN氏が作ってくれました。

 ドライコンクリートを練ります。

 ベンチの接地面の周囲をコンクリートで固定します。水準器でベンチの水平を測りました。

 こんな感じで設置できました。コンクリートが固まったら土で覆います。木漏れ日が美しい。

 次に積石塚古墳の横に三つベンチを設置しました。いずれも日陰なので、鞍骨山登山の途中に休憩してもらえればと思います。

 貝母群生地の入り口にインセクトホテルを設置しました。昆虫の棲家です。中に小枝や竹、松ぼっくりなどを入れます。

 最後は難関の掛かり木の除去です。まずロープで倒せないか試しましたが失敗。

 立ち枯れの山桑にチェーンソを入れます。非常に危険な作業です。ロープで引っ張ってみましたが、落葉松にヤマフジのツルが絡まっているので倒れませんでした。

 そこでツルを切ってやっと倒すことができました。無事に倒すことができて一安心です。色々な専門知識を持つメンバーなので里山保全活動もなんとかできています。

 落葉松を玉切りします。

 落葉松で折られたヒノキの太い枝を落とします。K氏がハシゴで登って枝とヤマフジを切りました。

 落葉松の根元の部分を引き上げます。

 山桑は高級材で。黄色い材は非常に美しい。持ち帰ります。

 根元が林道に転がり落ちない様に杭で固定しました。イノシシが虫を探して丸太を落とすことがあるのです。

 大変な作業がやっと終わって、堂平大塚古墳の四阿を借りてやっとお昼です。

 ハナイグチの味噌汁、馬肉のホルモン。鰊のアヒージョ、コゴミの出汁醤油煮、山椒味噌、春掘りの長芋、鴨ロース。馬肉のホルモンはタラの芽と一緒にソテーしました。

 焼き肉は牛ロースと豚のカシラ。二日前が30度だったとは思えないほど寒い日でした。ゆるゆると昼餉の時間を楽しみました。

 レンゲツツジも次々と咲きだしています。

 中央の下になんと例年ならゴールデンウィークに咲くウワミズザクラが咲いています。

 翌日は、長男と某里山へコシアブラを採りに行きました。藪山を7キロちょっと歩きました。結構開いていて西日の当たる森のものは開きすぎて駄目でした。まず天ぷらで。コシアブラの炊き込みご飯も。お勧めはコシアブラの味噌ハンバーグ。春掘りの長芋を入れます。ブルーチーズとも合います。レシピをリンクしました。料理名をクリックしてください。コシアブラは、美味しいだけでなく抗酸化作用があり、老化防止にもいいそうです。タラの芽は、山のバターと呼ばれますが、コシアブラも漉油と書くように栄養価が非常に高い山菜です。また、幹を傷つけたときに得られる樹脂は「金漆(ごんぜつ)」と呼ばれる黄金色に輝く塗料になり、古くから珍重されました。

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妻女山陣場平の貝母は結実し始め。レンゲツツジ、ヤマツツジ、ホタルカズラ、テングチョウ、アケビと万葉集(妻女山里山通信)

2023-04-20 | アウトドア・ネイチャーフォト
 川中島の戦いで上杉謙信が本陣を築いた妻女山陣場平の貝母は結実し始めました。前夜の雨というより今日の高温で貝母はしぼみ始めました。結実した花も多く見られます。しかし散っているわけではないので23日の週末までは充分に楽しめると思います。日本でここだけの里山の群生地を楽しんでください。

 実が少し成長すると花びらが散ります。これで直径6ミリぐらい。実の左の葉先はかなりクルクルと丸まっています。これで互いにスクラムを組んで、この時期訪れる爆弾低気圧の強風から身を守っているのです。5月中旬すぎには直径3センチぐらいになります。それを見に来る方もいます。

 通常は花びらが6枚で雄しべも6本ですが、これは7枚。すると雌しべの根元にある実も7つのヒレを持つ糸巻き状になります。

 最高気温は29度。山上でも26度ぐらいあります。日向はもっと。貝母は雪を押し上げて芽吹く様に寒さには強いのですが、暑さには弱い。25度以上の日が続くとしぼんでしまいます。そして夏には消えるカタクリなどと同じスプリング・エフェメラル。春の妖精、春の儚い命。夏から冬は、土の中で球根が来春のために栄養を蓄え育っています。

 貝母は下の方から咲き始め、下の方からしぼんで散っていきます。結実は、昆虫が受粉しやすい上部に多く見られます。
 貝母の薬効について現地ではお話していますが、記事にしたことがなかったので載せます。生薬名 :貝母(ばいも)鱗茎を使用。 主要成分:アルカロイド(ペイミン、ペイミノン)、ジテルペノイド、など。 薬効:鎮咳作用・去痰作用・排膿作用。 薬理作用:血圧降下作用。 用途:鎮咳、去痰、排膿薬として煩熱、めまい、咳、口渇などに。 注意点:心筋を侵す作用があるので副作用として血圧低下、呼吸麻痺、中枢神経麻痺を引き起こす事もある。また、呼吸数や心拍数が低下する事もあるため、使用時は量に注意すべき。(薬草ですが、かなり強い毒草です。全草が有毒)

