モリモリキッズ

信州里山通信。自然写真家、郷土史研究家、男の料理、著書『信州の里山トレッキング東北信編』、村上春樹さんのブログも

森の中に恐竜の卵かとオニフスベ(妻女山里山通信)

2010-09-27 | アウトドア・ネイチャーフォト
 実際少し離れたところから草むらの中に見えたその姿は、まるで恐竜の卵のようでした。恐竜がいるはずもなく、だれだこんな所にバレーボールを捨てたのは!?と思いかけて、すぐに気がつきました。オニフスベだ! 叩くとポンポンとバレーボールのようないい音がします。持ち帰って計測すると、直径34センチ、周囲74センチ、高さ18センチ、重さ1229グラムありました。扁平のバレーボール、あるいは恐竜の卵といった感じです。

 オニフスベは、鬼燻、鬼瘤と書き、ハラタケ目ホコリタケ科のキノコです。別名は、薮玉(ヤブダマ)、薮卵(ヤブタマゴ)、馬屁包、馬糞包、灰包菌、地煙などといい、方言も多数あるようです。一見深山にはえる希少なキノコのように思えますが、さにあらず。庭先や畑などにも出て人を驚かせることがよくあります。実は我が家の庭にも以前出た事があるそうです。日本にはオニフスベとセイヨウオニフスベがあるらしいのですが、これはどちらでしょう。胞子を顕微鏡で観察しないと同定できないようですが。

 1712年(正徳2年)頃出版された江戸時代の百科事典『和漢三才図会』巻九十七苔類では、馬勃(ぼうべいし)として紹介されています。「煮て食べると味は淡く甘い。老熟したものは、はなはだ大形で、死者の首に似て醜い。」と書かれていますが、馬勃とは馬のおならのことです。ホコリタケの仲間は、成熟すると胞子を飛ばしますが、人が蹴ったりつぶしたりすると、勃(ボッ)と胞子が吹き出ます。その様を馬の屁(あるいは馬の糞)にたとえたのでしょう。もっとも馬勃とはオニフスベだけでなく、ホコリタケ一般をさすらしいのですが。

 「煮て食べると味は淡く甘い」とありますが、かなり木の臭いが強烈です。ゆでこぼすか、濃い味付けにしないときつそうです。あちこち調べても美味からず不味からずとか、食べられるが美味しいものではないとか、食べたけれど二度食べたいとはおもわないとか、大きなマッシュルームといえなくもない姿ですが、どうも評価はもうひとつのようです。食指が動きません。ただ薬効はあるようで、清肺、利咽、解毒、止血作用があるとして、漢方薬として用いられたようです。このオニフスベは、写真を撮って皆に見せた後で森に返すことにします。

 森の日だまりでは、明治時代中頃に帰化したというマルバフジバカマが咲いていました。どこからかハナバチがやってきて吸蜜を始めました。しかし、わずか一匹だけ。本当に異常です。去年なら無数のハナバチ、ハナアブ、チョウが乱れ飛んでいました。春の低温と夏の猛暑で多くの幼虫が死んでしまったのでしょう。この異常が来年回復するのは難しいでしょう。恐らく早くて3-5年、遅ければ7-10年はかかるのではないでしょうか。かのアインシュタインは、「ミツバチが絶滅したら人類は4年で滅ぶ」といいましたが、カタストロフィが間近に迫っているのでなければいいのですが。自然の警告を見逃してはならないと思います。
 
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長野電鉄屋代線で岬・城跡・古墳巡り(妻女山里山通信)

2010-09-23 | 歴史・地理・雑学
地図を見るにはこの文章をクリックしてください。左の地図はダミーです。表示に多少時間がかかる場合もあります。地図のアンカーマークをクリックすると説明が表示されます。

 長野電鉄屋代駅から松代に向かい乗車すると、右手にいくつも尾根が見えてきます。そこには歴史マニア垂涎の山城や古墳が数多くありますが、多くの尾根の先端に「なになに崎」という海に突き出た岬のような地名がついています。そして、その下に広がる平地には、「なになに沖」という地名がついたところがたくさんあります。

 たとえば、清野の弓形の平地は清野沖といい、東沖、中沖、西沖と分かれています。畑仕事に行く事を「沖へ出る」といったこともあるようです。その昔、川中島が湖沼や湿地帯だったころの名残でしょうか。川中島は主に犀川の氾濫原でした。千曲川は流量の豊富な犀川に押され、南側の山脈に押される様にして強く蛇行しながら流れていました。

