三笠フーズが黴び毒や残留農薬で汚染された「事故米」を、本来の用途である工業用ではなく食用に転売していた問題は今や全国的な拡がりを見せて大きな問題となっている。
監督官庁の農水省の事務次官は過去5年間百回に近い検査を行ったのに発見出来なかった問題は認めたが、それが農水省の責任であるとは認めなかった。
農水省はこれに対して汚染米の輸入元への返還など色々な対策を講じている。
然し私は基本的な問題に戻って考えて見たい。
・法律や規則とその運用は基本的には性善説に基づいているが、企業の倫理観の薄れた現状と食い違っている→規制強化の必要性→強化の為の人員が要る、つまり規制緩和に逆行する
・官庁はとかく机の上の仕事で済ませて現場の実情に疎い→現場に出る要員が殆どいない
・その一方、官庁の職員の合理化→縮小が叫ばれている
など基本的な解決のためには(一見?)矛盾する問題が解決しなければならいない。
[性善説に基づいた法律や規則とその運用]
現実には食糧関係に限っても事故米関係で「三笠フーズ」や「浅井」や「ノノガキ穀販」のほか、牛肉、とり肉、うなぎ、使い回し、賞味期限改竄など数々の数々の会社が摘発されている。
この事実は現在のような広い範囲の企業の倫理感が薄れた日本では、ある程度の規制や監督の強化が必要であり、その為の人員や費用が必要不可欠である事を示している。
私がシンガポールに長期出張したとき、現地の人に同国の街が綺麗な事を褒めると、彼はいや日本は街の美化のためにわざわざ警官を配置して、ゴミを捨てたり唾を吐いたりした人に罰金を課さなくても綺麗だとお世辞を言った。
詰まり民度が落ち、倫理観が貧しくなるほどその対処費用は増大するのだ。
[現場の実情に疎い政府職員]
農水省の事務次官が農水省の責任であるとは認めなかったのは、手続き上では瑕疵が無かったと言いたいのだろうが、農水省のほかに監督官庁が居ない現状では、それでもこれだけの大きな問題を生じさせたことにたいして、国民に農水省の責任を認める必要がある。
一つの問題は三笠フーズの発行した伝票のチェックだけでなく、相手先の伝票をチェックしてその裏付けをとるべきだった。同じお役所でも財務省が税金のチェックのとき同じやり方をやっているのだから。
農水省の実際の検査は前もって通知しているので、都合の悪い伝票操作は幾らでも出来る。
もう一つは政府が売り出した事故米の実際の動きを、何カ所かの対象企業をビックアップして、抜き打ちで最終的の製品になるまで追跡して、政府払い出し米の流れを知るべきだ。
机の上の仕事で済ませる現場を知らないお役所では、悪徳業者に取ってはやり放題のことが出来ると思う。
仲介業者の数
それで一つ問題になるのは事故米問題で言えば仲介業者の数だ。
仲介業者が増える程責任の所在が判らなくなり、政府の追跡の手間が増えてくる。
事故米問題については、規則で仲介業者の禁止か、その数を限定して介在する業者の責任を明確にし、かつ事故米のトレースの手間を省くべきだ。
第一に何社もの仲介業者が、取引の都度マージンを取れるほど、政府は事故米を安く売っていることを意味している。当然、政府は国の財政改善のために販売価格を上げるべきだ。
天下り機関の問題
これは事故米に限らぬ全般の話になるが、政府の政策の実行の実情をしるためにも、天下りの機関が介在は、問題がぼやけてくる。
何しろ追跡調査や実情調査に、本省の職員にとっては元上司がいては追求が不徹底になりやすかからだ。
例えば天下りの特殊法人が赤字を出して政府の補助を得ているのに、その下請けのこれも天下りの会社が大儲けしているなど、本省には判らず告発やマスコミや野党議員からの情報で始めてその事実を知ることになる。
政府機関が現場の実情をしるためにも、天下りの特殊法人の数はでるだけ減らしたほうが良いと思う。
[官庁職員の合理化]
事務機械の威力
前にも何度か書いたが昭和30~40年代の事務機械の進歩で、事務の合理化が飛躍的に進んだ。
パソコンによる事務能率の向上に就いては若い方達もお判りのことと思うが、文章の複写に就いて言えば、コピー機械導入までは、筆写か文字を一字づつ拾う和文タイプ、ガリ版切り、謄写版刷りだった。
これで同じ文書を一枚複写するのに、一時間かかっていたのがコピー機では僅か1秒もかからなくなった。詰まり複写に要する事務の処理が3,600倍以上早くなったのだ。
一般企業では事務の機械化で余った要員を企業の膨張により他の部署に回すか、退職による自然減に頼ったがそれでもかなりの余裕を残していた。
それがバブル崩壊時の多くのホワイトカラーのレイオフのに繋がった。
(同じ時期の生産部門の合理化が殆どなかったのは、それまでに合理化が既に進んでいたからだ。)
事務機械導入前のままの職員数
しかしこの間の政府職員の合理化の話は全く出なかった。
一般企業のいた私から見れば、政府職員は日本の国力の増大に伴う要員増は考えても、事務機械の導入と企業の用いた合理化手法で少なく見積もっても2~3割は削減出来ていたし、今でも出来る筈だ。
私はその様な余剰人員をもっと現場(都道府県や市町村の役所、一般企業)に回して、本省がそのその実情を掴み、そして悪徳業者への管理を強化すれば、日本の政治はもっと良くなると思う。
現場の実情を知る本省の職員の養成とその効果
汚染米に以外にも、医療費削減にともなう医療崩壊、福祉予算の増大の限度設定→介護要員の大量の退職、地方交付税の削減→地方の疲弊、大店法実施→シャッター通りの増加などなど、改革に伴う現場の負の部分ももっと早く情報を集め対策を講じることが出来た筈だ。
事実はこれらに就いては政府は関係団体に報告書を提出させたり、国民からクレームや、関係者からの告発でやっと実情を知ってきたが、紙の上の報告と政府職員が身をもって見聞した報告の正確さとその重みが完全に異なるだろう。
そして幹部に登り詰めたときキャリアーの対応は、先の事務次官とは全く異なった血の通ったものになると思う。
このブログを、より多くの人にも見て貰いたいと思っています。どうぞご協力をお願い致します。↓
政治ブログランキングへ
政治ブログへ