 逆光に輝く貝母。鶯の鳴き声が聞こえます。まもなくサンコウチョウの鳴き声も聞こえるでしょう。梅雨入り前に、森の中に散った貝母の球根を掘り起こして移植作業をします。それよりも大変なのがオオブタクサやハルジオンの帰化植物の除去。毎年1000本以上抜きます。

 貝母の群生地の中の山蕗も結実しています。

 早いですね。アカネ(茜)も出てきました。アカネ科アカネ属のつる性多年生植物。根が茜色で草木染めの原料になり、古代から使われました。東京の赤坂は、古くは茜が群生していたことから「茜坂」と呼ばれていたそうです。
「あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」 額田王  萬葉集1巻20
「あかねさす 日並べなくに 我が恋は 吉野の川の 霧に立ちつつ」 車持千年 萬葉集6巻916


 昼は堂平大塚古墳へ。作ってきたアジフライサンドで昼餉。枝垂れ桜は散り始めましたが、八重のエドヒガンが満開です。

 なんということでしょう。レンゲツツジがもう咲き始めていました。有毒なので蜜は吸えません。絶対に庭木で植えてはいけないツツジです。信州には湯の丸高原などレンゲツツジが有名な高原があちこちにあります。牧場にも多いのですが、ワラビ同様に牛は食べません。

 ヤマツツジも咲き始めています。こちらは蜜を吸えます。

 羽化したばかりのテングチョウ。真夏は夏眠し、秋にまた舞い、冬にまた冬眠する面白い蝶。ミヤマセセリもあちこちで見られます。

 セリ科のヤブジラミかなと思っていたのですが、葉を見るとヤブニンジンかなと。しかし果実の形が違うのでヤブジラミですね。実がくっつき虫となる厄介者です。

 ゴヨウアケビ(五葉木通、五葉通草)の花。アケビとミツバアケビの自然雑種。陣場平では貝母や山蕗がない場所に実生がたくさん見られますが、大きくはなりません。ほとんど夏を越せずに枯れます。アケビの蔓は昔は薪を縛ったり籠を編んだりしました。

 ミツバアケビ(三葉木通、三葉通草)アケビ科アケビ属の落葉性つる性木本。こちらは秋になる実が食用になります。ミツバアケビには雌花と雄花があり、同じ花序に両方がつきます。写真は雌花。
 万葉集の「さのかた:狭野方」(アケビ)の歌は二首。
「さのかたは 実にならずとも 花のみに 咲きて見えこそ 恋のなぐさに」詠人不知
 アケビを女性にたとえて、結婚できなくともせめて交際だけでもして欲しいと口説いている切ない歌。
「さのかたは 実になりにしを 今さらに 春雨降りて 花咲かめやも」詠人不知
 さのかたは とっくに実になっておりますのに 今さら春雨が降って花が咲くなどということがありましょうか。実になりにしをとは人妻ということで、不倫などしませんわ、という歌。

 下山しようとすると目に青いものが入りました。なんとホタルカズラ(蛍葛)が咲き始めていました。1センチぐらいの緑の中に咲く青い星。ムラサキ科ムラサキ属に分類される多年草。

 二つ前の記事の写真と同じ場所。陣場平から長坂峠への林道。緑が濃くなりました。ガマズミの白い花も咲き始めていました。今年は春が早すぎて速すぎて季節の感覚がおかしくなりそうです。

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2023「妻女山 花と歴史のハイキング」斎場山、堂平大塚古墳、貝母満開の陣場平へ(妻女山里山通信)

2023-04-16 | アウトドア・ネイチャーフォト
 目覚めると豪雨でした。しかし、雨雲を見ると線状降水帯で6時半には通り過ぎました。松代夢空間主催の「妻女山 花と歴史のハイキング」は無事に行われました。

 妻女山駐車場に9時集合のときには、ご覧のような青空。34名の参加で、皆さんを春爛漫の斎場山や堂平大塚古墳、貝母が満開の陣場平へご案内します。

 林道を登ります。雨後で若葉が鮮やかに光っています。要所要所で自然や歴史の話をしていきます。

 長坂峠です。これは数日前の写真。あっという間に緑が濃くなります。信州の春は超特急で過ぎていきます。

 まず斎場山(旧妻女山)へ。ここで斎場山の名前の由来や、川中島の戦いで上杉謙信が最初に本陣とした話、円墳なので古代科野のクニの話。日本人のルーツの話などをしました。ちょっと盛りだくさん過ぎたかもしれません。詳細は右上の検索窓に「川中島の戦い」とか「斎場山」とか「科野のクニ」とか書いて、プルダウンしてこのブログ内でを選び、レンズをポチると該当する記事が出ます。

