モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

伊賀筑後オレゴン、通称イガチクの手打ちうどん

2006-09-26 | 男の料理・グルメ
幻の小麦粉といわれる「伊賀筑後オレゴン」、通称イガチクをいただきました。作っているのは、信州上田の「蚕都くらぶ・ま~ゆ」の須川プロジェクトのみなさん。今回は、そこに参加している親戚からのありがたいおすそ分けです。早速手打ちうどんを作りました。

イガチクは、信州の善光寺平から上田にいたる間の千曲川の沿岸で、大正時代から戦後まで作られた人気の小麦でした。 私の父も昭和40年頃まで作っていました。小さい頃、畳を上げた茶の間の床板に精麦されたイガチクを広げて乾燥させていたのを覚えています。しかし、面積あたりの収量が少ないことや輸入小麦に押されて作る人もなくなり、市場からはいつの間にか消えていきました。

もう少し詳しく説明しますと、 イガチクは三重県伊賀上野市の農林省関西試験場で、筑後平野で作っている小麦と、アメリカ西部のオレゴン州の小麦を交配して作った硬質小麦です。日本の小麦は、軟質小麦。アメリカのオレゴン種はグルテンが多い硬質小麦です。この二つを交配して作られたのが伊賀筑後オレゴン種で、準強力粉になります。

現在、その懐かしい味を再現しようと、有志の方々が再び作り始めています。まだまだ収量は多くありませんが、市販もされ始めたようです。これで食べる信州更級名物「おしぼりうどん」は絶品です。地域振興の一翼を担うのではないかと思えるほどです。ポスト讃岐うどんは、間違いなくおしぼりうどんでしょう。出汁醤油で食べる前の、蕎麦の食べ方の原型ともいわれています。信州坂城町や千曲市、長野市篠ノ井に行かれたらぜひ召し上がってみてください。きっと虜になります。かの松尾芭蕉も「更級紀行」の中で「身にしみて 大根からし 秋の風」と詠んでいます。

ご覧の通り色は蕎麦粉のようで歯ごたえもあります。讃岐うどんのように喉で食べるうどんではなく、咬んで食べるうどんです。母によるとイガチクは、餅(グルテン)があまりでないので、おやきを作るときに具を包みやすかったそうです。また、準強力粉なのでパンにしても美味しくいただけます。以前、オレゴンとブレンドしてアンデスの穀物キヌアとパンにしましたが絶品でした。

うどんは他にもMORI MORI RECIPEの日本料理にたくさんレシピがあります。ご覧ください。
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「小女子味噌」と「鹹魚(ハムユイ)」

2006-09-19 | 男の料理・グルメ
 「ちりめん山椒」を以前紹介しましたが、今回は「小女子味噌」を紹介します。作り方はしごく簡単。麹味噌に同量から2倍の小女子を加え、少々の味醂とたっぷりのおかかを加えて練るだけです。
 今回は、みじんに切った山椒の葉を加えました。実山椒の塩漬けを加えてもいいですね。そのまま熱々ご飯にのせてもいいし、おにぎりの具にも最適です。
 ただし塩分のとりすぎにならないように、食べ過ぎには注意してください。

ちなみに、ちりめんじゃこ(縮緬雑魚)は、イワシ類の稚魚を食塩水で煮た後、天日などで干したもの。七分乾きにしたものを「シラス干し」、さらによく乾燥したものを「ちりめんじゃこ」といいます。今回使ったものは、小女子(こうなご)で、カタクチイワシではなく、イカナゴです。カタクチイワシより苦味や脂が強く、ちりめん山椒や小女子味噌にピッタリだと思います。

蛋白質や各種ビタミンを初め、EPAやDHAも多く含まれ子供からお年寄りまで、積極的に食べていただきたい食品です。茹でキャベツや茹でピーマンに油で炒めたしょうゆ味のジャコをかけるのはわが家の定番料理です。「切り干し大根とジャコのパスタ」も美味しいですよ。

 鹹魚(ハムユイ・塩魚)は、ニシン科の曹白魚・平(ひら)を内臓ごと塩漬けにして発酵させたものです。発酵食品特有のクセのある匂いと味ですが、豚肉ととてもよく合います。
 中華街では、油漬けにされた瓶詰めが売られているのですが、わが家ご贔屓の「愛龍號」のさっちゃんに勧められて塩魚そのものを買ったのが去年の初夏。その写真はこちらです。それをほぐして油漬けにして1年半近く、そろそろ使える状態になりました。

 まずは、「ハムユイ風味の春巻き」を作りましょうか。「豚ひき肉とレンコンの天ぷら」もいいですね。中華風ハンバーグに練り込むのも美味です。
 体にもいい発酵食品は積極的に取りたいものです。

「横浜中華街」のルポは、男の料理 MORI MORI RECIPE中華料理のページの下の方にまとめてあります。お役立ち情報が満載ですよ!買い求めた食材の説明もあります。
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キノコの夢、粘菌の夢

2006-09-11 | アウトドア・ネイチャーフォト
9月10日、次男はサッカーの試合、長男はテスト勉強なので、連れとふたりで牛ノ寝通りへ粘菌ハンティングにでかけました。下界は猛暑が舞い戻った暑さでしたが、山もこの時期にしては朝から暑く20度。非常に湿度が高く虫も大量発生。森にはいるとハエやガガンボなどがまとわりつきます。特に羽化したアブラ虫が何匹も目に飛び込んでくるので閉口しました。おまけにクモの巣がすごくて、歩くたびに巣がからみつきます。