 前述したように、この千曲川右岸の山々には、古代から戦国時代、江戸時代と、歴史マニアや歴女垂涎の史跡や遺構がたくさん残っています。それらをgoogleマップのマイマップに描画してみました。ブルーの黒点が岬。レンガ色が城跡、黄色が古墳、水色はその他の史跡や地名です。地形モードでご覧ください。ポイントの位置は、必ずしも厳密ではなく、その周辺を表すこともあります。長野電鉄屋代線に乗ったつもりで屋代駅から順に辿ってみてください。また、実際に乗車して訪ねてみるともっと面白いと思います。
 
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異常気象でキノコが!!!(妻女山里山通信)

2010-09-19 | アウトドア・ネイチャーフォト
 PC作業の仕事あけに、この夏できなかった山仕事に励みました。しかし、さぼっていた報いは当然のごとくあるわけで、葛(クズ)、アレチウリ、鉄葎(カナムグラ)が大繁茂していました。このまま放置すると、アレチウリ、セイダカアワダチソウ、ブタクサ、ヨウシュヤマゴボウ、カモガヤなどの帰化植物の寡占状態になってしまい、在来種が淘汰されてしまいます。葛クズとカナムグラは在来種なのですが、繁茂しすぎると生態系のバランスを著しく損なう事になります。とりあえずカナムグラと2時間ほど格闘しましたが、あまりの重労働に途中で断念しました。カナムグラは、つるに棘があり、しかも長い茎は腹が立つほど強靭なのです。

「葎這ふ いやしき屋戸も 大君の 座(ま)さむと知らば 玉敷かましを」
 万葉集の選者のひとりともいわれる左大臣 橘諸兄(たちばなもろえ)の一首ですが、「ムグラのはう粗末な家ですが、大君がおいでになると知っていたら、玉を敷いてお迎えしたのですが」のムグラとは、八重葎ではなく鉄葎(金葎)のことだろうといわれています。山深い山村に行くと、鉄葎に覆われた廃屋を目にすることがあります。

 休憩を兼ねてキノコの様子を見に行きました。例年ならばハタケシメジが出てジコボウ(ハナイグチ)もぽつぽつとで初めている頃です。しかし、一本も出ていませんでした。普通は、アカヤマドリ、ヤマドリタケモドキ、チチタケなどの夏キノコの後にチチアワタケが出て、ザラエノハラタケが出るとハタケシメジが出て、まもなくジコボウが出るのですが、その順番が全くおかしなことになっています。山にはキツネノカラカサの大群落がありました。雨は降りましたが、猛暑の影響でまだ地温が高いのでしょう。今年は松茸も不作の様です。発生が一、二週間遅れそうですが、その後も順調に出るとは考えられません。おそらく不作でしょう。

 そんな異常な風景の山中を歩いて我が家の山に戻ると、去年30センチ近いコフキサルノコシカケ(写真最上部)を採った後にすぐに出てきたものが、12センチぐらいになっていました(写真下三枚)。しかも二段で出ています。このコフキサルノコシカケなんですが、近年低山や里にあるものはオオミノコフキタケといって別種であるということが分かりました。北海道にしかないという報告もありますが、真偽のほどは不明です。問題は、その薬効成分です。コフキサルノコシカケは、その高い制癌作用から非常に高価で取引されています。オオミノコフキタケにそれと同等の作用があるかどうかです。あれば問題ないのですが、なければ詐欺まがいの商品ということになります。早くどこかの研究機関で調べて発表して欲しいものです。

 前の記事で書きましたが、今年は春の低温で蜂が以上に減少しています。蜂は非常にデリケートな昆虫で、異常気象や農薬(ネオニコチノイドなど)に弱く、全世界的に蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder:CCD)が大問題となっていますが、それ以上にものいわぬキノコ達も、無言の警告を発しているのではないかと危惧します。信州の山では松食い虫対策として、農薬の空中散布をしているところがありますが、その生態系に対する影響を詳しく調査したという報告はどこにも見られません。 健康被害が出て中止した自治体もありますが、松食い虫対策がなされないと、それはそれで松枯れ病を引き起こし、甚大な生態系の破壊が起きるので、非常に悩ましい問題です。国産松茸も食べられなくなります。

 そんな時に山仕事仲間のKさんと久しぶりに出会いました。山の情報交換をしていると、妻女山山系で月の輪熊が出没したということです。麓のリンゴの樹に登りリンゴを食べて帰ったようです。この辺りに出る熊は、約7、8キロ先の鏡台山から来るもので、充分活動範囲なのですが、例年ならば冬眠直前の12月頃と、冬眠あけの三月に集中するのですが、今の時期に来るのは異例です。それだけ山に木の実などの食料がないのでしょう。これから観光やキノコ狩りのシーズンですが、要注意です。
 
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異常に蝶が少ない!(妻女山里山通信)

