川中島の戦いで上杉謙信が本陣を築いた妻女山陣場平の貝母は結実し始めました。前夜の雨というより今日の高温で貝母はしぼみ始めました。結実した花も多く見られます。しかし散っているわけではないので23日の週末までは充分に楽しめると思います。日本でここだけの里山の群生地を楽しんでください。
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実が少し成長すると花びらが散ります。これで直径6ミリぐらい。実の左の葉先はかなりクルクルと丸まっています。これで互いにスクラムを組んで、この時期訪れる爆弾低気圧の強風から身を守っているのです。5月中旬すぎには直径3センチぐらいになります。それを見に来る方もいます。
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通常は花びらが6枚で雄しべも6本ですが、これは7枚。すると雌しべの根元にある実も7つのヒレを持つ糸巻き状になります。
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最高気温は29度。山上でも26度ぐらいあります。日向はもっと。貝母は雪を押し上げて芽吹く様に寒さには強いのですが、暑さには弱い。25度以上の日が続くとしぼんでしまいます。そして夏には消えるカタクリなどと同じスプリング・エフェメラル。春の妖精、春の儚い命。夏から冬は、土の中で球根が来春のために栄養を蓄え育っています。
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貝母は下の方から咲き始め、下の方からしぼんで散っていきます。結実は、昆虫が受粉しやすい上部に多く見られます。
貝母の薬効について現地ではお話していますが、記事にしたことがなかったので載せます。生薬名 :貝母(ばいも)鱗茎を使用。 主要成分:アルカロイド(ペイミン、ペイミノン)、ジテルペノイド、など。 薬効:鎮咳作用・去痰作用・排膿作用。 薬理作用:血圧降下作用。 用途:鎮咳、去痰、排膿薬として煩熱、めまい、咳、口渇などに。 注意点:心筋を侵す作用があるので副作用として血圧低下、呼吸麻痺、中枢神経麻痺を引き起こす事もある。また、呼吸数や心拍数が低下する事もあるため、使用時は量に注意すべき。(薬草ですが、かなり強い毒草です。全草が有毒)
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逆光に輝く貝母。鶯の鳴き声が聞こえます。まもなくサンコウチョウの鳴き声も聞こえるでしょう。梅雨入り前に、森の中に散った貝母の球根を掘り起こして移植作業をします。それよりも大変なのがオオブタクサやハルジオンの帰化植物の除去。毎年1000本以上抜きます。
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貝母の群生地の中の山蕗も結実しています。
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早いですね。アカネ(茜)も出てきました。アカネ科アカネ属のつる性多年生植物。根が茜色で草木染めの原料になり、古代から使われました。東京の赤坂は、古くは茜が群生していたことから「茜坂」と呼ばれていたそうです。
「あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」 額田王 萬葉集1巻20
「あかねさす 日並べなくに 我が恋は 吉野の川の 霧に立ちつつ」 車持千年 萬葉集6巻916
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昼は堂平大塚古墳へ。作ってきたアジフライサンドで昼餉。枝垂れ桜は散り始めましたが、八重のエドヒガンが満開です。
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なんということでしょう。レンゲツツジがもう咲き始めていました。有毒なので蜜は吸えません。絶対に庭木で植えてはいけないツツジです。信州には湯の丸高原などレンゲツツジが有名な高原があちこちにあります。牧場にも多いのですが、ワラビ同様に牛は食べません。
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ヤマツツジも咲き始めています。こちらは蜜を吸えます。
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羽化したばかりのテングチョウ。真夏は夏眠し、秋にまた舞い、冬にまた冬眠する面白い蝶。ミヤマセセリもあちこちで見られます。
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セリ科のヤブジラミかなと思っていたのですが、葉を見るとヤブニンジンかなと。しかし果実の形が違うのでヤブジラミですね。実がくっつき虫となる厄介者です。
