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信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

信州の夏の郷土料理。丸茄子(小森ナス)のおやき。伝統野菜を守れ!(妻女山里山通信)

2021-07-29 | 男の料理・グルメ
 善光寺平名物の「ナスのおやき」は、信州丸ナスだからこそできる料理です。信州丸ナスは、善光寺平でとれる大きく丸いナスで、実がしっかりとして重く、味が濃厚で、大きいのは赤ん坊の頭ぐらいになります。このツヤツヤの信州丸ナスにごま油で練った信州麹味噌をはさみ、これまた信州の中力粉(地粉)を練ったもので包み、青紫蘇の葉ではさんで蒸せば、信州郷土料理の代表格、ナスのおやきの出来上がりです。青紫蘇の葉ではさむのは祖母の発案で、母から妻まで継承されました。紫蘇の風味がナスとよく合います。

 市販のモノや各家庭で、材料、味付け、作り方などが微妙に違います。ナスのおやきには、囲炉裏で作る古典的な灰焼きおやきと、蒸すおやきがあります。また、家によっては焼き目をつけてから蒸し上げる調理法もあります。ミョウガの葉や柏の葉で包んで香りをつけるやりかたもあります。昔はたくさん作って、井戸に吊して冷やして食べました。今回は青紫蘇の葉とミョウガの葉を使いました。

 17年前のカット。父が育てていた小森茄子です。ダンボールに茄子やトウモロコシ、胡瓜、ピーマン、唐辛子など夏野菜をたくさん詰めて送ってくれました。我が家のベランダも野菜畑で、ミニトマト、バジル、サラダ菜などを育てていました。仙川のマンションの近所には有機栽培の無人販売所がたくさんあって助かりました。

(左)信州丸茄子。小森茄子です。ソフトボールぐらいあります。(右)確かこの夜は、妻がプランタン銀座の講座の講師の仕事で遅くなるので息子達とナスのおやきを作ったのでした。食べざかりなので凄い量です。

(左)小さな頃から料理好きなので見様見真似ですが結構器用に包んでいきます。(右)自分達で作ったので美味しさもひとしお。茄子ひとつで4つのおやきができますが、3つ分12個は食べたと思われます。まあ今はこんなに食べられないと思いますが。

●丸茄子のおやき レシピ
■材料(20個分)
信州丸ナス・・・・・・・・5個
中力粉(地粉)・・・・・・600g
水・・・・・・・・・・・・300cc(ゆめちからなど強力粉の場合は6割に)
信州麹味噌・・・・・・・・100g
ゴマ油・・・・・・・・・・大さじ1
青紫蘇の葉の大きなもの・・40枚
青唐辛子・・・・・・・・・1本(好みで)
 粉と味噌はやや多めに作るのがミソ。足りないと面倒ですが、余っても色々な料理に使えますから。

■作り方
1. ボウルに小麦粉、水を入れ、やや柔らかめの耳たぶの柔らかさに練る。
  濡れ布巾をかぶせてねかす。
2. 別のボウルに味噌、ゴマ油、好みで青唐辛子(焼いてみじん切り)をよく混ぜておく。
3. ナスを洗ってヘタを落とし、横に4等分の輪切りにする。輪切りにしたものに切れ込みを入れる。
4. 3の切れ目に2の合わせ味噌を、ナスの大きさに応じて小さじ1ほど挟む。
5. 手のひらに水をつけ、ねかしておいた小麦粉を適量手に取る。
6. ナスをのせ、周りから小麦粉をひっぱって包む。包んだら青紫蘇の葉ではさむ。
7. 大きめの蒸し器を火にかけ沸騰させておく。ナスをくっつかないように斜めに重ねていく。
8. 強火で15〜20分ほど蒸して、箸がスッと入ればできあがり。
 今回は、小麦粉は幻のいがちくオレゴンと地粉のブレンド。味噌は仲間と手作りの糀味噌。唐辛子は、焼いた青唐辛子を麹と醤油で漬け込んだものを使いました。

 日本にはナスの美味しいといわれる所がいくつかあります。その中の一つが長野盆地で、伝統野菜の信州丸ナスです。小森茄子、川中島茄子、小布施茄子など沖積地に最も適した果肉が厚くて密度の高い、焼いても、煮ても、蒸かしても良しと何をしても美味しい茄子です。信州の風土と深く結びついた、野菜といえるでしょう。
 父も昔は長野市東福寺の小森のある方から苗を買っていたのですが高齢で止めてしまい、しかたなく市販の苗に切り替えたのですが、昔のような密度や味の濃さはなくなりました。もちろん今も美味しいのですが、20年前のナスは、もっと緻密で重く味も強く、水に放すと沈み水が真紫に染まったものでした。近年、小森ナスが復活との話を聞きました。本当に在来種で交配していないかは、水に放すと分かります。本物なら沈みます。浮いたら交配しています。市販のナスのおやきはふくらし粉が入ったり、具に砂糖が入りますが、私は素材の甘さと旨さをいかすためにどちらも入れないものが好みです。ナスも小さく薄いので、やはり自分で作るのが一番です。
 ナスに限らずスーパーに並んでいる形の揃った綺麗な野菜は、現在ほとんどがF1種です。種が発芽しないので農家は毎年苗を買わなければなりません。化学肥料と農薬がないと育ちません。早生種は栄養もありません。収量と形ばかりにこだわり味や栄養が犠牲になってきました。伝統野菜は、ハイブリッドではないので育ち方もバラバラで収量も多くありません。しかし、最近その伝統野菜が見直されています。野村種苗とか信州でも伝統野菜の種を継承している会社があります。種は種苗会社のものではなく国民の財産です。遺伝子組換え作物になったら、郷土料理も和食文化も滅びてしまいます。

「信州の伝統野菜」:必見です! 長野県が実施する「信州伝統野菜認定制度」によって認定された野菜で、現在71品目の野菜が認定されています。JAのスーパーやスーパーの産直売り場、道の駅や八百屋さんで買えます。

 『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。シニア大学や自治体などで好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。大学や市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
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臥竜公園。須坂市動物園(カピバラ)、須坂市博物館(縄文土器)、餃子のウェイウェイ。枕状溶岩、柴宮・墨坂神社(妻女山里山通信)

2021-07-27 | 歴史・地理・雑学
 四連休の最終日は長男に誘われて須坂市の臥竜公園へ。休日なので小さな子連れの家族が大勢訪れていました。須坂市博物館がリニューアルしたのです。動物園では久しぶりにアマゾンやアンデスの動物にも出会えました。

 竜ヶ池の周りを歩いてまず動物園へ。弁天島にかかる弁天橋。この池は溜池です。高校入学の春に従兄弟と友人と三人で桜満開の臥竜公園に来ました。それ以来です。その時、ボートを私が全力で漕いでいるシーンが夜のニュースで流れました。