それでも山は秋の気配で、タマゴタケ、アカジコウ、気の早いハナイグチなどが採れました。夕食には、ゆずりはら「やっこ屋」の美味しい木綿豆腐と、今年初めての天然きのこ汁にして楽しみました。栽培キノコには無い森の風味が口いっぱいに広がり、秋はやはりキノコだねえとしみじみ思いました。
タマゴタケは、日本のキノコですが和風に調理すると美味しくないので、クリームパスタにします。コンソメにすると黄金色の美味しいスープがとれます。今年は、秋の長雨がしっかりありそうなのでキノコは期待できそうです。

花は端境期で少なく、ほとんど見られませんでしたが、咲き終わりのレンゲショウマが見られたのが幸運でした。他には、ミヤマママコナの群生、ツルニンジン、シオン、アキノキリンソウ、キバナアキギリなどが、わずかですが咲いていました。連れは水彩画講座のモチーフにと、実なり途中で落ちてしまった青い栗やドングリをたくさん拾いました。

山沢入のヌタでは、トチノキの巨樹を見に来たご婦人達がハンモックを吊って揺られていました。山をガシガシ登るだけではなく、こんな楽しみ方もいいものです。

本命の変形菌(粘菌)は、活性が低く見つけるのに苦労しましたが、いくつかいいカットが撮れました。
いずれモリモリキッズフォトドキュメントをアップしました。ぜひご覧ください。

粘菌の写真は、【MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery】をご覧ください。

【信州の里山】妻女山の変形菌1


【信州の里山】妻女山の変形菌2


【日本の里山】森の変形菌(粘菌)


【山梨の里山】大マテイ山・粘菌ハンティング


★ネイチャーフォトのスライドショーは、【Youtube-saijouzan】をご覧ください。粘菌やオオムラサキ、ニホンカモシカのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。
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大菩薩峠、多摩川源流で見る白日夢

2006-09-01 | アウトドア・ネイチャーフォト
粘菌探しの旅は続く。夏休み最後の山登りとして、かねてより登山地図には全く載っていないが、小菅村の案内看板に描かれている「源流探索ハイキングコース」を歩いてみようということになった。ちょうど大菩薩峠の東の中腹にあたる部分である。この辺りは東京都水道局が管理する東京都民の水瓶の現流域のひとつだ。

中里介山の未完の大河小説『大菩薩峠』で有名な峠であるが、1878年(明治11年)、柳沢峠の開削によりルートが変わるまでは、武蔵と甲斐を結ぶ青梅街道の重要な峠であり、そして標高1897mの峠は最大の難所でもあった。以前牛ノ寝通りの大ダワで、小菅村から大菩薩峠を越えて旧青梅街道を歩いているというご夫婦に出合ったことがある。その方に聞いたのかは忘れたが、この峠を越える道は国道であったことがあるそうだ。それほど丹波山村や小菅村の人たちにとっては、人や物資の移動の重要なルートであったということだろう。

現在は、甲府側の上日川峠まで車で来て、大菩薩まで登るというお手軽なコースが主流になってしまい、小菅側から登る人はほんのわずかになってしまったということだ。私達は、林道小菅線を終点まで行き、そこからフルコンバ(フルコンパ小屋跡)を経て(ところでフルコンパって何語?)荷渡し場から大菩薩峠をピストンし、源流探索ハイキングコースを牛ノ寝通りへ辿り、榧ノ尾山の先から林道終点へ戻るという酔狂なコースを選んだ。酔狂というのは、普通は大菩薩峠まで行ったら熊沢山、石丸峠と辿って玉蝶山から牛ノ寝へ下るのが普通だからだ。

当日は、気温は20度と低いものの前日まで梅雨のような天気が続いたせいで、森の中は湿度90パーセント以上で、それが応えた。お陰で、撮影に手間取ったのもあって大菩薩まで3時間半もかかってしまった。実を言うと粘菌撮影が目的だったので初めは大菩薩へは行かないつもりだった。しかし、だらだらと荷渡し場まで長~い森の中の湿った陰鬱な登りを続けてきたら、どうしてもパノラマの絶景を見ずには帰れないと思うようになって、荷渡し場で急遽峠まで行くことに変更したのである。それは大正解であった。「介山荘」では、天然水の小豆ミルクと煮込みおでんとビールと絶景が迎えてくれた。ところで荷渡し場であるが、ここで塩山側と小菅側の荷物を交換した場所ということで名付けられたところだそうだ。

「源流探索ハイキングコース」は、ハイキングなんてあたりのいい言葉とは裏腹に実にスリルある道であった。実際コース入口は、止めの枝で塞がれており、標識には「山道」なんてちょっとふざけた文字が書かれていた。「山道」なんて標識は初めて見た。行ってみたら崩落箇所あり、片側が谷に切れ落ちた湿ってヌルヌルの木道が何カ所もあり、熊さんとのありがたくない出会いの危険性もありというコース。アップダウンも結構ある。しかも湿度は時に100パーセントで、ついには私のデジカメがまったく作動しなくなるほどだった。

しかし、何度も現れる多摩川の源流の水は、超軟水で冷たく甘露であった。苔むした森は「もののけ姫」に出てくる森のようだと子供達が言っておった。結局、牛ノ寝通りに出るまで1時間半ほどかかったが、実に楽しいコースであった。虫も鳴かない谷の最深部で谷底から見上げると、一瞬何かが耳元でささやいて通り過ぎた気がした。

写真左上は、源流部から見る牛ノ寝通りと三頭山。右上は猛毒のヤマトリカブト。左下は、濡れて艶めかしいツリフネソウの花。右下は、胞子を飛ばした後のサビムラサキのミクロの林で戯れる、小さなクモの親子。

モリモリキッズフォトドキュメントをアップ。ぜひご覧ください。

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