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ゴヨウアケビ(五葉木通、五葉通草)の花。アケビとミツバアケビの自然雑種。陣場平では貝母や山蕗がない場所に実生がたくさん見られますが、大きくはなりません。ほとんど夏を越せずに枯れます。アケビの蔓は昔は薪を縛ったり籠を編んだりしました。
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ミツバアケビ(三葉木通、三葉通草)アケビ科アケビ属の落葉性つる性木本。こちらは秋になる実が食用になります。ミツバアケビには雌花と雄花があり、同じ花序に両方がつきます。写真は雌花。
万葉集の「さのかた:狭野方」(アケビ)の歌は二首。
「さのかたは 実にならずとも 花のみに 咲きて見えこそ 恋のなぐさに」詠人不知
アケビを女性にたとえて、結婚できなくともせめて交際だけでもして欲しいと口説いている切ない歌。
「さのかたは 実になりにしを 今さらに 春雨降りて 花咲かめやも」詠人不知
さのかたは とっくに実になっておりますのに 今さら春雨が降って花が咲くなどということがありましょうか。実になりにしをとは人妻ということで、不倫などしませんわ、という歌。
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下山しようとすると目に青いものが入りました。なんとホタルカズラ(蛍葛)が咲き始めていました。1センチぐらいの緑の中に咲く青い星。ムラサキ科ムラサキ属に分類される多年草。
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二つ前の記事の写真と同じ場所。陣場平から長坂峠への林道。緑が濃くなりました。ガマズミの白い花も咲き始めていました。今年は春が早すぎて速すぎて季節の感覚がおかしくなりそうです。
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◆『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。地形図掲載は本書だけ。山の歴史や立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。10本のエッセイが好評。掲載の写真やこのブログの写真は、有料でお使いいただけます。
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★本の概要は、こちらの記事を御覧ください。
★お問い合せや、仕事やインタビューなどのご依頼は、コメント欄ではなく、左のブックマークのお問い合わせか、メッセージからメールでお願い致します。コメント欄は頻繁にチェックしていないため、迅速な対応ができかねます。
インタープリターやインストラクターのお申込みもお待ちしています。好評だったスライドを使用した自然と歴史を語る里山講座や講演も承ります。市民大学などのフィールドワークを含んだ複数回の講座も可能です。左上のメッセージを送るからお問い合わせください。
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実が少し成長すると花びらが散ります。これで直径6ミリぐらい。実の左の葉先はかなりクルクルと丸まっています。これで互いにスクラムを組んで、この時期訪れる爆弾低気圧の強風から身を守っているのです。5月中旬すぎには直径3センチぐらいになります。それを見に来る方もいます。
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通常は花びらが6枚で雄しべも6本ですが、これは7枚。すると雌しべの根元にある実も7つのヒレを持つ糸巻き状になります。
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最高気温は29度。山上でも26度ぐらいあります。日向はもっと。貝母は雪を押し上げて芽吹く様に寒さには強いのですが、暑さには弱い。25度以上の日が続くとしぼんでしまいます。そして夏には消えるカタクリなどと同じスプリング・エフェメラル。春の妖精、春の儚い命。夏から冬は、土の中で球根が来春のために栄養を蓄え育っています。
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貝母は下の方から咲き始め、下の方からしぼんで散っていきます。結実は、昆虫が受粉しやすい上部に多く見られます。
貝母の薬効について現地ではお話していますが、記事にしたことがなかったので載せます。生薬名 :貝母(ばいも)鱗茎を使用。 主要成分:アルカロイド(ペイミン、ペイミノン)、ジテルペノイド、など。 薬効:鎮咳作用・去痰作用・排膿作用。 薬理作用:血圧降下作用。 用途:鎮咳、去痰、排膿薬として煩熱、めまい、咳、口渇などに。 注意点:心筋を侵す作用があるので副作用として血圧低下、呼吸麻痺、中枢神経麻痺を引き起こす事もある。また、呼吸数や心拍数が低下する事もあるため、使用時は量に注意すべき。(薬草ですが、かなり強い毒草です。全草が有毒)