2010-09-15 | アウトドア・ネイチャーフォト
 春の低温が響いたのか、今年は初夏の里山を彩る氷河期の生き残りウスバアゲハもほとんど見ませんでした。そして、梅雨前後に大量に発生する色々な蝶がほとんど見られませんでした。シジミチョウに至ってはほとんど皆無。山だけでなく畑でも、去年はモンキチョウ、モンシロチョウ、アカタテハ、キアゲハなどが無数に乱舞していたのですが、それもほとんど見られませんでした。毎年胡麻の収穫時期にたくさんとりつく10センチはあるシモフリスズメの幼虫も同様。オオムラサキに至っては皆無。

 そればかりか、ハナアブやハナバチ、ハチも異常に少ないのです。おかげで山の除草では、去年は4回もムモンホソアシナガバチに刺されたのですが、今年は一回も刺されませんでした。去年は4回襲われたオオスズメバチも一度も見ていません。家の軒下に営巣するアシナガバチの巣も今年は見られません。しかし、よかったとは言っていられません。あまりの少なさに、主にハナアブやハナバチによって花粉が運ばれる畑の虫媒介作物は、葉は生い茂るもののほとんど実がならずに全滅状態のものもあります。

 その後も梅雨の度重なる豪雨のせいか、異常気象と発表されたこの夏の猛暑のためか、昆虫界は異常が続いているようです。その影響は、秋になっても確実に植物にも影響を及ぼしているはずです。そういえば、今年はナツグミが全くなりませんでした。ミヤマウグイスカグラの実も見ません。こんなことは本当になかったことです。昆虫界にとっての異常気象は、この猛暑だけでなく、既に春から始まっていたということなのでしょう。この異変は確実にこの秋や冬、あるいは来春まで確実に影響を及ぼすでしょう。松代の地元の人達も遠くから山を眺めているだけでは、例年とまったく同じにしか見えないでしょう。しかし、里山の異常は確実に起きているのです。これが今年だけのもので、来年からは正常に戻るのか非常に心配です。注意深く見守っていきたいと思います。

 写真は、山麓の紫蘇の花に吸蜜に訪れた数少ない蝶たちです。これ以外には、ヒメハラナガツチバチ、アカタテハ、ヒラタアブなどがわずかに見られただけでした。なんとも寂しい小さな秋です。

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四阿山カルデラ一周アップ!(妻女山里山通信)

2010-09-11 | アウトドア・ネイチャーフォト
 【MORI MORI KIDS(低山トレッキング・フォトレポート)】に、米子大瀑布から根子岳、四阿山、浦倉山を一周した山行をアップしました。
 猛暑の影響は2000mを超える山でも例外ではありませんでした。この数日前に北アルプスの不帰ノ嶮(かえらずのけん)で若い女性が熱中症になったというニュースを読んで本当かなと思ったのですが、それもありなむという蒸し暑さでした。特に森の中は無風状態で高湿度。これは応えました。

 米子大瀑布からのカルデラ周回ルートは、約22キロあります。右周りで行くか、左周りで行くかは好みが分かれるところですが、今回は雷雨があった場合の増水のことを考えて沢を渡る橋の多い根子岳へのルートを先にとりました。左周りです。しかし、浦倉山からの道も沢をいくつも渡り、沢の中を歩くところもあったため、豪雨になればどちらでも難儀することとなるでしょう。

 コース上で特に危険な箇所はないのですが、特にカルデラ内ではルートが不明瞭なところもあり、道を間違えると遭難の危険性は高いといえるでしょう。難易度は高くないのですが、距離が長いので早出が必須です。熊の生息地なので熊除けグッズも必須です。また、このカルデラ内の川はほとんどが強酸性のため飲料水となりません、唯一浦倉山から下る途中に沢の中を歩く所がありますが、そのウラノ沢の水だけが飲用可です。この水は米子鉱山の飲料水としても使われたそうです。さらに下って山中にある大きな野猿田池(ソブ池・ソボ池)も強酸性で飲めないそうです。

 今回のルポは、湿度が高くカルデラ内はガスに巻かれて薄暗かったために撮影には非常に時間がかかりました。ボツになったカットもたくさんあります。その代わりというわけではないのですが、カルデラのパノラマ写真はそこそこよく撮れました。光源の角度が変わると露出が異なりつながらないので、光源を背中の真後ろにするのがコツなんですが、そういう意味では正午に四阿山というのはいい条件でした。露出を固定すると暗部がつぶれるか明部が白とびしてしまいますから。

 パノラマ写真、一番上から米子大瀑布。四阿山からカルデラ、四阿山から根子岳とカルデラ、四阿山から浅間山-烏帽子岳のカットです。




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米子大瀑布に残る米子鉱山跡(妻女山里山通信)