 続いて御陵願平の端にあるイノシシのヌタ場へ。イノシシの生態の話などを。鼻だけでこれだけ大きな穴を掘った話なども。

 イノシシのヌタ場から林道を長坂峠に戻り天城山(てしろやま)方面へ。

 陣場平への途中のクヌギの大木で樹液バーの話を。上の写真は、2016年の夏の樹液バーの写真です。樹液バーに集まる昆虫たちの話をしました。撮影中にオオスズメバチに100m追いかけられた話も。

 堂平大塚古墳へ。古墳の中も見ていただきました。ここ堂平の盛りだくさんの歴史の話も。

 最後に川中島の戦いで上杉謙信が本陣を築き、現在は希少な貝母の群生地でもある陣場平へ。貝母が満開です。思い思いに撮影したり鑑賞していただきました。菱形基線測点の話も。貝母は23日の週末までは大丈夫でしょう。

 貝母が奈良時代に入ってきた薬草(毒草)であることや、その発見から保全の話も。万葉集に一首詠まれている話はしそこねました。再掲します。
「時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ」丈部(はせつかべ・はせべ)真麻呂(万葉集)
 これが貝母のことであるという説があります。丈部真麻呂は、遠江国山名郡(現在の静岡県袋井市)で徴兵され九州に派遣され国境警備にあたった兵士・防人(さきもり)でした。
 意味は、季節ごとに花は咲くのに、どうして今、母という花は咲かないのだろうか(咲くのだったら摘み取って共に行くのに)。防人というのは、2月に出立しますが、まだ貝母は咲いていません。21歳から60歳までの健康な男子が徴兵されました。任期は三年で、延長もされたそうです。食料・武器は自弁で帰郷は一人で帰るため、途中で野垂れ死ぬ者も少なくなかったとか。人民には重い負担になったようです。

 陣場平や途中の林道脇に咲くクサボケ(草木瓜)。別名は、ジナシ(地梨)。草ではなく、高さ50センチぐらいの低木ですが、鮮やかな朱色の花を咲かせるので意外と目立ちます。また、低木ににつかわしくない梅のような大きな実は薬用酒になり、貧血や疲労回復、不眠症に。煮だし汁は入浴剤になるそうです。

 陣場平入り口にミツバアケビの花が咲いていました。実は食べられます。ひき肉を詰めてブルーチーズソースをかけるとお洒落な和風フレンチになります。
私のレシピ集から「アケビのブルーチーズ入りミソバーグ」のオリジナルレシピ。レシピ集は左のサイドバーのブックマークから。美大生時代に村上春樹さんのジャズ喫茶でアルバイトしていたブログ「国分寺・国立70sグラフィティ」もリンクしています。アンダーラインの文章クリックでも飛べます。

 帰りの林道から見る斎場山。これも数日前の撮影です。12時半ごろに出発地点の妻女山駐車場に戻りました。そしてこのブログの紹介と拙書の紹介を。制癌作用のあるヨモギやタンポポコーヒーの話や農薬や殺虫剤、食品添加物の怖さの話もお役に立てたのではと思います。今回のコースは昨年は年少組の保育園の女の子も歩いたという易しいコースです。松代ゲストハウスの「布袋屋」のKAORUさんも参加してくれました。市民新聞の関係の方も。年齢も様々でした。妻女山山系は、四季折々多彩で豊かな自然が見られ、歴史の遺構もたくさんあります。山城マニアに人気の鞍骨城跡までも90分ぐらいで登れます。もっともっと里山に楽しんでいただければと思います。

 あまりに春が早いので、気になって畑に植えたタラの芽を見に行きました。全部開いていました。危ない危ない採り損なうところでした。コシアブラもワラビも早いでしょうね。うかうかしていられません。

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『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。地形図掲載は本書だけ。山の歴史や立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。10本のエッセイが好評。掲載の写真やこのブログの写真は、有料でお使いいただけます。

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妻女山陣場平の満開の貝母とカスミザクラ、ヤマザクラ。古墳の枝垂れ桜。ニホンカナヘビの交尾の驚愕の顛末(妻女山里山通信)

2023-04-13 | アウトドア・ネイチャーフォト
 雨後の信州は晴れ上がりましたが、黄砂の真只中にありました。出かけようか迷いましたが、里より山の中のほうがまだいいだろうとでかけました。今日も多くの方が花見に訪れてくれました。鞍骨山(鞍骨城跡)登山の途中で立ち寄ってくれた人も何人か。