(左)D51形蒸気機関車。通称デコイチ。太平洋戦争中に大量生産されたこともあって、国鉄における所属総数は1,115両と最大。鉄の塊ですが、温かみがあります。(右)これに会いたくて来ました。カピバラ。和名はオニテンジクネズミ(鬼天竺鼠)。アマゾン川やラプラタ川流域のパンタナルに生息します。私のホームページの[CAPINO]は、このカピバラに由来しています。
[CAPINO] SAVE THE RAINFOREST 【カピーノ:ジャングルを守れ!】:カピバラが主人公の冒険アニメのスライドショー。ト書きはお父さんやお母さんが読んであげてください。

(左)トナカイ。角が凄いです。鼻先のコブはなんでしょう。(右)リャマ。アンデスでは、チチカカ湖の近くでこの群れを放牧する少女と出会いました。近づくすぎると唾液を吐きつけられます。リャマの毛皮の敷物を買ってきて息子達が小さな頃ゴロゴロしていました。

 コンゴウインコ (金剛鸚哥)の中のルリコンゴウインコ。アマゾンでは夕方群れがねぐらに帰る姿が見られます。日系人の農場にもペットして飼われていました。近づきすぎると鋭いくちばしで突かれます。この個体もそうだと思いますが毛引きで神経症になっていると思われる行動がありました。

(左)臥龍山百番観音。虫刺されがあるので夏は無理ですが、早春や紅葉の季節はいいでしょう。(右)臥竜公園といえば、この黒いおでん。見た目ほど塩っぱくありません。こんにゃく90円をいただきました。

(左)リニューアルした須坂市博物園へ。連休で動物園と共に無料でした。米子鉱山で産出された鷹ノ目硫黄。透明な黄色結晶の集合からなる純硫黄。(右)勾玉。翡翠や瑪瑙や水晶など。この小さな穴をどうやって開けたのでしょう。まあ鉄器はありましたが。

(左)古墳時代のある時期から馬具が出てきます。ツングース系の騎馬民族が移民して馬産を始めたからです。(右)帯留めに使われたという鎧塚2号墳から出土の獅噛文の金具。

 古墳時代後期の鉄刀。象嵌があったり刻印があったり。ピカピカなら相当凄いものだと思われます。この刀はたたら製鉄でできる玉鋼を使って作られたものだと思います。日本刀は、普通の製鉄で作られる鋼ではできません。玉鋼でないとだめなのです。たたら製鉄は中国から伝えられたものだと思いますが、現在世界でたたら製鉄で玉鋼を作っているのは、島根県奥出雲町にひとつある製鉄所だけです。現在日本中の刀工が作る日本刀は、すべてここの玉鋼を使っています。

(左)土師器や須恵器。青灰色のものが須恵器。(右)「挙手人面土器」片山遺跡出土の古墳時代前期の作。なんかその辺りの中学生が作って埋めたのかみたいな。ちょっと不気味で可怪しい土器。どういう意図で作ったのでしょう。

「微隆起線文土器出土」。なんと世界で最も古いかもといわれている縄文時代の土器なんです。縄文時代は1万年も続いたという人類の歴史でもほかでは観られない稀有な時代なのです。その文化は豊穣で知的レベルも高く、アンデスや他の文化の起点になったという歴史家もいます。

 昼は中国人のおばさまが一人できりもりしている「ウェイウェイ餃子」へ。焼き餃子定食と水餃子のハーフ。昨今の凄く趣向を凝らした日本の餃子ではなく、中国のお母さんが作る素朴で美味しい餃子です。癖になる味です。テイクアウトもあります。これははまりそう。

 長野県天然記念物の井上の枕状溶岩。2千万年前の溶岩が見られます。2千万年前、長野盆地は海だったのです。

(左)高山村歴史民俗資料館。(右)馬は家族同様大事にされたことが分かります。

 台所と居間。分かる限り名称を入れてみました。そう昔のことではありません。我が家も新築するする前は、幕末に祖先の名主が建てた大きなこんな家でした。柱や戸棚、引き戸が漆塗りで、今思うとかなり豪勢な造りでした。葡萄酒製造や養蚕などをやっていたので、今でも一部道具や器などが残っています。

(左)二階には蝶の展示が。これはアマゾンのモルフォ蝶など。アマゾンのジャングルでは普通にこの美しいブルーの蝶が舞っていました。(右)長野県の天然記念物の蝶。もちろん採取は禁止です。ミヤマモンキチョウは、二回撮影に行き、このブログにアップしています。

(左)最後は、柴宮・墨坂神社へ。先日祇園祭が行われました。403号を挟んで参道。車が見えるところが旧谷街道です。(右)神橋の奥に拝殿。

 拝殿。創祀年代は天武天皇白鳳二年という伝承。住古大和部族移住に際し大和国宇陀郡榛原より墨坂神を遷祀したものといわれています。須坂の地名は、墨坂神を祀る、墨坂の里からという説があります。合祀例の後に六社が境内にあります。

(左)拝殿の木彫。これは鷹に松でしょう。(右)唐獅子と貘。誰の作だろうと思いました。諏訪立川流にも似ていますがどこか違う。帰って調べてみると高井の里には亀原和太四郎一門という伽藍師達がいたことが分かりました。おそらくその一門の誰かの作でしょう。金網ではっきり見えないのが残念です。自転車で帰る息子を下ろして私は温泉へと向かいました。

 『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

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夏の男飯。鯵の手こね寿司、新信州郷土料理、ブラジル料理、アメリカン&メキシカンなど(妻女山里山通信)

2021-07-23 | 男の料理・グルメ
 コロナ禍の自粛生活で家にいる時間も長いので、料理を作る時間も余裕があります。そんな料理を撮りだめしてみました。色々こだわりはありますが、地産地消で新鮮な野菜を使う。規格外でもいい。化学調味料、食品添加物、砂糖を使わない。柿酢、信州麹味噌、塩麹は手作り。地元の山菜や野草、天然キノコ、発酵食品を使う。郷土料理の知恵に学ぶなどなど。


 旬の「鯵の手こね寿司」。寿司酢は、手作りの柿酢・奄美のキビ糖・粗塩です。寿司飯は薄い茶色になります。こくがあって美味です。鯵も寿司酢でしめます。昆布茶を少しふります。酢飯を盛って青紫蘇を刻んで散らし、鯵の刺身を並べてネギのみじん切りを散らし、練り梅を添えて適量の醤油を回しかけて出来上がり。在京時代は江ノ電鎌倉駅の大船軒の鯵や鯖、小鯛の押し寿司はよく買いました。今が旬の殻付きホヤをさばいて食べました。でも信州ではなかなか買えません。岩牡蠣も。
柿酢の作り方:熟した柿のへたを取り(洗っては駄目。周りの白い粉が必要)、熱湯で殺菌したプラスチックの桶に入れる。和紙で蓋をして周囲を紐で結び冷暗所に置くだけ。翌年の1月には柿酢になっている。上の上澄みを瓶に詰めて保存する。

