低山トレッキング・フォトレポート【
MORI MORI KIDS 】を訪問してくれる人の中に、度々検索で「キッズ トレッキング」とか「ファミリー ハイキング」、「子供 登山」などで来られる方がいます。掲載は2000年からですが、実は息子二人とも歩き始めてすぐに山歩きを始めています。子供達を自然に親しませたいと考える親は多いようですが、どんなことに気をつけたらいいかなど、意外な盲点もあります。今回は、そんなことを書いてみようと思います。10歳以下、特に小学校入学前の児童について詳しく記します。
遠足は別の効用があるので否定するつもりはありませんが、人数が多いため子供が自然と向き合う、または包まれる、対話する形になりません。なるべく少人数の方が、緊張感や子供なりの責任感や、自然と対峙する気持ちが育ちます。慣れて来ると、親が無理に教えなくとも子供なりに自然の中での溶込み方や楽しみ方を見つけられる様になります。
長男次男とも初登山は、歩き始めた1歳時の信州の妻女山(川中島合戦で上杉謙信が布陣したところ)でした。 今では笑いぐさですが、次男が初めて高尾山の稲荷山コースを登ったのが2歳半の時。上下紺のジャージのもじもじ君スタイルに、ミスタードーナッツでもらった小さなリュック。追い抜くおばさんトレッカーに「まあかわいい。その中には何が入ってるのかなあ?お菓子かなあ」なんて言われつつ登ったものですが、入っていたのは紙おむつ1個。稲荷山の休憩所では、アメリカ人のおばさんに「まだベイビーじゃないの」と言われ、普通1時間半位で登れるコースを3時間もかけて登りました。頂上直下では10mおきに小休止して麦チョコで栄養補給。但し、これは2歳半としてはかなり異例。次男は毎日保育園まで1キロを歩いて通っていたという経験があったためで、毎日長距離を歩いていない子供には無理。その子にあった無理のない山を選びましょう。有名な山である必要はありませんが、無名の山は登山道が整備されておらず、作業道がたくさんあり、北アルプスより道迷いしやすい場合が多々あります。(以下リンク自由、出典記せばコピペも自由、誤記あれば修正)
■プライオリティ(優先順位)をはっきりさせる。
もっとも大事な事は、怪我や病気もなく元気に帰還すること。命が一番大事。
そのための方策を第一とする。そして楽しく。
自然は子供相手でも手加減をしてくれない。理不尽もある。想定外も想定内に。山での基本は、子供であれ自分の事はまず自分で守る。そして、子供自身がアウトドア体験を通して、生きる上でのプライオリティを言葉だけではなく経験や直感で会得していくことが大事。
ここでは、亜高山ではなく、低山(今回の場合は1500m以下)が前提。岩場の技術や亜高山以上は別のサイトを。
■予定
●午後2時には下山。(携帯電話を過信しない。繋がらない場合もある)
これは万が一怪我や病気で動けなくなったり不測の事態が起きた時に、下まで救援を頼みに行き明るいうちに戻って来れることを想定。早発早帰が基本。
山の日暮れは早い。特に早春や晩秋は3時過ぎると森は薄暗くなる。山は早出早帰が基本。
●初めは標高差100mぐらい、片道30分位から。徐々に伸ばして行く。いきなり富士山に行かない。都内ならまず高尾山へケーブルカーで。
その後、慣れたら徐々に高尾山を麓から登り、次に高尾山から見える山に登ってみる。東京の例:子仏城山・景信山・陣場山等。
長野市周辺なら、妻女山・茶臼山・旭山など。遠足で低学年が登る山。
●万が一の時のエスケープルートがたくさんあり、本当は頂上まで車でも行ける山(例:高尾山)が最初にはいい。
都近郊の高尾山や子仏城山・景信山・陣場山等のように茶店がある山を選ぶのも万が一のためにいい(但し閉まっている場合も)。
●地形図や登山地図を子供と見てシミュレーションする。慣れると3Dでルートを頭の中に描ける様になる。
登山地図の所要時間は成人男子の平均なので、子供の場合は年齢や経験により1.5倍か2倍と見る。一度登ればだいたいペースがつかめるはず。
Googleマップの写真を見ると山の植生が分かる。針葉樹林と広葉樹林の区域等地図に書込んでおくと目安になる。他のサイトで情報を得る。
●普段から親子とも歩く。エレベーターやエスカレーターを使わない。体調が悪ければ中止する。
■服装・装備・食料
●登山地図・コンパス・地形図。(注意:地形図の破線は旧道で消滅しているものもある)