 山中は上に若葉が芽吹いた樹木の天井があるためか、黄砂は感じません。湿度が20%しかありません。そのためか貝母の葉先もクルッと丸まっています。雌しべの根元が糸巻き上に膨らみ始めています。実になる部分です。5月中旬すぎには直径2センチほどになり、6月にはさく果なので弾けて飛び散ります。

 貝母から見上げると満開のカスミザクラ。

 微風にかすかに揺れるカスミザクラと貝母。見飽きない癒やされる景色です。

 クサボケ(草木瓜)の向こうに貝母。

 これはヤマザクラかな。下部に大きな黒いかたまりが見えますが、これはてんぐ巣病にかかったのです。かびの一種(タフリナ菌)が原因でサクラ類におこる伝染病です。感染すると枝が異常に発生しやがて樹勢が衰えて枯れる原因になります。

 陣場平入り口のハナヤスリ。大きくなりました。アップにすると胞子嚢がヤスリの様だと分かります。

 ミヤマウグイスカグラ(深山鶯神楽)もあちこちで満開です。スイカズラ科の落葉低木。全体に毛が目立ちます。6月に実る赤い実は甘く食べられます。

 堂平大塚古墳へ。枝垂れ桜が満開です。枝垂れ桜は、野生種のエドヒガンから生まれた栽培種やベニシダレ、ヤエベニシダレとか、オオヤマザクラ由来の枝垂れ桜もあります。

 これは八重の枝垂れ桜。華やかです。

 タラの芽も例年より10日ほど早く出ています。ハリギリやコシアブラも早いでしょう。

 陣場平から長坂峠への林道。若葉は目に見えるほどの速さで育っていきます。

 リョウブ(令法)の若葉。若葉は山菜で、茹でて塩もみします。昔は飢饉に備えて植えるよう令がでたとか。そこからの命名。

 木の根元でニホンカナヘビが交尾していました(オスがメスに噛み付いて交尾しようとしている場面かもしれません)。メスは激しく体を振っています。噛み付いているほうがオスです。逃げられない様にとか、排卵を即すためとかの説があります。こんなシーンに遭遇するのも奇跡的なのに。

 突然オスが自分の尻尾を切りました。何が起きたのでしょう。メスはオスを振り切って、オスはどこかに行きましたが、メスは少し上に登ってジッとしていました。切った尻尾はまた生えてきます。このオスはメスに拒絶されたのでしょうか。わけが分かりません。いやあ、とんでもない場面を目撃してしまいました。

 妻女山松代招魂社の八重桜も咲きました。昨年は、花びらを積んで桜茶を作りました。

 妻女山展望台からの善光寺平。飯縄山が黄砂で霞んでいます。黄砂は中国大陸内陸部のタクラマカン砂漠、ゴビ砂漠や黄土高原などの乾燥・半乾燥地域で、風によって数千メートルの高度にまで巻き上げられた土壌・鉱物粒子が偏西風にのって日本にまでやってくる厄介者です。黄砂粒子には、石英や長石などの造岩鉱物や、雲母、カオリナイト、緑泥石などの粘土鉱物が多く含まれているのですが、飛散の途中で中国の排気ガスなどを付着しているため粘性がありこびりつくのが問題です。スギ花粉の10分の1の大きさのため、体の奥まで入り込み悪さをします。気管支炎、気管支喘息、心筋梗塞との関連があるそうです。

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『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。地形図掲載は本書だけ。山の歴史や立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。10本のエッセイが好評。掲載の写真やこのブログの写真は、有料でお使いいただけます。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
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天城山林道のカタクリとキブシ。妻女山陣場平の満開の貝母をフィッシュアイで撮影。春爛漫(妻女山里山通信)

2023-04-10 | アウトドア・ネイチャーフォト
 春爛漫の信州は、猛スピードで駆け抜けていきます。うっかりしていると撮影チャンスを逃してしまうのでうかうかしていられません。天城山林道のカタクリが咲き始めたという情報をもらったので行きました。髻山の様にびっしりと群生しているわけではありませんが、林道の上下にかなり広い範囲で群生地があります。

 カタクリ(片栗)ユリ科。別名カタゴ、カタカゴ(堅香子)、ハツユリ(初百合)。種にアリが食料とするエライオソームという物質がついているため、アリによって運ばれるアリ散布植物です。日本にはアリによって増えるアリ散布植物が200種以上あります。左上の光っている線は蜘蛛の糸。

 花は温度により開閉します。17-20度で開花し、25度では完全に反り返り始めます。気温はそれほどなくても、直射日光に当たると花びらの体温が上昇するようです。

 少し変わった構図で。バックの色合いが面白いので載せました。妻女山山系にはヒメギフチョウはいませんが、聖山とか子檀嶺岳へ行くとカタクリで吸蜜するヒメギフチョウが見られます。陣場平では、ヒメギフチョウと間違いやすい春型のキアゲハが舞っています。鶯も鳴き始めました。まもなくサンコウチョウも。