 丸なすのおやきは信州の夏の代表的な郷土料理。普通は小麦粉で包んで灰焼きにするか蒸しますが、「信州丸なすの挟みおやき」というのもあります。皮の小麦粉は幻のいがちくオレゴン。高度経済成長前までの東京のうどん屋さんの粉はこれでした。皮は全卵1個を入れてゆるく溶きます。今回は水にほとばしたオートミールと蕎麦粉、豆乳おからも少しずつ入れました。更に炒り粉と海老粉も少し。
 具は丸なす大1個をスライスして5ミリ幅ぐらいに拍子切り。みじん切りの青紫蘇と出汁粉を加えて信州糀味噌とゴマ油で軽く混ぜながら練ります。フライパンに大さじ1のゴマ油をしいて熱し蓋をして両面を6分ずつ焼いたら出来上がりです。皮にとろろを入れると軽くなり、冷めても固くなりません。

「原木ナメコと納豆のおろし素麺」。ナメコはパックに入った小綺麗なものではなく大小様々が入った原木ナメコがオススメ。100円です。菌床栽培でも色が濃く大きめがオススメ。納豆はこれは違いますが、地元の大粒の川中島納豆がオススメ。激安の納豆は実は本物の発酵食品でないものもありますが、これは本物。ツルヤやJAなど県内のスーパーで買えます。素麺はゴマ油で練り込んだものと入らないものがありますが今回は後者。奥州白石の松田製粉のもの。4人分で100円ぐらい。ナメコは出汁醤油でさっと煮て冷ましておきます。素麺を茹でて水洗いし椀に盛ります。大根おろしをたっぷりのせて納豆、ナメコと出汁醤油をはってできあがり。ネギと梅肉を添えて。ナメコと納豆の旨味と大根おろしの辛味で食が進みます。

「信州丸なすと南瓜、唐辛子の塩鯨煮」。塩鯨(塩皮鯨)は、ぬるま湯で塩気を流し水から煮込んで出汁をとります。そこへ丸なす、南瓜、青唐辛子を入れて煮ます。鰹出汁、昆布、干し椎茸、酒、味醂で味をつけ冷蔵庫で冷やして出来上がり。鯨からいい出汁が出て野菜の旨みが増します。郷土料理です。冬にこの出汁で食べる鯨うどんは、在京時代に息子達も大好きでした。

 昔ブラジルの叔母から伝授された「新じゃがのアンチョビー炒め」。新じゃがは半分に切り皮付きのまま10〜15分電気圧力鍋で蒸しました。みじん切りしたアンチョビーをオイルごとフライパンで炒め、みじん切りのパセリを半分、途中で残りを最後に入れて、レモン汁を掛けてできあがり。簡単です。ビールのつまみに最高です。
新ジャガとアンチョビーのサラダ:もう少し手の混んだ本格的なレシピです。以下リンクはすべてオリジナルレシピです。

 ブラジルの国民食で、ほぼ毎日食べられます。定食には必ず付いてきます。「フェジョンの煮込み」。フェジョン・プレット(黒インゲン)を倍量の水で15分圧力鍋で煮ます。半分ぐらいを潰します。鍋にニンニクとタマネギのみじん切りを入れてオリーブ油で炒め、豆と信州ハムの無塩せきウィンナーのぶつ切りを入れてマギーブイヨンとローリエを入れて煮込みます。足りなかったら塩を加えます。
 ご飯にかけて、ファリーニャ・デ・マンジョーカというタロイモの粉をかけ、ピメンタという辛い唐辛子のソースをかけていただきます。今回はハラペーニョソースを使いました。材料はブラジル食材店かネットで揃います。夏にピッタリの料理で我が家の夏の定番料理でした。
フェジョンの煮込み(ヴィナグレッチ添え):もう少し本格的なレシピです。フェジョン・プレットは、鉄分が豊富な豆です。
フェイジョアーダ:ブラジルの最もパワフルな料理のひとつ。アマゾンにはマニーバというキャッサバ芋の葉を使ったマニソーバという深緑色の強力な煮込み料理があります。

 美味しそうなバンズと信州牛の赤身のひき肉があったので「手作りのアメリカン・バーガー」を作りました。ひき肉はシンプルに塩黒コショウで練って整形します。バンズは内側に焼き目をつけて粒マスタードを。タマネギはスライスしてロースト。トマトは厚めにスライス。バンズにサラダ菜敷いてタマネギ、焼いたハンバーグ、チェダーチーズ、トマトを乗せてマヨネーズを。胡瓜のピクルスをのせてバンズで挟んでできあがり。
 ファストフードのハンバーガーはもう何十年と食べていません。やはり手作りのハンバーガーは一味も二味も違います。冷凍庫にジビエの鹿肉のロースのタレ漬けがあるのですが、これを和風ハンバーグにしてみたいと考えています。
キヌアパン(コッドローバーガー・ソーセージバーガー):キヌアは穀物の中でも特に栄養価が高く、21世紀の主食ともいわれています。コッドローはタラコの缶詰。これを使ったサンドイッチは、学生時代にバイトをしていた村上春樹さんのジャズ喫茶「ピータ・キャット」で出していました。左のブログ「国分寺・国立70sグラフィティ」の記事で詳しく紹介しています。

「全粒粉入トルティーヤのポテトサラダのタコス」。トルティーヤは業務スーパーのもの。手作りのポテトサラダを挟みました。新じゃがを蒸して熱いうちに潰します。人参とモロッコいんげんは食べるサイズに切って塩蒸しに。タマネギは粗みじんで、アボガトは適当に潰して、胡瓜は粗みじんに。パセリはみじん切り。アンチョビーをみじん切りにして少し熱して臭みを取ります。ピクルスはみじん切りしてつけ汁も加えます。
 今回はアンチョビーなのでハムではなく、鯖の入った魚肉ソーセージにしました。マヨネーズにレモン汁、隠し味に昆布茶を加えよく混ぜて塩味を確かめてできあがり。
家常餅(ジアチャンビン)・ピタパン・おやき:中華版トルティーヤ。バターにすれば洋風。オリーブ油にすればピタパンと応用がききます。

 息子達が小さな頃、サッカー・ワールドカップの際は、開催国や対戦相手の料理を作って食べたり、私は酒を飲みました。イタリアならグラッパ、フランスならシャンパン、アメリカならバーボンとか。しかし、今回の東京五輪は全くそういう気になれません。コロナ禍だけではなく商業主義に腐りきったオリンピックは一度止めるべき時期に来ているのではないでしょうか。

 『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

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アゲハチョウの産卵。ヨツスジハナカミキリの交尾。粘菌のシロススホコリ。夏景色の北アルプスと千曲川(妻女山里山通信)

2021-07-20 | アウトドア・ネイチャーフォト
 信州は16日(金)に梅雨明けしました。学生たちの集団や知り合いの方と邂逅。翌日の土曜日、最高気温は35度の予報。妻女山から貝母群生地のある陣場平と堂平大塚古墳へ登りました。クロメマトイが煩くつきまといます。物凄い湿度と暑さでまいりました。しかし、この季節でないと出会えない昆虫や粘菌と邂逅。翌日は初めてシロススホコリの撮影もできました。拙書を出版する前は、35度の猛暑の中で樹液バーに4、5時間も張り付いて撮影しました。機嫌の悪いオオスズメバチに100mも追いかけられたこともありました。