●下着・上着共撥水性の高い化学繊維がいい。木綿は汗を吸うが発散しないので冷える。ブランド品である必要はない。素材が大事。脱ぎ着し易い伸縮性のあるものを重ね着。子供は汗かきなので着替えを持つ。アルミがラミネートされたエマージェンシーシートも必須(100~500円位)。α線β線も遮断できる(γ線は突き抜ける)。
●靴は足首まである子供用のトレッキングシューズを。最近は安価でいいものがネット等でも買えるが、これだけは当たり外れがあるし足に合わないとだめ。ブランド品がいいとは限らない。18センチ以下はほとんどないので店で探すしかない。足首まであり、底の型がビブラム擬でやや厚めのもの。やや厚めの化繊の靴下を履かせる。
●雨具は必須。防水性があれば安くてもいい。山の天気は低山でも変わり易い。晴天でも雨具を。手袋(季節に応じたもの)・帽子(あごひも付)。
●2、3歳以下の場合は、万一のためにアルミの背負子(ベビーキャリア)、それ以上はおんぶ紐になるものがあるといい。疲れたり足をくじいて歩行不能になった時の用意。ザイルでもいい。
●靴ひもが切れたり、靴底が加水分解して剥がれた時の為に、靴ひもの替えと布ガムテープ。
●救急用具とトイレットペーパー。ゴミ袋。タオル。手ぬぐい。輪ゴム。
救急絆創膏、消毒剤はもちろんだが、清潔な手ぬぐいを何枚か持つと便利。包帯や止血に使える。虫刺されに軟膏。
●最初は、おやつ程度が入った小さめのリュックを背負わせる。おにぎりや飲み物は親が持つ。慣れて来たら徐々に増やす。擦りむいたりした時に傷口を洗える様に、真水か日本茶があるといい。
●春秋の肌寒い日は、魔法瓶に熱湯を入れ、マルコメの即席生味噌汁が重宝した。おすすめは豚汁。バーナーと水を持って即席ラーメンを作るのも温まる。
●【重要!】 4歳以下の子供は疲労を感じるセンサーが未発達。よって歩けないと言ったときは既に限界。絶対に無理をさせてはいけない。子供に合わせる。登頂したら褒める!
しかし、小休止(5分)と行動食(飴・チョコ・クッキー等)、水分補給ですぐ復活。大人以上に小休止をこま目に。
●水分補給を頻繁に。最低500cc。夏場は二倍以上必要と考える。真夏は凍らせたものもあると便利。
子供は、老人と同様脱水症状になりやすい。
●スポーツゼリーは、吸収が早くエネルギーの補給に最適。
●蜂除けに黒い色の服や帽子は避ける。刺された時のために、毒を吸い取る「ポイズンリムーバー」があるといい。1000円ぐらいからある。
●子供の場合、おにぎりは小さめを複数用意する。腐り易いものは避ける。
●飴・チョコ・クッキー・ミントタブレットなど。ミント系は虫除けになるが、イチゴ・バナナ味などは虫を引きつける。化粧品は無香料を。
●夏場は、蚊除けスプレー(ハーブで自作が安全)。クマ除け鈴・ホイッスル。クマ、イノシシには注意。高尾山にも出没。
他に毒虫や毒草もたくさんある。むやみやたらに口にしない(いるんだこういう人が)。
ニリンソウとヤマトリカブト、セリとドクゼリ、秋冬の赤い実はほとんど毒等。毒キノコに注意。(自然には食べたら命に関わるものが多数ある。図鑑で判別は危険)
●オオスズメバチの威嚇。近くでホバリングしながらカチカチと顎を鳴らす。巣が近い証拠。速やかに去る。巣に近い場合頭に体当たりされる。石を投げられたくらい痛い。速やかに去る。悲鳴をあげたり手で払ったりしない。それでも不用意に巣に接近し巣を踏んだ場合。刺されまくって・・天国。
●初夏から夏は日射病、熱中症。春秋は低体温症に注意。
●藪山の場合は、サングラスやゴーグルを。放射性物質の吸引防止に、場合によってはマスク。
●万が一の場合に備えて懐中電灯。ヘッドランプならベスト。ラジオもあるといい。但し
装備は軽く。
■山登り
●まず準備体操。動的ストレッチを入念にやる。特に脚の裏の筋をよく伸ばしておく。
●基本は、子供を1、2m位前を歩かせる。(危険を注意でき、回避し易い。安全な所以外で走り出したら制止する。怒るのではなく理由を説明する)
少々の崖登りなども、後ろから支えられる。前を歩かせることで、子供に先導者としての責任感も生まれるかも。熊が棲む山ではちょっと勇気も要る。
子供はペースをつかめない。初めに駆け出したりしがち。怪我のもと、後半必ずバテる。それをきちんと話して説明する。それを聞くかどうかは普段の親子関係。
●例外は、急な下りの場合。転落防止のため後ろを歩かせる。本当に危険な箇所は、抱くか腕をつかんで補助。手をつなぐはだめ。高尾山でもそういう場所はある。
●必ずしもピークハント(登頂)をしなくてもいい。天候の急変(雷雨)など、危険を察知したら迷わず引き返す。エスケープルートを頭に入れておく。