「もののふの 八十(やそ)乙女らが 汲みまがふ 寺井の上の 堅香子(かたかご)の花」大伴家持(万葉集)
 当維持29歳の大伴家持が、赴任先の越中国府の伏木(現在の富山県高岡市伏木に5年間赴任)で、寺井の井戸(井泉の跡と歌碑がある)の周りにたくさん咲くカタクリを宮中の乙女になぞらえ、都を懐かしんで詠んだ歌だといいます。そう思うと写真のカタクリが、美しい乙女に見えてくるから不思議です。
 もののふとは、宮廷に仕える文武の官のことで、物部と書きます。八十(たくさんという意味)にかかる枕詞ですが、数が多い氏と発音の同じ宇治川の宇治から、宇治川を導く枕詞となったということの様です。昔もやたらと役人が多かったのでしょうか。もののふとは、後に武士そのものを指す言葉に変化します。

 キブシ(木五倍子)。キブシの髄はスポンジ状で、昔は灯芯などにも使われたようです。髄を取り出すと中空になるので、酒樽の呑み口にも使われたとか。また、江戸時代には既婚の女性はお歯黒にする習慣がありましたが、キブシの実も利用されました。釘や鉄粉を食酢につけて酸化した液に、ヌルデの実、五倍子(ごばいし)やキブシの実の粉末をつけて、歯につけると黒く染まるそうです。

 すごく小さな花なので花の中は肉眼ではよく見えませんが、アップにするとこんなです。

 陣場平へ戻る途中の眺め。松代城の桜はすでに葉桜です。寒の戻りで、信濃町のリンゴには霜被害が出たとか。黄砂も心配です。

 陣場平へ。今日は十数人の団体さんをはじめたくさんの方が訪れてくれました。できるだけ2009年4月の発見からヨシやノイバラ、オオブタクサやハルジオンなどとの壮絶な格闘の保護活動の歴史や、貝母の生態をお話する様にしています。今回はフィッシュアイレンズ(魚眼レンズ)で撮影してみました。左手前から右奥に続く小道の左は、手前が昨年、その向こうは2年前に球根の移植作業をしたところです。メインの群生地は小道の右側です。

 南東の角から。これでも全体は入りきれていません。訪問者は、想像以上に大きな群生地ですねと驚かれます。ここは、川中島合戦の際に上杉謙信が本陣としたということで、古くから陣場平と呼ばれています。

 下の入口から登ってくると、群生地を真横から見ることができます。さく果の種が弾ける時はたいてい東風(こち)が吹くのですが、手前の貝母は南風の時に弾けたのでしょう。北風や西風で周囲に散ってしまった貝母は、球根を掘り起こして中央部に移植します。

 今日はたくさんの方とお話ができました。そんな中で色々な情報を得ることも多いのでなるべくみなさんとはコミニュケーションを取る様にしています。帰りに妻女山展望台に寄りました。千曲川の向こうに戸隠連峰と飯縄山。左には茶臼山と北アルプスの白馬三山が見えます。

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春雨後の妻女山の陣場平の貝母は満開。オオズキンカブリタケ、シロヤブケマン、クサボケ、サンショウの若葉、ヤマザクラ、カスミザクラ(妻女山里山通信)

2023-04-09 | アウトドア・ネイチャーフォト
 春雨後の妻女山陣場平へ。事前に水切りの溝を掘っておいたので林道は泥濘状態ではありません。雨の後なので木々の若葉が一気に出始めました。貝母の見学者も大勢訪れてくれました。天城山林道のカタクリも咲き始めたという情報も得られました。信州の里山は春爛漫です。訪れてくれた方にはできるだけ解説をしています。ただおせっかいにならない様に、興味の分野(自然か歴史かなど)を察知してお話する様にしています。すでに何年も通われて顔なじみの方には今年の状況だけ話すとか。ただ、かなり強い毒草なので盗掘目的の者を見張る必要があるのも残念ながら事実です。

 貝母(編笠百合)は、満開と言っていいでしょう。今年は成長期に積雪もなかったので草丈も高くきれいに咲きそろっています。花に香りがないので甘い香りが充満しているということはありません。慎ましやかな薬草(毒草)です。

 少し冷たい風が吹いて貝母は揺れていました。週明けからは気温が上昇する予報です。4月の茶花なのでお茶をやっている方にはお馴染みの山野草です。ただかなり強い毒草なのでほとんど市販はされていません。

 貝母の群生地の中央にあるクマノミズキの根元の周りにオオズキンカブリタケ(大頭巾被り茸)がいくつも発生しています。アミガサタケの仲間です。

 食菌ですが、水溶性の微毒があるので、一度茹でこぼしてから調理します。ロケット燃料と同じ成分が含まれるとかで、気を付けないと調理中に具合が悪くなる人もいるそうです。醤油には合わず、バターやクリームに合うので、クリーム煮、リゾット、パスタなどに向いています。