 陣場平下のギャップでアゲハチョウに邂逅。せわしなく山椒の葉を飛び回って産卵していました。吸蜜時と違い止まる時間がものすごく短いので撮影は困難を極めました。辛抱強くシャッターチャンスを待つしかありません。拙書でも10本のエッセイの中で蝶の歴史や生態について記しているのですが、アゲハチョウでは私が大好きなポルノグラフィティの曲も取り上げています。

 アゲハチョウ(ナミアゲハ)は、ミカンやユズ、サンショウ、カラタチなどミカン科の樹木の葉に産卵します。それが幼虫の食草だからです。ではどうやって食草を見分けるかというと、足先にミカン科の植物を見分ける機能があるのだそうです。写真の山椒の葉を見ると、すでに産み付けられた小さな卵が見えます。この卵は9月に羽化しますが、卵はアリに食べられたり、鳥の糞に擬態した小さな頃はカマキリやハチに食べられたり、青虫になると鳥に食べられたりで、無事に羽化できるのはわずか0.6%といわれています。必至に産卵するこのアゲハを観ていると、頑張れよ頑張ってるなと声をかけたくなりました。

 堂平大塚古墳の今は亡き山仲間のKさんのログハウスで昼食。サザエの炊き込みご飯のおにぎりと味噌胡瓜。猛暑ですが風があって気持ちいい。彼が生前に植えたガクアジサイ。何かいます。

 ヨツスジハナカミキリが交尾していました。ハチの仲間に擬態して身を守っています。メスはアジサイの花粉を食べに来たのでしょう。クヌギの樹液にも集まります。幼虫は針葉樹の倒木などを食べます。食事中のメスと交尾するのは甲虫ではよく観られます。樹液を吸うアオカナブンのメスと交尾するオスとか。以前記事にしましたが、カブトムシのメスが食事中の時、オスは覆いかぶさるようにして守ります。他の昆虫が近づくと威嚇音を出します。

 樹液バーを覗くといたのは森のエメラルド、アオカナブン。まもなくカブトムシ、オオムラサキ、オオスズメバチ、カナブン、ミヤマカミキリなども現れるはずなんですが。

 テングタケ科のドウシンタケだと思います。食毒不明ですが、テングタケ科のキノコは猛毒が多いので食べてはいけません。どんな猛毒のキノコも一度は食べられますが、二度目はありません。

 帰りに倒木を処理。歩けるように枝打ちをしました。手前の落葉松は20m以上あり10トンを超えるでしょう。そして、右のカットの様に立ち枯れの山桜に掛り木になっているので、いつ更に倒れてもおかしくありません。非常に危険です。長野市に連絡しましたが、ハイカーが多い山なので早急な対処をお願いしたいものです。

 我々がやっている椎茸の原木栽培のコナラに粘菌が。最初マンジュウドロホコリかと思いましたが、マクロ撮影して拡大してみると、これはススホコリです。シロススホコリですね。初めて撮影しました。ありふれた粘菌なんですけどね。下の樹内から発生して上に成長したのでしょう。子実体に小さな甲虫が集まっています。

(左)アップ。石灰質に小さな甲虫が食べに集まっています。ヒメキノコムシ科の甲虫の様です。(右)外皮を取り除くとまだ子実体はゲル状でした。

(左)帰りに寄ってみると黒く変色していました。乾いて胞子を飛ばすのもまもなくでしょう。(右)ホダ木を見るとセミの抜け殻。大きさと殻に艶があり、触覚の4番目の節(せつ)が3番めより長いことからヒグラシです。檜林を歩くと足元から羽化したばかりのヒグラシが次々と飛び立って行きました。

 最高気温は35.2度。人の少ない温泉に向かいます。土口水門から北の眺め。右に飯縄山。左に戸隠連峰と戸隠富士の異名を持つ高妻山。

 西には仁科三山の爺ヶ岳。右の鹿島槍ヶ岳は雲の中。梅雨も明けて千曲川の水も澄んでいます。こんな清涼な風景を見るとコロナ禍が嘘のように思えてきます。人が大勢出歩く週末は、スーパーやコンビニ、観光地などには行かないようにしています。猛暑の中、矛盾だらけの危険な東京五輪が始まろうとしています。

『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

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集中豪雨で妻女山山系に壊滅的被害が出ました。ヒヨドリバナで吸蜜するスジグロシロチョウ(妻女山里山通信)

2021-07-14 | アウトドア・ネイチャーフォト
 7月11日(日)に長野盆地南部を襲った集中豪雨は、千曲市や松代町の果樹や野菜に大きな被害をもたらしましたが、私達が貝母や里山の保全活動をしている妻女山山系も壊滅的な被害を受けてしまいました。車では上がれないので徒歩で登りましたが、被害は予想以上のものでした。湿度は100%。クロメマトイが鬱陶しく纏わりつく中を通常の二倍ぐらいかけて登りました。

(左)妻女山展望台の裏の赤松の大木が地上5mぐらいで折れてしまいました。手前にある石碑に当たらなくて良かった。(右)駐車場奥の桐が二本倒れました。残った一本も傾いて倒れそうで大変危険です。これは伐倒しないといけません。

(左)妻女山松代招魂社はあれだけの暴風雨でも無事でした。ただオオムラサキは姿を消しました。あの暴風雨では生き残れないでしょう。新たな生命の羽化を待つしかありません。(右)鳥居の脇の妻女山の案内看板は根本から折れてしまいました。

(左)貝母群生地のある陣場平や天城山(てしろやま)、鞍骨山へ向かう林道を登ります。豪雨で林道(農道)が深くえぐれてしまいました。大きな穴が空いてしまった場所も。これでは車で登れません。秋にもし山火事が発生しても消防車が登れません。(右)三つ目のカーブに落葉松と山桜の倒木。人力では動かせません。その向こうには立ち枯れの山桜に倒木が掛り木になっていて非常に危険です。

(左)四つ目のカーブに落葉松の倒木。(右)その上には二本の落葉松の倒木。奥の落葉松は直径が50センチはあります。グラップルがないと危険で処理できません。他にも処理が必要な木が複数ありました。倒木の伐倒、特に掛り木や蔓が絡んだ木の伐倒は危険です。杉や檜の様な円錐形の樹木は重心が分かりやすいのですが、ヒノキやブナ科の広葉樹や複雑にねじれた赤松などは重心が分かりにくいので危険です。私達も何度か予測と違う倒れ方で危険な目に会ったことがあります。熟知しているはずの経験豊富なプロでも事故に巻き込まれることもあるのです。そういう訳で現在は、ハーベスターとか近代的な伐倒製材の機械が活躍しているのです。YouTubeでそんな動画がたくさんあがっているので興味のある方は観てください。凄いです。
 確かに他の人名が奪われた大災害に比べれば微々たるものでニュースでも取り上げられませんが、逆にこれを復旧するのは非常に大変なのです。重機がないと無理ですし、かといって行政も簡単には動いてくれません。他にも災害地がありますし。しかし、復旧させないと陣場平の保全活動や山仕事もできません。大変な問題です。