例えば人気の高尾山から陣場山までの縦走の場合、明王峠で相模湖駅へ下りるとか。
●登る以外になにか、山を楽しむことをする。
写真・絵画・昆虫採種・植物採種・探鳥・山菜採り・キノコ狩り・工作の材料集め・石採種・化石・山座同定等々。帰ってからも楽しめる。
●地形図・コンパスを携行し、子供と現在位置を確認しながら読図法を覚える。
●道に迷ったら、分かる所まで引き返す。地形図や下界や鉄塔を見て位置を把握する。基本は尾根に乗る(下らない)。
●ハイカーとすれ違ったら元気よく挨拶。しかし、団体さんと出会うと挨拶地獄になり、息子が転んだことがある。ほどほどに。
●福島第一原発の事故により、山によってはかなりの放射性物質が沈着しているところがある。事前に調べて高線量の山は避ける。
落ち葉や草に直接座らない。木製のベンチも同様。枯葉等の埃を吸わない様に気をつける。これらは特に若い女性も同様。
●日帰り山行のトイレは、登る前に済ませるのが基本。山頂に茶店のトイレや公衆トイレがある場合はそこで。雉撃ち(小用)、熊撃ち(大)は、非常時と考えるが、我慢は禁物。登山道の真ん中でしていたおばさんがいたが、言語道断!
●山のマナーについては、登り優先とかあるが、年配の人等にはお先どうぞと言われる事も少なくない。基本は下界と一緒だが、山特有の危険を回避したり、環境のためにしてはいけないことや、しなければいけないこともある。これらについては、各自で勉強されたし。
子供がやりがちなこと。石を投げる。石を落とす。不用意に枯れ木に寄りかかる。脇見して木に激突。ほどけた靴ひもを踏んで転ぶ。渓流に落ちる。もらす。
●ゴミは全て持ち帰る。
●山のブランド信仰を持たない。いい山は自分で見つける。
●山は登る為にだけあるのではない。特に低山は、暮らしや歴史が山の自然と密接な関係にある。それを学ぶべし。
●無地帰還したら万歳をする。(これは信州人だけか・・)
それでは、よい山登りを! 例は、低山トレッキング・フォトレポート【
MORI MORI KIDS 】をご笑覧ください。小学生以下には、2005年以前が参考になると思います。
★ 「プライオリティ(優先順位)をはっきりさせる」ということは、地震や原発事故でも同様。「多数派同調バイアス」と「正常性バイアス」にかからないように、常に心の訓練が必要。「津波てんでんこ」は、語感が可愛いが、「津波が来たら、取るものも取らず、肉親にも構わずに、各自てんでんばらばらに一人で高台へと逃げろ」、「自分の命は自分で守れ」ということ。また、自分自身は助かり他人を助けられなかったとしてもそれを非難しない、という不文律にもなっている。--- という村の全滅を防ぐためには、道徳的規範を一時的に捨てなければならないという厳しい言葉。(wiki) 信州の「戌の満水」や「善光寺地震の鉄砲水」では、むしろ山際の人が多く犠牲になった。いつでも逃げられると慢心して避難が遅れたためといわれている。先祖もふたり犠牲になった。
★ 福島第一原発の事故により、東北関東の山は場所によりかなり放射性物質で汚染されています。事前に情報を集め、危険な山には登らないように。また、山菜やキノコも汚染されています。低い汚染地帯での除染は、キノコの除染については、
【信州の里山】キノコの放射能汚染と除染について をご覧ください。
次男が小学一年生の時に登った五日市市養沢の養沢神社裏のサルギ尾根から御岳山へ登った記録です。現在はコースが整備された様ですが、当時は標識もはっきりした道もなく、完全なバリエーションルートでした。当日の気温は1度と寒い日でした。親の少し前を歩かせると、危険を察知しやすいのと指示ができます。下りは親が前を行った方がいい場合もあります。危険な箇所では止めて、どう登ったらいいか考えなと言います。本当に危険な場合は、細かく指示を出しますが、経験を積むと答えを出せるようになります。しかし、それでもコースを間違えることがあるのが里山です。作業道や獣道があちこちにあるからです。
VIDEO
◉ここからは2015年7月の追加記事になります。
『信州の里山トレッキング 東北信編』 川辺書林(税込1728円)が発売中。ファミリーにも登れる山もあります。長野市や松本市、上田市などの平安堂書店さんでお求め頂けます。蔦屋書店さんにも。東京は銀座の長野県のアンテナショップ「
銀座NAGANO しあわせ信州シェアスペース 」にも置かれるそうです。最近は、首都圏から信州の里山に登りに来る人も多いですから。