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逆光に輝く貝母。鶯の鳴き声が聞こえます。まもなくサンコウチョウの鳴き声も聞こえるでしょう。梅雨入り前に、森の中に散った貝母の球根を掘り起こして移植作業をします。それよりも大変なのがオオブタクサやハルジオンの帰化植物の除去。毎年1000本以上抜きます。
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貝母の群生地の中の山蕗も結実しています。
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早いですね。アカネ(茜)も出てきました。アカネ科アカネ属のつる性多年生植物。根が茜色で草木染めの原料になり、古代から使われました。東京の赤坂は、古くは茜が群生していたことから「茜坂」と呼ばれていたそうです。
「あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」 額田王 萬葉集1巻20
「あかねさす 日並べなくに 我が恋は 吉野の川の 霧に立ちつつ」 車持千年 萬葉集6巻916
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昼は堂平大塚古墳へ。作ってきたアジフライサンドで昼餉。枝垂れ桜は散り始めましたが、八重のエドヒガンが満開です。
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なんということでしょう。レンゲツツジがもう咲き始めていました。有毒なので蜜は吸えません。絶対に庭木で植えてはいけないツツジです。信州には湯の丸高原などレンゲツツジが有名な高原があちこちにあります。牧場にも多いのですが、ワラビ同様に牛は食べません。
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ヤマツツジも咲き始めています。こちらは蜜を吸えます。
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羽化したばかりのテングチョウ。真夏は夏眠し、秋にまた舞い、冬にまた冬眠する面白い蝶。ミヤマセセリもあちこちで見られます。
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セリ科のヤブジラミかなと思っていたのですが、葉を見るとヤブニンジンかなと。しかし果実の形が違うのでヤブジラミですね。実がくっつき虫となる厄介者です。
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ゴヨウアケビ(五葉木通、五葉通草)の花。アケビとミツバアケビの自然雑種。陣場平では貝母や山蕗がない場所に実生がたくさん見られますが、大きくはなりません。ほとんど夏を越せずに枯れます。アケビの蔓は昔は薪を縛ったり籠を編んだりしました。
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ミツバアケビ(三葉木通、三葉通草)アケビ科アケビ属の落葉性つる性木本。こちらは秋になる実が食用になります。ミツバアケビには雌花と雄花があり、同じ花序に両方がつきます。写真は雌花。
万葉集の「さのかた:狭野方」(アケビ)の歌は二首。
「さのかたは 実にならずとも 花のみに 咲きて見えこそ 恋のなぐさに」詠人不知
アケビを女性にたとえて、結婚できなくともせめて交際だけでもして欲しいと口説いている切ない歌。
「さのかたは 実になりにしを 今さらに 春雨降りて 花咲かめやも」詠人不知
さのかたは とっくに実になっておりますのに 今さら春雨が降って花が咲くなどということがありましょうか。実になりにしをとは人妻ということで、不倫などしませんわ、という歌。
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下山しようとすると目に青いものが入りました。なんとホタルカズラ(蛍葛)が咲き始めていました。1センチぐらいの緑の中に咲く青い星。ムラサキ科ムラサキ属に分類される多年草。
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二つ前の記事の写真と同じ場所。陣場平から長坂峠への林道。緑が濃くなりました。ガマズミの白い花も咲き始めていました。今年は春が早すぎて速すぎて季節の感覚がおかしくなりそうです。
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◆『信州の里山トレッキング 東北信編』川辺書林(税込1728円)が好評発売中です。地形図掲載は本書だけ。山の歴史や立ち寄り温泉も。詳細は、『信州の里山トレッキング 東北信編』は、こんな楽しい本です(妻女山里山通信)をご覧ください。Amazonでも買えます。パノラマ写真、マクロ写真など668点の豊富な写真と自然、歴史、雑学がテンコ盛り。10本のエッセイが好評。掲載の写真やこのブログの写真は、有料でお使いいただけます。
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