昨夜のNHKで「NHKスペシャル「人事も経理も中国へ」」と言う番組が放送された。
同番組の紹介記事によると、
生産拠点を続々と中国へ移し、コストダウンを図ってきた日本企業が今、人事や経理などホワイトカラー業務までも中国へ移し始めている。日本語が堪能で、人件費は日本人の5分の1以下という安さを武器に、中国で日本企業の仕事を大量に請け負っているのだ。ある大手通信販売会社が踏み切った、ホワイトカラー部門の中国への業務移管に密着。突然仕事を失ったサラリーマンたちの、苦悩と再起の日々を追う。
と言う内容だ。
同番組では京都に本社を置く㈱ニッセンを取り上げていた。。
同社では婦人服を中心とした衣料品、インテリア雑貨、和装品などの通信販売を主力に伸びて来た会社だ。
ニッセンはこれまでに合理化の一貫として、全国からの手書きの注文書を全て大連に送り正式の注文書に直し、データ・ベース化して本社に送り返すようにした。
その結果150人の社員の合理化に成功した上、中国人が理解出来る様に、仕事を標準化しマニュアル化したことで作業自体の効率化と言う副産物まで生じた。
同社ではその成功に続いて、総務、経理部門までその業務の一部を大連に移すことを計画した。
経営者は合理化に伴う人員整理はしないかわり、対象の本人達に他に自分で出来る仕事を申告させた。
経理部門ではデータの入力中心の事務員たちは職を奪われた上、考えようによっては、上記の様な止めろと言わんばかりの態度にやる気を無くして退社するものも現れた。
総務部門も同じように、大連で出来る仕事を皆に提出するように指示が出たが、雑務中心の職務では、僅かの範囲しか移譲できないものが多かったので、ミスター総務と言われる総務一筋の武島さんを始め、全員余りのり気で無かった。
それに対して経営者は日本では5,500円で出来る仕事を中国では700円で出来ると従業員に圧力を掛けた。
総務の仕事の中で大連でも出来そうな全国の支社、出張所に配車する車の管理がその最初テーマに選ばれ、中国から研修生がやってきた。
研修生の意欲、理解の速さ、勤勉さに乗り気でなかって武島さんも次第に心を動かされてきた。
そして研修生の帰国後、実際の業務テストが行われ、武島さんが検査官といして派遣された。
テストのテーマには引っかけ的に項目もあったが、研修生はそれも見事にクリアーし武島さんによるテスト結果は査定も一発で合格した。
武島さんは帰国後個人、情報保護士の資格を取って総務に残り、始めての全国の支社や、出張所訪問などの毎日を送っている。
放送ではその他に
・これまでの日本の事務部門の生産性は先進国では最低であること。
・日本IBMは上海で購買部門の的な業務をほぼ全面的に移管していること。
ソフト・バンクも経理部門を大連い移転しニッセンと同様にマニュアル化のための標準がで国内各述べていた。
私は前にも書いたが、戦後労働組合対策でホワイト・カラーを管理部門に移し、残りの人も管理職的な取り扱いをした。
現場では品質管理の手法の導入から、改善、TQC、TPMなどの小集団活動を中心とする合理化が行われ、一部の業種では世界に冠たる生産性を誇るようになってきた。
それに反して事務部門では、コピー機やパソコンの導入の言う大きな作業環境の変化にも関わらず、合理化は殆ど進まなかった。
(コピー機を例に挙げたのは、今の方には想像も出来ないと思うが、昔は手書きか能率の極端に悪い日本語タイプライターで数十分から数時間かけて行っていた書類の複写はコピー機で一発で複写出来るようになった。)
ホワイト・カラーの合理化が遅れた一番の大きな原因は、生産部門では工賃が変動経費として厳しい原価管理下に置かれていたのと労働組組合の監視下にあったのに、事務部門は固定経費として管理の対象外にあり、どのような取り扱いをしても文句を言う、人ももグループも無かったからだ。
つまり余り出来の良くない経営者はバブル景気に浮かれて、事務部門の管理をないがしろにしていたのだ。
その付けがバブル崩壊時のホワイト・カラーの大量解雇に繋がった。
そして中国の台頭→競争の激化→契約労働者やパートの採用によるコスト削減→賃金や社会格差の発生と言う現状だ。
そしてその時期がいずれ来ると判っていた団塊の退職時期になって、慌てて解雇し過ぎたホワイト・カラーの引き止め策にかかっているのだ。
そしてまた賃金格差の問題が出始めて、本社員制度の再見直しが言われている。
そこでNHKの放送のような事務作業の海外へのアウト・ソーシングの手法が出てきた。
そこでまた政府や経団連の指導や、他社の真似しかできない経営者がまたどのようにこの方式を運用するかと言う問題が出てきた。
人的資源しかない日本。
従業員の会社に対する忠誠心や勤勉さ能力などに頼ってきた企業の経営者。
日本企業の競争力の源泉である上記のことを忘れて他社の猿まねばかりしてきた経営者。
昨日書いたような詰め込み主義の教育を経て、理解力はあっても、自分自身で考える力のない経営者がまたホワイト・カラー大量解雇の反省無しに、またアウト・ソーシングなど自社にそぐわないかも知れない事をやらかすのではないか。
そして困るのはその下にいる従業員達だ。
他人事ながら、心配性の私はまた彼らがまた酷い眼にあいはしないかと陰ながら心配している。
参照:
カテゴリー → 企業経営
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