こちらのAmazonのページからも買えます 。でも、できれば地元の書店さんを元気にして欲しいと思っています。
表紙カバーは、青木村の子檀嶺岳(こまゆみだけ)です。ルビがないととても読めない山名ですが、その由来や歴史についても本文では詳しく書いています。単なる山登りのガイドではなく、生態系や歴史、里人のその山に対する想いなどについても記しています。それを抜きにしては里山の魅力は半減します。豊富な写真と合わせて、観ても読んでも面白い本になっていると思います。最近増えている山ガールや女性のハイカーにも楽しんでもらえるように、可愛いイラストを入れたり、美しい山野草の花のマクロ写真もたくさん入れました。もちろん、ベテランの藪山好き男性にもきっと満足していただける変態コースも入れてあります(笑)。
扉は、千曲市倉科の三滝の最上部にある三の滝。真夏でも水温が10度と低く、爽風が吹き、気持ちのいい谷です。ここから三滝沢を詰めて、鏡台山まで約2時間半。標識も整備された登山道があります。冬は、条件が揃えば美しい氷爆が見られます。
目次のパノラマ写真は、長野市南部の妻女山展望台からのもの。本文中には、特殊な技法で写真を6~10枚つないだパノラマ写真が、何枚も掲載してあります。目次に掲載された山は、38座。山名索引には78座載っています。コースは74と豊富です。ファミリーを含めた超初心者向けのコースから、一般向け、経験者向け、あるいはバリエーションルートが好きな藪山好き向け、体力の要るロングコースと、バリエーションも豊富です。
各山の紹介は、まず歴史から始まり、自然の生態系へ。コースの紹介でも、歴史や生態系などにも触れています。ハイカーだけでなく、歴史好き、山野草好き、昆虫好き、サイクリストやトレランの人たちにも役に立つ本だと思います。また、山へは登れないけれども山が好きな人、山に登れない日などに読んでいただけると幸いです。
地図は、国土地理院の承認を得て私が描き起こしました。コースは縮尺の関係上、必ずしも厳密ではありませんが、必要以上に情報を入れ過ぎると、重要なポイントを見落とす恐れがあるので、できるだけシンプルにを心がけました。よって、所要時間は基本的には、登りのみを記しています。また、車で行かれる人が多いので、駐車スペースを必ず記しています。山名については、自然地名は貴重な文化財産との考えから、できるだけ記するようにしました。山名というのは、必ずしもひとつではないので、可能な限りそれらも本文中に記しました。
本文中には、私が撮影した様々な写真が豊富です(なんと668点)。パノラマ写真だけでなく、花(145点)や蝶などの昆虫、野生動物や地衣類、菌類から粘菌まで。コースの重要なポイントの写真を載せているのも特徴です。コース写真などは、本文と記号でリンクしているので、照らしあわせて読んで頂くと状況が分かりやすいと思います。もちろん季節によって変わりますが。
コラムは、10本入れていますが、実はこれが結構肝なんです。いずれもこのブログで非常にアクセスの多いものを再構成してリライトしたものです。意外な驚きや発見があると思います。
「怪しくも美しい粘菌も宇宙船地球号の乗組員(上の写真)」「みすずかる信濃の国の鉄バクテリアがずくを出す」「イカリモンガってなにもんだ」「猫にマタタビ、熊に石油」「「森の哲人」ニホンカモシカの好奇心」「オオムラサキの悲劇」などなど。長野県シニア大学の講座でも反応や評判がよかった話です。ホームページでは、ホール・マウンテン・カタログと記していますが、隅から隅まで里山の魅力が、ぎっしりと詰まった本に仕上がったと思っています。
来週の月曜日と金曜日には、松本でシニア大学で2時間の講座をしますが、そこでも里山の素晴らしさと共に危機を、そしてこの本の紹介もさせていただきます。里山ブームですが、里山を総体的に記したビジュアル豊富な本というのは、ありませんでした。そう言う意味でも多くの人達にお読みいただきたいと思っています。
★ネイチャーフォトのスライドショーやムービーは、【
Youtube-saijouzan 】をご覧ください。粘菌や森のあんずのスライドショー、トレッキングのスライドショーがご覧頂けます。
★ネイチャーフォトは、【
MORI MORI KIDS Nature Photograph Gallery 】をご覧ください。キノコ、変形菌(粘菌)、コケ、花、昆虫などのスーパーマクロ写真。滝、巨樹、森の写真、森の動物、特殊な技法で作るパノラマ写真など。チョウの写真はこちらにたくさんあります。