(左)長坂峠と陣場平の間の樹液バー。何もいません。普通ならばカブトムシ、オオムラサキ、オオスズメバチやアオカナブンなど多彩な昆虫が吸汁する姿が見られるのですが。(右)陣場平入り口のオニグルミが暴風雨でたくさん落ちていました。

 妻女山里山デザイン・プロジェクトで保護活動をしている貝母(編笠百合)の群生地がある陣場平。幸い被害は見られません。ここの標高は530mぐらいですが、被害が大きかったのは麓に近い370mぐらいから450mぐらいまでに集中していました。林道の状況は全体に渡って酷いものでした。長坂峠までカーブが六つありますが、その上部にカーブに雨水が流れ込まないようにゴム板を埋め込む必要があると思います。

(左)陣場平の中央にあるクマノミズキの実も大きくなってきました。(右)誰も行かない森の奥へ。幻のハナビラニカワタケを探しに。まだ発生していませんでした。梅雨明けを待ちましょう。

(左)陣場平の貝母。ほとんど枯れて倒れましたが、まだ種を飛ばしていないものも。(右)こんな風に六枚の羽がある実の中に三列に縦に種が並んでいます。乾燥するとこれが弾けて散らばるのです。多くは真下に落ちますが、強い東風(こち)が吹いているとかなり西まで飛んでいきます。山中でこれだけの貝母の群生地が観られるのは日本でここだけです。見事な満開の景色は、当ブログの毎年の4月の記事をアーカイブで観てください。毎年地元はもとより全国各地から大勢の方が訪れます。

 木漏れ日の当たるヒヨドリバナで吸蜜するスジグロシロチョウ(筋黒白蝶)アゲハチョウ上科シロチョウ科。畑や庭ではモンシロチョウがよく見られますが、山間部ではスジグロシロチョウがよく見られます。幼虫の食草はタネツケバナやハタザオなどアブラナ科の植物。

 雨が多いので色々なキノコが出ています。傘の裏が網の目状なのでイグチ科のキノコだとは思うのですが同定できません。

 小さなキノコ。キシメジ科だろうとは思うのですが、発生の時期と形態でヌナワタケが一番近い感じですね。

 妻女山展望台の階段の踊り場で見つけたキノコ。傘の独特な模様からモエギタケ科のキノコかなと思ったのですが、これも同定できていません。

(左)ヤマハギ(山萩)マメ科ハギ属。花柄が長いので。妻女山にはマルバハギもあります。シジミチョウが好きな花です。(右)ヤマホタルブクロ(山蛍袋)キキョウ科ホタルブクロ属。亡き父が子供の頃、これに蛍を入れて遊んだと話していました。で蛍袋という名がついたのでしょうか。

 妻女山展望台から望む茶臼山。右奥に神話の山、虫倉山。両山とも拙書に載せていますが、歴史ある自然豊かな里山です。梅雨が開けるまで北アルプスは望めそうにありません。

 北側には長野市民の山、飯縄山。都民が高尾山に登る様に、長野市民はたいてい登ったことがある山です。高尾山薬王院の祭神は飯縄権現。馴染みが深いのです。もちろん拙書でも詳しく紹介しています。手前の千曲川は大雨で茶色です。河川敷では台風19号で堆積した土砂を取り除いて川幅を広げる工事が行われています。
 今回の被害は、アマチュアでは危険すぎて手が出せないので市に相談してみようと思います。梅雨があけると全国からハイカーや歴史マニア、トレラン愛好家、サイクリスト、愛鳥家などが大勢訪れる人気の里山ですから。とりあえず14日(水)に林道入口に「倒木で通行止め 徒歩は可」の看板を下げました。間違って車で登ると、二曲がりバックで戻らないといけないので。

 『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
 インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。シニア大学や自治体などで好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。大学や市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
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粘菌(変形菌)図鑑。妖しく奇妙で美麗なマクロの世界。ツノホコリ、キフシススホコリ、マメホコリ、クダホコリetc(妻女山里山通信)

2021-07-10 | アウトドア・ネイチャーフォト
 粘菌は、アメーバのように動き回り微生物(バクテリア)を捕食する特性と、菌類のように静止して胞子を飛ばす特性の両方を備えた単細胞生物です。原生粘菌、真正粘菌(変形菌)、細胞性粘菌に分けられていますが、私が撮影するのは前の二つです。カビなどの真菌やキノコなどの菌類とはまったく異なる生き物です。粘菌の同定を外見だけでするのは非常に困難です。種名については参考程度と考えてください。英語で粘菌はSlime molds、変形菌はMyxomycetes、Myxomycota。変形菌の種類は、世界で800〜900種。日本で400〜500種ほど。解説は専門的になりますが、なるべく分かりやすくを心がけました。怪しくも美しい粘菌の世界を楽しんでください。

 写真は節を形成し成長途中のキフシススホコリ。体内には秒速1mmを越える原形質流動が起きており、肉眼では確認できないほどゆっくりと移動することができます。
 驚くべきことに変形菌には迷路を抜けられる能力があるという。
「粘菌に「知性」はあるか――。単細胞生物に「人間らしさ」の起源を探る、孤高の研究」北海道大学 中垣 俊之 教授:2008年にイグノーベル認知科学賞を受賞「物理エソロジー」とは。「単細胞だから単純などというのは、とんでもない誤解です。粘菌が持っている脳も神経も使わない情報処理システムは、原理的にすべての生物が持っている基本的な土台です。その意味で、あらゆる生物は知的である。これが単細胞生物の物理エソロジーに挑戦する、私の基本的な理解です」
「脳を持たない粘菌が集団行動する秘密」生物物理学者 澤井 哲氏 「種の存続のために自己犠牲を払う利他的行動」:粘菌のことを非常に分かりやすく解説されています。


 ツノホコリ(角埃)。原生粘菌類に属するツノホコリ科ツノホコリ属の粘菌。世界に三種、日本にあるのは一種。変種にはほかに、枝分かれしないエダナシツノホコリ、丸いタマツノホコリ、縮れたカンボクツノホコリとナミウチツノホコリがあります。高さは2ミリ前後。ごく普通に見られる粘菌です。他とは違い、透明な棍棒状の子実体の周りに柄のついた白い胞子嚢をつけます。周りに白く粉状に見えるものがそうです。胞子嚢がまだ未完成のものは透明に見えます(左の写真の下部。黄色と黒の虫は粘菌を食べるテントウムシの幼虫)。

 エダナシツノホコリ(枝無角埃)ツノホコリ科ツノホコリ属。高さは2ミリ前後。半透明で、触るとゼリー状につぶれました。普通に見られる原生粘菌です。

 タマツノホコリ(玉角埃)ツノホコリ科ツノホコリ属。ツノホコリの変種。別名は、タマサンゴホコリ。ツノホコリに似ていますが、子実体は蜂の巣状。小さな甲虫が写っています。粘菌は小さな虫の餌になることもあるらしく、ベニホタルの仲間も粘菌ではよく見かけます。右の写真は外生胞子を飛ばし始めている状態のようです。

