【ベレー帽カボチャ。今日の記事は8/2に放送されたドラマ「帽子」】
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放送された8月2日は仕事で、見ることが不可能だったので
録画していた、広島が舞台のNHKの
スペシャルドラマ「帽子」を昨夜、やっと観た。
広島・呉。帽子職人の老人・春平は、東京にいる
息子とは疎遠で、寂しい独り暮らし。
セキュリティ会社の警備員・吾朗は、
何かと自分を呼び出す春平に辟易している。
そんな中、吾朗を産んですぐ家を出た母が
余命いくばくもないこと、そして彼女が春平とは
兄妹同然に育った幼馴染みの世津だと判明。
春平は吾朗とともに東京へ向かうが...。
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しみじみとした、佳いドラマだった。
ドラマチックな展開も、いかにも泣け!みたいな
お涙ちょうだいシーンも台詞もないけど、
原爆の悲劇や切ない愛が静かに優しく描かれていて、
言葉では現せない何かが、心に深く沁みた。
胎内被爆、という悲劇についても、さりげなくも
深く考えさせる内容。差別偏見をする人もされる人も、
悲惨な戦争の生き証人が年々減少していくことは
仕方がないことだが、将来に伝えていかねばならない
メッセージも込められていた。
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かと言って、決してガチガチの反戦ドラマではなく、
どちらかといえば哀歓ある人情ドラマだった。
春平と世津の実らなかった恋は、過剰なほど
センチメンタルだけど、互いに孤独を抱える春平と吾朗の
ふれ合いが、ほのぼの。そして、しんみりしていて良かった。
春平役の緒形拳さん、やっぱり名優だ。
かつてはギラギラ感一杯だった彼。すっかり枯れた爺さん役が
似合うようになったが、ヨボヨボ弱々しくなかった。
中学校の職員室に殴りこみ?生意気な教師に、
「このバカタレー!!」と怒って殴りかかっていく心意気や、
時おり見せる鋭い眼光とか。やはり緒形拳さんは凄い。
長く生きた人間のしたたかさ、洞察力、茶目っ気、
物忘れを飄々と演じ、まさに名演。
半世紀ぶりに再会する恋人役田中裕子さんは、
年輪を重ね、いい味を出していた。
吾朗役の玉山鉄二さんも、なかなかのものだった。
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このドラマは、今年の5月に撮影されたらしい。
またこのドラマは、出演者・スタッフのいわば
ドキュメンタリーでもあったらしい。
出演者、そしてスタッフたちは、撮影のために
およそひと月、広島に“暮らし”たと言う。
まさに24時間ドラマ漬け。
劇中の主人公たちが東京の世津ちゃん(田中裕子さん)に
会いに行くのと同じように、胸をドキドキさせながら
全員で東京へ向かい、夢中になって
クライマックスシーンを撮影したらしい。
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このドラマのもうひとつのテーマである、
「世間から大して必要とされていない人たちが、
どう人生を誇り高く生きるか。」
日本の片隅で細々と生きている私も、このドラマから、
「生きる誇り」を感じとったのは確かである。
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【日陰で静かに咲く熨斗ラン。白くて穏やか。花言葉はひっそり。】
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