 シロヤブケマンが咲き始めました。毒草ですが、5月中旬から陣場平で舞い始めるウスバシロチョウの食草です。

 クサボケ(草木瓜)も咲き初め。バラ科。別名は、ジナシ(地梨)。草ではなく、高さ50センチぐらいの低木ですが、鮮やかな朱色の花を咲かせるので意外と目立ちます。また、低木ににつかわしくない梅のような大きな実は薬用酒になり、貧血や疲労回復、不眠症に。煮だし汁は入浴剤になるそうです。

 陣場平の上の入り口。木々は若葉の季節。ヤマザクラとカスミザクラも咲き始めました。9時半前に来ると何種類もの小鳥のさえずりが聞こえます。 大ヒットした1971年のイギリス映画「小さな恋のメロディ」の劇中歌、ビージーズの「若葉のころ」を思い出します。

 その下の林道上に雨で立ち枯れの落葉松が倒れて掛かり木になってしまいました。山藤のつるが絡みついているのですぐ落下することはなさそうですが、危険なので次の作業で落とします。

 サンショウ(山椒)の若葉。摘んでいる女性がいました。佃煮にするそうです。いずれ私も作ります。

 これは花柄に毛が無く若葉が赤みがかっているのでヤマザクラ。

 こちらは林道の二つ目のカーブに咲くカスミザクラ。

 妻女山招魂社奥の駐車場から左へ林道倉科坂線から東の象山と皆神山。皆神山の山頂は桜が満開です。拙書でも紹介していますが、象山から鞍骨山、天城山を経由して陣場平から斎場山に寄って妻女山へ下るコースは人気です。

 所要の帰りに千曲川の岩野橋の左岸の堤防。菜の花(セイヨウアブラナ)と桃が満開です。菜の花かなと思うとハルザキヤマガラシだったりもするのですが。向こうにオリンピックスタジアムと長野パルセイロのUスタジアム。なんとリンゴの花も咲き始めました。

 妻女山と斎場山の眺め。遠く根子岳の雪もずいぶんと消えています。

 岩野橋の向こうに斎場山から薬師山、笹崎へとつながる長尾根。上杉軍が布陣した山脈です。その向こうに天城山(てしろやま)。左へたどると鞍骨山(鞍骨城跡)です。山腹のあちこちにヤマザクラとカスミザクラが咲いています。この時期の若葉は樹種によって色が異なります。自然が作る美しいタペストリー。

 畑に植えたタラの芽も2週間ほど早く出ました。これからどんどん出てきます。まず天ぷらに。

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妻女山の陣場平の貝母は見頃です。20日ぐらいまで。セリバオウレンの実、オオヤマザクラ、ヒナスミレ、樹液、コゴミ、山吹、花桃、枝垂れ桜(妻女山里山通信)

2023-04-05 | アウトドア・ネイチャーフォト
 4日は晴天、5日は花曇り。いずれも保全作業をして、その後で訪れてきた方にガイドをしました。4日は最低気温が1度で霜が降りました。最高気温が22度で気温差21度。自律神経失調症からくる腰痛が酷くなり参りました。スギ花粉は終わりですが今度はヒノキの花粉。きついです。貝母は見頃です。花期が長いのでゆっくりと楽しめると思います。里山での貝母の群生地は日本でここだけです。奈良時代に入ったとされる薬草でかなり強い毒草です。全草が毒ですが触れるのはかまいません。

 まず花曇りの5日から。訪れた女性が見つけた9枚の花びらがある貝母。雄しべも9本。貝母は普通は花びらが6枚です。雄しべは花弁の数と同じ。しかし、稀に7枚や8枚とかがあるのです。9枚は私が見つけたものでも最も多いものです。10枚は見たことがありません。

 同じ花を別の角度で撮影。こちらの方が數えやすいと思います。枚数の多い貝母を見つけるコツは、花が大きく開いているものを探すことです。

 もうひとつ珍しい花を見つけました。花びらは7枚なんですが、上2枚の花びらが重ならずくっついて上に盛り上がっていて花びらの内側の網目模様が外側に見えています。

 セリバオウレンは結実しています。

 東側にあるオオヤマザクラが咲き出しました。例年より10日ほど早めです。南側のオオヤマザクラは来週に咲くでしょう。カスミザクラ、ヤマザクラも咲き出すと思います。

 前の記事で紹介したスミレ。どうやらヒナスミレ(雛菫)の様です。画像検索でヒナスミレを見ると分かりますが、地方により変異が大きく、変種や交雑種もあるのでスミレの同定は大変です。もう少し早く丸葉のアオイスミレも咲くので勘違いしやすいのです。