 ススホコリ(煤埃)モジホコリ科ススホコリ属。子実体は黄色い色素を含んだ石灰質で覆われています。 石灰質顆粒からなる外皮はもろく剥がれやすい。朽木に発生するわりとよく見られる粘菌です。左の写真の白い部分は、変形体が動いてきた痕です。

 キフシススホコリ(黃節煤埃)モジホコリ科ススホコリ属。原形質流動は、一進一退を繰り返し、波打つように成長します。三歩進んで二歩下がるような感じです。それが迷路を抜けられる秘密なのでしょう。所々に株のように盛り上がった節がありますが、子実体になったとき、なるべく高い位置にあるとそれだけ胞子を遠くへ飛ばせるからといわれています。右は前夜に霧雨が降り水分が多すぎるためか溶けかかっているものもあり、節の形成があまり盛んではないようです。

 マメホコリ(豆埃)ドロホコリ科 マメホコリ属。最も普通に見られる変形菌。未熟は美しいピンク色で、やがて黄褐色から灰茶褐色に変化。直径は約15ミリまで。表面 に黄色~暗褐色のうろこ状の突起があります。左の未熟は美しいピンク色で、小さな虫のエサにもなります。右は子実体で、まもなく割れて胞子を飛ばし始めるでしょう。近縁種に、高さ2~4ミリで円錐形のイクビマメホコリと高さ5ミリまでのコマメホコリがあります。

 クダホコリ(管埃)ドロホコリ科 クダホコリ属 。左は子実体の未熟。最初は淡いピンクで濃くなり、だんだん黄土色に変わっていきます。希に紫になるものもあります。右が子実体。子実体形成まで時間がかかるため、ピンクまたは紅色の未熟体がよく観られます。子実体の高さは約5ミリ。他にコモチクダホコリ、エツキクダホコリ、オオクダホコリが知られています。倒木にたくさん発生するとまるで誰かがタラコをばら撒いたように見えます。

 シロジクモジホコリ(白軸綟埃)モジホコリ科モジホコリ属。キノコはウラベニガサ。先端の青い丸い部分が胞子嚢(ほうしのう)です。希にキノコを食べる変形菌というのがあり、ナメコを食べるブドウフウセンホコリや、それ以外にもイタモジホコリもキノコを食べるということですが、このシロジクモジホコリについては、この写真だけではなんとも判定できません。ところで、モジホコリのモジですが、文字ではなく綟ではないかと思うのです。麻糸のことですがどうでしょう。モジホコリが広がっていく様が目の荒い麻布の様に見えます。モジホコリの写真は、下の『粘菌ペット「もじ太郎」』の記事でご覧いただけます。

 ムラサキホコリ(紫埃)ムラサキホコリ科ムラサキホコリ属。長さは6~20mm。子実体の軸(基部)が比較的長く、接地面と胞子が離れています。すでに胞子をとばせる状態。触れたらたくさんの胞子が舞いました。ひとつの束は、およそ10から20の子嚢でできています。変種のサビムラサキホコリは軸が長く、高さの二分の一ほど。

 トビゲウツボホコリ(鳶毛靫埃)ケホコリ科。赤松の樹皮が剥げた倒木上に発生していました。子実体ひとつの大きさは1ミリぐらい。右のカットは二日後。雨が降ったため胞子を飛ばす前に壊れてしまったものもありました。鮮やかな朱色は、森の中で異彩を放ちます。

 ハシラホコリ(柱埃)ハシラホコリ科 ハシラホコリ属 。直径10センチぐらいで、高さは10ミリちょっと。既に乾いて倒木にははりついているというより置いてある状態でした。割ると太さ0.5ミリほどの円柱形の胞子嚢がびっしり。なかなかお目にかかれないちょっと珍しい粘菌です。

 マツノスミホコリ(松墨埃)ムラサキホコリ科 ススホコリ属。赤松の切り株に雨後発生。山桜の花びらで、だいたいの大きさが分かります。触るとすぐに破れて真っ黒な粉状の胞子が舞い上がります。手や服に付くと大変。

 ホネホコリ(骨埃)カタホコリ科ホネホコリ属。外壁は密集した石灰質の粒からなり、内壁は膜状です。軸はなくスライスした骨が朽木に張り付いているように見えます。

 マンジュウドロホコリ(饅頭泥埃)ドロホコリ科 ドロホコリ属。発生初期は白色で中はクリーム色。やがて写真のように銀色になりシワが出来ます。内部はコーヒー色のゲル状ですが、皮を破って一日置くとチョコレート色になり固くなりました。直径1~5センチですが、写真のものは約3センチ。右の写真は新しいスウィーツに見えます。

 コウツボホコリ(小靫埃)ウツボホコリ科ウツボホコリ属。ウツボホコリより小さく高さ3ミリぐらいまで。乾くと弾性のある網目状になり、胞子をはじき飛ばします。まるでどこかの惑星に下り立ったような異次元の風景のように見えます。

粘菌ペット「もじ太郎」』:国立科学博物館でいただいた変形菌(粘菌)のモジホコリの飼育の記事
 では、粘菌は食べられるかというと、有名な話ではメキシコである種の粘菌が、フライの衣として利用されたとか、中国では「太歳」と呼ばれる地中にできる大きな粘菌が、バラの香りがし肉のような歯触りといわれていますが、どうなんでしょう。私はクダホコリやツノホコリを舐めたことがありますが、いわゆる樹液臭く美味しいというものではありませんでした。思わぬ毒性がないともいえないので真似しない方がいいと思います。

 また、カビやキノコを食べる粘菌もいますし、粘菌の食べ物であるバクテリアを育成するというある粘菌の実験結果がNatureに発表されたこともあります。食物連鎖というのは、必ずしも大が小を食べるというような一方的なものではなく、実はかなり複雑だということが分かります。進化(evolution)という和訳から、なにか進化は進歩のように誤解しがちですが、進化は単に、生物の形質が世代を経る中で変化していく現象のことであって、進化には進歩の意味はありません。進化の結果、絶滅することもあり得るわけです。また、進化に目的はなく、突然変異に自然選択がはたらいた結果にすぎません。ですから、粘菌がこれからどう進化していくかというのは全くの未知なのです。ただ、愚かな人類の営みによって増えた放射性物質を生き延びる粘菌が出て来る可能性はあるといえます。放射性物質を食べる菌類はチェルノブイリで発見されています。粘菌の研究はまだまだこれからの様です。

 拙書『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林では、『怪しくも美しい「粘菌」も宇宙船地球号の乗組員』というエッセイを載せています。写真とともに粘菌についてや、真正粘菌研究の先駆者、南方熊楠(みなかたくまぐす)について記しています。

■粘菌の妖しく奇妙で美麗なマクロの世界にあなたを誘います。決して特別なものではなく、梅雨の雨上がりの庭や公園の倒木や切り株でも見られます。虫眼鏡を持って探してください。きっと虜になります。BGMは、私が大好きなエリック・サティです。タイトルをクリックするとYouTubeのページが開きます。ぜひハイビジョンでご覧ください。

