【この記事のタイトルは「かむさり・なあなあ・にちじょう」と読む。】
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「なあなあ」は小説の中の創作方言で、「ゆっくり行こう」とか、
「まぁ落ち着け」とか、「のどかで過ごし易い」と
いう意味合いであります。
三浦しをんさんの著書「神去なあなあ日常」を読んだ。
これは、滅多に無い林業青春小説である。
ある方のブログの記事でこの本を知り急に読みたくなった。
すぐに読んだ。この本の虜になった。
私が18の頃、この本が発刊されていて読んだとしたら
今の私は全然別の人生を歩いていたかも、、、。
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小説は、主人公が山奥の村の一年間を振り返り、
パソコンに出来事や感想を書き連ねた形になっている。
横浜育ちの勇気18歳は、進学も就職する気もないまま
高校を卒業した。先生と鬼母(と勇気は言っている)は、
勇気を勝手に林業見習員として就職させ、
父からの3万円の餞別と、母が用意した鞄一つで、
三重県奥地神去(かむさり)村に放り出した。
林業は、なにしろ3Kの最たる職場である。
辛い研修と作業に何度も脱走を図るが、
ケータイは電池を抜かれ、山奥のため
交通手段が無く、その都度連れ戻される。
就職先は日本有数の山林地主の会社だった。
沈着冷静でやり手の若い社長や、
下宿先の乱暴な天才的作業員など、
年長者の確かな作業に感心し、
季節の鮮やかな推移に感動し、
不思議な出来事や理解不能なしきたりにも慣れて、
痩せ我慢で従っていた林業と
村の暮らしの魅力に目覚めてゆく。
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林業に従事した一年間を振り返り、
勇気が感想を書いている.....。
・キーボードを叩く掌の皮がすっごく
分厚くなっている。いまや別人の手だ。
・山仕事は季節の移り変わりに応じて、同じような
作業を繰り返してるかのように見えるけど、本当は
そうじゃないってことが一年経って少し分った。
・山は毎日、ちがう顔を見せる。
木は一瞬ごとに、成長したり衰えたりする。
些細な部分を見逃したら、絶対にいい木は
育てられないし、山を万全の状態に保てない。
※上↑の写真は紀州の最高峰、護摩山からの眺めです。
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村人は結構デタラメで、なあなあ。
真剣な山仕事との対比が効果的だ。
神隠しや山鳴りや天女の舞など、
そういう超常現象もあり得る、と思えてくる。
しかも、日本の林業の問題点と対策、
年間の作業のあらましが見えてくるばかりか、
無気力無責任な少年への処方箋にもなっている。
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村の四季が、実に素晴らしい。
社長と、作業班とその家族等の人間関係が
可笑しくて痛快である。
祭りや、村人の付き合いも、のほほんとして面白く、
特に48年に1度の大祭の疾走感は圧巻だ。
年上の勝気な小学校の女教師直紀への恋は、
まだ片思い状態だが、あと何回かのハイキング
(村にはデートスポットなんか無い)で、
なんとか成就させてやりたいものだ。
勇気は、いま、考えている.....。
・直紀さんに俺の良さを地道にアピールする
作戦を実行中だ。山仕事がデキる男になるべく、先輩の
仕事を学びながら、毎日身を入れて働いている。
・俺はたぶん、このままこの神去村にいると思う。
林業に向いているかどうかまだ分らない。
若い人が殆どいない村で、
この先の展望もはっきりしない。
・それでも、まだまだ神去村のこと、
ここに住む人たちのこと、山のことを、
知りたいって思うんだ。
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読みながら思わずエールを送っている私がいる。
頑張れよ、勇気!!。
爽快な読後である。
実に良い小説にめぐり合った。幸せである。
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読後の気持ちを音楽にするとしたら、このメロディーだネ。
私の打ち込み音楽です。下↓をクリックしてネ。
「この小説を映像にしたら、こんなB.G.M.が似合うかも。」
※これは勿論架空の話だが、登場人物は 誰も 林業を3Kな
仕事と看做し 逃げようなどとは思っていない。
そこが一番爽快なのである。
※私の青春時代。自分で自分の仕事を3Kだと思っていた。
寧ろ誇りにすべきことであった。
この小説を読んで、そう心から思ったのである。
【老若男女を問わず、是非多くの人に読んでもらいたい小説だ。】
※なお掲載写真3枚は、我が紀州の地であります。
《この小説に感動し、この地に似合う写真撮影に出かけました。》
※この記事の内容より小説を読む方が感動すること保証します。