 前日晴天の4日の貝母。入り口の西向きの真っ先に咲く貝母。まだ上の3輪ぐらいは蕾です。下から咲き始めますが全部開くまでは、天気にもよりますが、10日から2週間ぐらいかかります。

 中心部の貝母。苔むした古い倒木は景色の一部になっているので残してあります。フキの葉も出始めました。
「時々の 花は咲けども 何すれぞ 母とふ花の 咲き出来ずけむ」丈部(はせつかべ・はせべ)真麻呂(万葉集)
 これが貝母のことであるという説があります。丈部真麻呂は、遠江国山名郡(現在の静岡県袋井市)で徴兵され九州に派遣され国境警備にあたった兵士・防人(さきもり)でした。
 意味は、季節ごとに花は咲くのに、どうして今、母という花は咲かないのだろうか(咲くのだったら摘み取って共に行くのに)。防人というのは、2月に出立しますが、まだ貝母は咲いていません。21歳から60歳までの健康な男子が徴兵されました。任期は三年で、延長もされたそうです。食料・武器は自弁で帰郷は一人で帰るため、途中で野垂れ死ぬ者も少なくなかったとか。人民には重い負担になったようです。

 群生地の真ん中にあるクマノミズキが樹液を出しています。これからもっと出ます。やがて発酵して酸味を帯びてきます。無毒なので舐められます。楓の樹液はメープルシロップ。これでパンを焼いたりビールを作っている人もいます。

 日向ぼっこする越冬したヒオドシチョウ。ルリタテハも舞っています。テングチョウやゼフィルスも散見します。

 某所でコゴミも出始めました。一株から全部採ると絶えます。一株からは2、3本。天ぷらや茹でてマヨネーズで。旬のホタルイカとパスタも美味。クセがないので和洋中華エスニックに応用できます。

 こちらも山菜のヨモギ(蓬)。ヨモギ団子やヨモギ大福、ヨモギ餅、ヨモギ天が人気ですが、実は制癌作用がある薬草でもあるのです。

 高速のトンネルの先の斜面にヤマブキ(山吹)が咲きました。これも早いです。

「七重八重花は咲けども山吹の実の(蓑)ひとつだになきぞ哀しき」兼明親王(後拾遺和歌集) 実のと雨具の箕をかけているんですね。太田道灌の逸話で知られる花。 古今亭志ん生『道灌』は一聴の価値あり。花を乾燥させて煎じたものは、慢性のせきに効くそうです。右上の花にワカバグモ(若葉蜘蛛)がいますね。カニグモ科の蜘蛛の網を張らないきれいな色のクモです。以前どこから入ったかパソコンディスプレイの前に現れて外へ逃してあげたことがあります。

 例年なら咲き出す杏は散ってしまいました。ソメイヨシノが満開です。ヤマザクラはこれから。里では桃の花が咲き始めました。赤紫はホトケノザです。レンギョウやユキヤナギも満開です。4月下旬には、向こうに霞んでいる中尾山や茶臼山の林檎畑のリンゴの花も咲き出します。信州の春は短く、次々と花が咲き乱れ、あっという間に初夏を迎えます。

 翌日の6日は朝から暖かく南風が吹いて雲は多めでしたが日も差しました。最高気温は23度。陣場平下の入口のズミも一気に開花しました。

 林道のあちこちにはミヤマセセリがたくさん舞っています。
 ミヤマセセリ(深山せせり)はセセリチョウ科セセリチョウ亜科ミヤマセセリ属。セセリという字は難しいのですが、手偏に弄という字で、つつくとか穿(ほじ)るという意味です。セセリチョウの中で最も早く春に出現するチョウ。早春に産卵し、初夏には蛹になり越冬する年1化の蝶です。食草はコナラ。 コナラの芽ぶきに合わせて繁殖行動をします。

 もしやと思い堂平大塚古墳へ下ると、古墳脇の花桃が満開になっていました。

 花桃のアップ。セイヨウミツバチやハナアブが吸蜜に訪れていました。

 ログハウス横の枝垂れ桜も満開になっていました。昨年より10日ぐらい早いでしょうか。貝母はほぼ満開で、見頃は20日頃までかと思いますが、23日の日曜ぐらいまではなんとか楽しめると思います。

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妻女山の陣場平の貝母の開花状況。見頃は20日ぐらいまで。ヤマエンゴサク、シュンラン、ヒナスミレ?コスミレ? タチツボスミレ、桜満開(妻女山里山通信)

2023-04-01 | アウトドア・ネイチャーフォト
 前の記事から二日後の妻女山陣場平の貝母の開花状況です。撮影の前に保全作業と来週末の妻女山里山デザイン・プロジェクトの作業の準備をしなければいけないので少し早めに到着。まずノイバラの地下茎の掘り起こしを。これが重労働で腰に来ます。その後は撮影ですが、当ブログを見て開花したというので来ましたという方が3組ぐらい。お相手をいいことに休憩タイム。気温は23度まで上がりました。