【信州の里山】妻女山の変形菌(粘菌)その1 Japanese Myxomycetes vol.1


【信州の里山】妻女山の変形菌(粘菌)その2 Japanese Myxomycetes vol.2


【日本の里山】森の変形菌(粘菌)Japanese Myxomycetes


 『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

本の概要は、こちらの記事を御覧ください

お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
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オオムラサキのオスと邂逅。美しい合歓木の花。ルリシジミ、ホソヒラタアブ、ミナミヒメヒラタアブ、メジロ(妻女山里山通信)

2021-07-07 | アウトドア・ネイチャーフォト
 七夕の朝、天気予報は曇りでしたがみるみるうちに晴れてきました。慌ててパッキングして妻女山へ撮影に。最初は湿気もあって静かでしたが、太陽がギラギラと照り始め気温が上昇。29度に。昆虫たちの活性も一気に高まりました。

 妻女山松代招魂社の板壁に止まるオオムラサキのオス。非常に綺麗です。まだ羽化して間もないのでしょう。
 オオムラサキ(大紫)チョウ目タテハチョウ科タテハチョウ亜科。幼虫の食草は、エノキ。 オスは、美しい青紫の翅をもちます。成虫は樹液に集まり、カブトムシやスズメバチにもひるむことがありません。結構気は荒く、オス同士の縄張り争いは相当激しいものです。小鳥を追いかけることも。以前ツバメを追いかけているのを見たことがあります。羽音は大きく、バッサバッサという音を立てて飛び回ります。こんな全く傷ついていない綺麗なオスに出会ったのは本当に久しぶりです。今朝早く羽化して翅が乾いたばかりなのでしょうか。いや美しい!

 オスの翅の表には、構造色と呼ばれる光沢を持つ青紫色の鱗粉があります。構造色は、色素色と違い、そのものが色素を持っているわけではなく、鱗粉の物理的な構造により発色しているものです。CDやDVDの表面が光の角度で虹色に見えるのと似ています。従ってオオムラサキの翅の色も、光の角度によって色は微妙に変化して見えます。構造色はその構造がくずれない限り色は変わりませんが、鱗粉がはがれたり、並びが乱れると、翅の色はあせてきます。

 板に染みた雨の水分を吸っています。口吻はストローのように見えますが、実際は顎が変化したものなので、横に二つに割れていて雨樋が二本合わさったようなものです。羽化した直後はまだ割れていて、すぐにファスナーが閉じる様に合わさって管になるのです。また、タテハチョウ科のチョウはみな4本脚に見えますが、ほとんど使われない前脚が胸に小さく折り畳まれています。

 大きな複眼にある黒い点は偽瞳孔です。名前の通り偽もので、いつもこちらを向いているので見つめられているような気がしますが、光の入射角がこちらに向かっていると、光を全て吸収するため黒く見えるそうです。
 複眼といっても実際は、ひとつに統合された画像を見ているようで、画素数はそんなに高くないようですが、紫外線が見えたり、動体視力はいいようです。なので蝶に近づくには、なるべくゆっくりと動くことが逃げられないコツです。
 複眼の前の二本の角は、下唇鬚(かしんしゅ)といって、匂いを感じたり、複眼や口吻を掃除するものといわれています。

 オス同士の激しい縄張り争いを物語る一頭のオス。メスもそろそろ出現するでしょう。ぐずついた天気で発生が遅れている感じがします。

 ネムノキ(合歓木)の花。樹高10〜15mぐらいになり、花は樹冠で咲くのでなかなかこんな風に近接撮影はできません。長く伸びた線香花火のような紅色の雄しべが美しい花です。花弁は5つで真ん中に雌しべがあります。この葉は合歓皮(ごうかんひ)といって漢方薬です。利尿、強壮、鎮痛、腰痛、打ち身、腫れ物、水虫、手荒れ、精神安定などに効くそうです。貝原益軒は「この木を植えると人の怒りを除き、若葉を食べると五臓を安じ、気をやわらげる」と記しています。
「わぎも子が 形身の合歓木(ねぶ)は 花のみに 咲きてけだしく 実にならじかも」大伴家持(巻八-1463)
 (あなたからもらった形身の合歓木は、花が咲くばかりで実にはならないかもしれません・・)


(左)ネムノキの名前は、夜になると葉が閉じてしまうことからです。葉全体が茎に付着する部分と小さな葉がそれぞれ付着する部分(葉柄)の基部がふくれていて(葉枕)その細胞内圧力(膨圧)が昼夜で変化するので葉が閉じたり開いたりするのだそうですが、何かの防御機能なのでしょうか。(右)ヨウシュヤマゴボウ(洋種山牛蒡)。北アメリカ原産の帰化植物で毒草です。

 そのヨウシュヤマゴボウで吸蜜するルリシジミ(瑠璃小灰蝶)。翅の表面は水色から明るい青紫色。ヤマトシジミと似ていますがかんたんな見分け方は、ルリシジミは目が黒、ヤマトシジミはねずみ色。

 ホソヒラタアブ(細平田虻)。体長は10〜12ミリぐらい。複眼の間が空いているのでメス。幼虫はアブラムシの天敵です。左下に伸びているのは蜘蛛の糸。

 ミナミヒメヒラタアブ(南姫平田虻)。体長は約8~9mm。小さいです。細くて見ようとしないと見えません。複眼がつながっていて胴がスリムなのでオスです。玉虫色の翅が美しい。コントラストが強すぎてなかなか難しい撮影でした。

(左)ホソヒラタアブの飛翔。シャッター速度優先にする時間がありませんでした。(右)タケニグサ(竹似草)の花にぶら下がりました。

 タケニグサにシロテンハナムグリ(白点花潜)。​コガネムシ科の甲虫で、体長は6〜25mm。幼虫は、朽木や腐植土を食べます。周囲のタケニグサにたくさんいました。タケニグサは毒草で、茎を折ると中空の中から黄色い液体が出てきます。殺虫成分があり、江戸時代はこれを便槽に入れていたそうです。

 望遠レンズの時に偶然近づいてきたのはメジロ(目白)。目白押しの元となったピッタリとおしくらまんじゅうのように枝に並ぶ習性があります。満開の桜でよく見られます。雀より小さく可愛らしい。

 妻女山の四阿の展望台から見る茶臼山。先日撮影に行った茶臼山自然植物園が見えます。午後になって雲が覆いオオムラサキも昼寝に入ったので山を下りて温泉へ向かいました。この先はぐずついた日が続く予報。大水害が起きないといいのですが。信州にも麓からは見えませんが、山の中のあちこちに廃棄物処理施設や残土捨て場、ソーラーパネルがあります。グーグルアースで見ると分かります。ソーラーパネルは、製造や廃棄の過程で、カドミウム、カドミウムテルル、セレン、鉛などの猛毒物質が出ます。その安全な処理方法やシステムは確立されていません。原発と同じです。決してクリーンエネルギーではありません。今週は撮影に行けないので、週末に粘菌図鑑をアップする予定です。