2010-09-06 | 歴史・地理・雑学
 四阿山カルデラ一周のトレッキングは、米子大瀑布を起点としましたが、ここには近代日本の遺産ともいうべき米子鉱山跡が残っています。その起源は古く、江戸初期ともいわれていますが、日本三大不動尊の一つ米子不動尊(瀧澤山家原院如来寺→米子瀧山威徳院不動寺)が奈良時代に行基により開山された古刹であるということを考えると、もっと古くから採掘されていた可能性もあります。また、奇妙滝のある奇妙山は仏教用語の「帰命」が転訛して奇妙となったもので、木食信仰遺跡があることからも、深山でありながら人の出入りはかなりあったと考えられます。そう思って調べると、8世紀の「続日本紀(しょくにほんぎ)」に、当時信濃国から朝廷へ石硫黄の献上があったことが記されていると分かりました。これは米子鉱山のことと推察されます。

 今回、米子大瀑布の上を歩いて初めて分かったのですが、カルデラの中は完全な原生林ではなく、特に大黒沢では落葉松の植林地があり、鉱山の遺構が部分的にたくさん残っているのです。今回のトレッキングルポでは、通り過ぎただけなので詳しくは撮影できませんでしたが、いずれ気になる場所を見通しの良い落葉期などに訪れてみたいと思います。

 米子鉱山については、須坂市のサイトや出版物、色々な方のサイトにたくさん出ているので記しませんが、その中で浦倉山から下る途中にあった分岐の先にあるという「ソブ池(ソボ池)」と「野猿田池」という記述に目が留まりました。米子大瀑布から浦倉山への登山道を登り、鉱山跡地が眼下に見える尾根に乗るとすぐに「ソブ池」への分岐があります。私は「ソブ」というのは、以前「みすずかる信濃」と「高師小僧(たかしこぞう)」の関係を調べていたときに知った「赤渋(アカシブ・アカソブ・アカソボ・アカシボ)」のことではないかと思ったのです。米子鉱山の産出物は、石硫黄、蝋石、ダイアスポア(藤石)などの他に褐鉄鋼も産出していました。四阿山系の川では、渓流の水が金気が強くて飲めないものがありますし、鉱毒水は現在も米子川に流れ込んで汚染を続けています。

 つまり「ソブ池」とは、褐鉄鋼により底が赤く染まった「赤渋池」のことではと思ったのです。しかし、金気水では飲料水にはなりません。そこでさらに調べると、そもそも「赤渋」というのはアイヌ語で、水の箱(底が岩盤の池)を意味する「ワァカウォプ」が転訛したものという説がありました。確認のために須坂市に問い合わせると、「ソブ池」の水は強酸性で飲めないとのこと。飲料水は私達も飲んだウラノ沢からひいていたということです。さらに地名を調べるとカルデラ内は池ノ平といい、「ソブ池」のある場所の小字名は野猿田(やえんだ)ということが分かりました。「ソブ池」は「野猿田池」ともいうらしいのです。「ソブ池」は俗称で、「野猿田池」が本来の池名なのでしょう。自然地名には日本人の歩んだ足跡を知る手がかりが隠されているのですね。

 米子大瀑布を「よなご」と読む人がいますが、正しくは「よなこ」で濁りません。ヨナは、文字通り米ですが、他に古くは火山灰や砂地を意味し、コは此処を意味します。(地名語源辞典)米子という地名が日本海側に多いというのは、またなにか古代からの地理的な交易や移動の証なのかもしれません。米子大瀑布の上には、鉱山跡地の台地にある登山口から30分も登ると見下ろせる尾根の肩に出ます。ここから米子の谷を見渡して鉱山の人々が働いていた往時を想像するのもいいと思います。火事や落盤事故もあり大変なこともあったとは思いますが、活気に満ちていたのではないでしょうか。

 私達は早朝に発ち夕方戻ったのでほとんど人には会いませんでしたが、今回もカップルで来た女性はスカートに普通の靴でした。米子大瀑布の周遊コースを回るのにも最低軽登山靴は必要です。雨後は泥濘状態になる場所もあります。山の天候は変わりやすいので雨具も必須。冬期はいりませんが、人出が少ない季節や平日に訪れるなら熊鈴もあった方がいいでしょう。もっとも冬は氷瀑クライミングの人達以外は入りませんが。
 カルデラの上は、地元の雄志の方やトレラン愛好者の方々が笹刈りやゴミ広いをしてくれているようですが、夏期は薮になる箇所があります。思いついて観光客が迷い込むと遭難します。また、山菜採りに入る人もいるようですが、飴の包み紙やペットボトルなどを絶対に捨てないようにお願いします。熊が怒っていますよ。

錦秋の米子大瀑布へ。米子鉱山の飲用水としても使われたというソブ池探索も(妻女山里山通信):ソブ池の写真はこちらの記事で。

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