 貝母の花は下から咲いていきます。頂部まで咲くのはけっこう時間がかかるので、長い間楽しめます。雌しべの根本には、やがて実となる膨らみがあります。

 スマホで撮影の場合は自撮りモードで下から煽って撮影するといいでしょう。花びらは普通6枚なのですが、これは7枚。8枚とかもありますが、雄しべは花びらの数と同じです。

 毎年標本貝母としている陣馬平上の入り口の貝母。かなり開きました。上から4つめぐらいまで開花しています。あと数日で満開になるでしょう。

 陣場平のメインの群生地もぽつぽつ咲き始めました。丸太のベンチは腐って来たので作り変えます。来訪者が増えたのであと二つ作ろうと思います。鳥の鳴き声が増えました。ツピーツピーと鳴くシジュウカラに、ひょっとしてサンコウチョウ?とかキツツキとか。

 反対側の縁の辺りから見ると、この群生地がかなり大きいと分かっていただけると思います。柵やロープで囲っていないので踏まないように気をつけて自由に歩いていただいてかまいません。

 そこから少し左にまわって。貝母は5月下旬には枯れてさく果の種は弾けます。その時に東風(こち)が吹くので貝母は西へと増えていくのです。左上の影になっている斜面の貝母はそうして増えていったものです。

 昼をログハウスでと思って戻ると左奥に青いものが見えました。あれもう咲いたのかなと行ってみると、ヤマエンゴサクが咲いていました。例年より2週間ぐらい早い開花です。

 青っぽい花とこんな風に少し赤みが強いものがあります。ヤマエンゴサク(山延胡索)は、ケシ科キケマン属の多年草。別名、ヤブエンゴサク、ササバエンゴサク。

 前回、野草好きの女性に教えていただいたシュンランのもとへ。咲いていました。シュンラン(春蘭)は、単子葉植物ラン科シュンラン属の蘭です。洋蘭として人気のシンビジウムの仲間。

 清楚な佇まいで人気ですが、アップにするとやはりラン科、なまめかしい。ヒオドシチョウ(緋縅蝶)やルリタテハ(瑠璃立羽)も舞っていましたが撮影できず。

 ヒナスミレ(雛菫)かコスミレ(小菫)か。ちょっと自信ありません。変種や交雑種もあって、スミレの同定は難しい。

 スミレもカタクリやニリンソウなどと同じアリ散布植物です。種につくエライオソームを求めてアリが巣に運び、不要な種を巣の外に捨てます。それで増えるのです。

 昼は堂平大塚古墳の横にあるログハウスを借りて。友人で良き山仲間で保全活動も手伝ってくれた故Kさんのログハウスで。花桃が咲き始めていました。作ってきた明太子マヨとチャンジャマヨのおにぎりとタンポポコーヒーでまったりと昼食。水仙やムスカリが咲いています。小鳥の鳴き声が心地よいBGMです。

 下って林道入口でタチツボスミレ(立坪菫)。これは間違うことがありません。妻女山山系では探せば、アカフケタチツボスミレも見られます。

 妻女山招魂社奥の駐車場。ソメイヨシノが満開です。例年ならば4月中旬が見頃で近隣の小学生が遠足で訪れるのですが、今年は散ってしまいます。ただ、カスミザクラやヤマザクラ、オオヤマザクラ、ウワミズザクラが見られるかも知れません。

 妻女山松代招魂社。戊辰戦争以降の戦没者を祀っています。瓦には真田の六文銭。

 下る途中に枝垂れ桜。桜は400種以上あるので、同定が難しいのです。

 あちこちにタンポポが咲き出しました。総苞が反り返ったセイヨウタンポポとの交雑種が多いのですが、これはシナノタンポポ(信濃蒲公英)。貴重です。
 前回は花粉症対策がいい加減だったので帰って少し寝込みました。反省して今回は鼻腔に白色ワセリンを塗り、抗アレルギー剤を飲み、ポリカーボネートのゴーグル風メガネで防御。なんとか持ちこたえました。やれやれ。なおかつ春は激しい寒暖差で自律神経失調症で腰痛がおきます。春は腰痛が最も増える季節なんです。温めの温泉やお風呂に入るのがいいですね。加えて花粉症。やれやれです。

 週末は土日とも陣場平で撮影は一段落で保全活動をしました。たくさんの方が訪れてくれました。特に日曜日は、10人ぐらいのグループや二人連れの人たちが大勢。できるだけ保全活動の歴史や貝母のことをお話しました。その際は必ずこのブログを紹介しています。ブログでは開花状況を記しているので、それを見て訪れる方もいらっしゃいます。遠くは富山、新潟、東京とか。

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