 国蝶オオムラサキの美しさや儚さや、その生態が分かるスライドショーです。BGMは、ガレージバンドで作ったオリジナル曲です。タイトルをクリックするとYouTubeのページが開きます。ぜひハイビジョンでご覧ください。

Omurasaki butterflies in Japan 2011 Part 1of3【オオムラサキ】


Omurasaki butterflies in Japan 2011 Part 2of3【オオムラサキ】


Omurasaki butterflies in Japan 2011 Part 3of3【オオムラサキ】


Omurasaki butterflies in Japan 2012【オオムラサキ】


その他の愛すべき蝶たちです。
Butterflies in Saijo Mountains 2012【妻女山山系の蝶】


『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

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茶臼山自然植物園へ。ナミハンミョウ、ベニシジミ、モンキチョウ、ジャノメチョウ、ツバメシジミ(妻女山里山通信)

2021-07-04 | アウトドア・ネイチャーフォト
 土曜日の午前中は晴れの予報。明け方近くまでかなりの雨が降ったので妻女山は諦めて茶臼山へ。途中で鹿に遭遇。逃げてピーッと威嚇音。近くに群れがいたのかも知れません。気温は22度でしたが湿度は100%。やはり、何もいません。諦めて下の茶臼山自然植物園へ行くことにしました。困った時の植物園です。
茶臼山自然植物園・恐竜園 | 茶臼山動物園

 帰り道に明るい林道で見つけたナミハンミョウ(並斑猫)。コウチュウ目オサムシ科のハンミョウ亜科。タマムシと並んで日本では最も美しい甲虫の一種です。警戒心が強く近づくとすぐ逃げるので、なかなかマクロ撮影が困難です。すぐ先で止まるのを繰り返すので、道教えとか道標とも呼ばれます。息を止めて気配を殺してゆっくりと近づき撮影しました。アリやミミズなどを大顎で捕らえて食べます。斑猫という名は、獲物に襲い掛かり鋭い大アゴで捕獲する姿がまるで猫のように見えることに由来しており、英名ではタイガービートルといいます。

 茶臼山のアルプス展望台からの眺め。拙書でも紹介していますが、晴れていればここからの北アルプスは絶景です。左に仁科三山、右に白馬三山が見られます。見えている集落は山布施。日本の里山の原風景。右の谷は犀川で国道19号に出られます。信州新町道の駅のおしぼり蕎麦、手前のムサシヤのジンギスカンは大人気。サンコウチョウの月日星ホイホイホイという鳴き声が。帰りに樹間を飛ぶのを目撃しました。コバルトブルーの羽が美しい。

 植物園で最初に出会ったのはベニシジミ(紅小灰蝶)でした。わりと地面スレスレをせわしなく飛ぶ蝶です。幼虫の食草は、スイバ、ギシギシなど。あちこちで舞っていました。

 モンキチョウ(紋黄蝶)。里山、公園、畑、庭などで普通に春から秋まで見られるチョウですが、人の気配に敏感でなかなか撮影が難しい。後翅の両側が同じ形で欠損していますが、吸蜜中にニホンカナヘビとかに襲われた可能性があります。菅平の峰の原高原では県の天然記念物のミヤマモンキチョウが見られます。たった3分の邂逅の記事は、ブログ内検索でご覧いただけます。

(左)シモツケ(下野)。バラ科シモツケ属の落葉低木。シモツケソウという草本もあります。葉が紅葉みたいで花もとっちらかっています。(右)ハクサンフウロに似ていますが、園芸種でしょうね。ゲラニウムでしょうか。

(左)ジャノメチョウ(蛇目蝶)。シモツケの周りにたくさんいました。人の気配に敏感なので近づくと一斉に飛び去ってしまいます。葉の上に止まっている個体を後ろからそっと忍び寄って撮影しました。幼虫の食草は、ススキ、コメススキ、ショウジョウスゲなど。(右)マメコガネ(豆黄金)。マメ科植物やクヌギに群れて葉を食べますが、畑に出ると害虫ですね。この二匹は番(つがい)でしょう。

 ターシャ・テューダーの庭園みたいですね。色々なチョウや甲虫がいます。セイヨウミツバチやシオカラトンボもやってきました。

 ツバメシジミ(燕小灰蝶)。オスは翅の表が青紫ですが、これはメスです。幼虫の食草はシロツメクサやコマツナギなどマメ科植物。

 レッサーパンダで有名な茶臼山動物園南口ゲートの左の道を抜けていくと植物園の駐車場なのですが、知っている人が少なくいつ来ても閑散としています。展望台からの眺め。

(左)展望台。この右の森の向こうはアスレチックで子供達に大人気ですが、この日は誰も来ませんでした。(右)シロバナキキョウ(白花桔梗)。秋の七草。韓国では根を食用にするそうです。
「秋の野に 咲きたる花を 指折りて かき数ふれば 七種(七草)の花」「萩が花、尾花、葛花、撫子の花、女郎花、藤袴(またあさごほの花」山上憶良 万葉集:あさごほ(朝貌)の花が桔梗。

(左)クマバチ。吸蜜するのは園芸種のクガイソウの仲間か。(右)吸蜜するセイヨウミツバチ。

(左)アザミに集まったアブラムシを食べに来たナナホシテントウムシ。人間からすると益虫です。てんとう虫のサンバ。(右)疲れて木陰のベンチで休んでいたら小さなクモが。お尻に顔があるぞ。カニグモ科のハナグモの仲間ですね。胴は3ミリぐらい。可愛いやつです。

(左)ニッコウキスゲに似たユリ科の植物に大量のアブラムシ。調べると、キスゲフクレアブラムシ。別名はゴンズイフクレアブラムシ。橙黄色でロウ質の白い粉で覆われています。やはりユリ科のノカンゾウやヤブカンゾウなどにつく様です。(右)ガクアジサイで吸蜜するクマバチ。脚には大量の花粉が。クマバチは体の大きさに比して翅が小さいので、昔は航空力学的に飛べるはずがないといわれましたが、「レイノルズ数」(流体力学において慣性力と粘性力との比で定義される無次元量)で、飛べる原理が証明されました。

 ガクアジサイ。アジサイ(紫陽花、八仙花)の原種。有毒植物です。遠くに松代東条の奇妙山。

 切り株の脇にベニシジミ。羽化して間もないのでしょうか。やっと翅が広がって乾いたところか。動きがヨロヨロとぎこちない。

 やっとシロツメクサの花に飛び乗れました。吸蜜しているのかな。午後になると雲が覆いました。気温は30度。木陰にいても汗だくです。蝶の活性も落ちてきたので撮影を終えて戸倉上山田温泉へ向かいました。

『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。郷土史研究家でもあるので、その山の歴史も記しています。地形図掲載は本書だけ。立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいです。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。分かりやすいと評判のガイドマップも自作です。『真田丸』関連の山もたくさん収録。

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