昔はよく岩波新書を読みました。値段も安かったし、内容も碩学の自在な解説を聞く趣があって、面白かったものです。30年前には、たしか月に三冊ほどのペースで刊行されていましたので、年に10冊くらいは読んでいたのではないかと思います。
今回手にしたのは、1978年9月の新刊で、光岡知足著『腸内細菌の話』、岩波新書の黄版です。同年10月初旬に購入したとメモがありますので、本当に購入後30年ぶりに読んだことになります。
メチニコフが「ヨーグルトの不老長寿効果」を説きましたが、ヨーグルトの乳酸菌は腸内で死滅することが実証されており、いわゆるヨーグルト信仰は怪しいことは知っておりました。しかし、ビールを飲みすぎたときや、風邪で抗生物質を連用したときなど、自家製ヨーグルトの整腸作用でしのいできており、不老長寿とまではいかなくても、ヨーグルトの効用は自分の体で知っています。では、その効用の裏づけは何か、腸内細菌の生態を知りたい、という雑学的な興味です。
I. 腸内細菌研究の流れ
II. 腸内細菌を培養する
III. 腸内細菌を分類する
IV. 腸内細菌の生態
(消化管のしくみと働き/腸内細菌の構成/腸内細菌のすみつきかた/腸内菌叢を変動させる要因)
V. 腸内細菌とからだ
(一つの仮説/腸内細菌と栄養/腸内細菌と免疫/腸内細菌の代謝と病気/下痢腸炎/長寿と腸内細菌)
細菌分類学・微生物生態学が専門の著者だけに、特定の菌のみのメカニズム論に陥らず、幅広い視野から眺めています。特に、IV. 腸内細菌の生態 と V. 腸内細菌とからだ の章が白眉でしょう。
個人的に面白かったのは、食事の欧米化とともに胃ガンから大腸ガンに移ってきたガンの主役の交代が、実は腸内菌叢の交代・変化と代謝との関わりで、その因果がとらえられることです。また、殺菌酸乳の投与によってさえ、マウスの延寿命効果が実証されることなど、乳酸菌の生死には関わらず、常在する腸内細菌へのヨーグルトの好ましい影響が認められることなど、たいへん興味深いものでした。
近頃は、タイトルだけが話題になるようなものが多く、こういう骨のある新書が少なくなっているような気がします。30年間には新たな知見も増えていることでしょうが、本書は学術的レベルが高い記述となっております。30年の時を超えて、「そうだったのか!」と知的な興奮を覚える好著でした。
今回手にしたのは、1978年9月の新刊で、光岡知足著『腸内細菌の話』、岩波新書の黄版です。同年10月初旬に購入したとメモがありますので、本当に購入後30年ぶりに読んだことになります。
メチニコフが「ヨーグルトの不老長寿効果」を説きましたが、ヨーグルトの乳酸菌は腸内で死滅することが実証されており、いわゆるヨーグルト信仰は怪しいことは知っておりました。しかし、ビールを飲みすぎたときや、風邪で抗生物質を連用したときなど、自家製ヨーグルトの整腸作用でしのいできており、不老長寿とまではいかなくても、ヨーグルトの効用は自分の体で知っています。では、その効用の裏づけは何か、腸内細菌の生態を知りたい、という雑学的な興味です。
I. 腸内細菌研究の流れ
II. 腸内細菌を培養する
III. 腸内細菌を分類する
IV. 腸内細菌の生態
(消化管のしくみと働き/腸内細菌の構成/腸内細菌のすみつきかた/腸内菌叢を変動させる要因)
V. 腸内細菌とからだ
(一つの仮説/腸内細菌と栄養/腸内細菌と免疫/腸内細菌の代謝と病気/下痢腸炎/長寿と腸内細菌)
細菌分類学・微生物生態学が専門の著者だけに、特定の菌のみのメカニズム論に陥らず、幅広い視野から眺めています。特に、IV. 腸内細菌の生態 と V. 腸内細菌とからだ の章が白眉でしょう。
個人的に面白かったのは、食事の欧米化とともに胃ガンから大腸ガンに移ってきたガンの主役の交代が、実は腸内菌叢の交代・変化と代謝との関わりで、その因果がとらえられることです。また、殺菌酸乳の投与によってさえ、マウスの延寿命効果が実証されることなど、乳酸菌の生死には関わらず、常在する腸内細菌へのヨーグルトの好ましい影響が認められることなど、たいへん興味深いものでした。
近頃は、タイトルだけが話題になるようなものが多く、こういう骨のある新書が少なくなっているような気がします。30年間には新たな知見も増えていることでしょうが、本書は学術的レベルが高い記述となっております。30年の時を超えて、「そうだったのか!」と知的な興奮を覚える好著でした。