創元SF文庫でジュール・ヴェルヌの晩年の作品『動く人工島』を読みました。主人公は、なんとフランス人の弦楽四重奏団で、アメリカを演奏旅行中に、スタンダード島に強引に「招待」されます。スタンダード島とは、鋼鉄の箱を多数連結し、その上に作られた人工島で、エンジン駆動でスクリューを回転させ、自ら太平洋を航海することができる、というものです。この時点で、「ひょっこりひょうたん島」とはだいぶ設定が違います(^o^)/
なかばだまされた形ではありましたが、島に招待された四人の個性的な弦楽四重奏団員の目を通して、太平洋の諸島の住民の様子や、お金持ちが多いスタンダード島の特徴的な政治形態などを描きます。晩年のヴェルヌに見られる、ペシミズムの色濃い作品の系統で、島の破局の描き方は迫力があります。
ただし、19世紀当時には、こういった南海の諸島の住民の様子はそれだけで読ませるものだったのでしょうが、テレビカメラが世界のいたるところに入り込んでいる現代では、紀行文的な物珍しさはすでになく、その点での面白さはありません。むしろ、人工島の上で、弦楽四重奏団が時折開く演奏会のプログラムが面白いものです。
というものです。番号については、当時と今とは異なっている可能性がありますが(特にハイドン)、それにしても、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、メンデルスゾーンを網羅し、オンスローを加えているあたり、たいへんな音楽ファンだったというヴェルヌの趣味がしのばれます。
一般的なSFの範疇からは、『神秘の島』のほうが圧倒的なスケールの大きさでより上回っている作品かと思いますが、音楽ファンの立場からは、弦楽四重奏団を主人公にし、市民政治のあり方をテーマとした物語という意味で、いっぷう変わった面白さがありました。旅の合間に、登場した音楽をすぐに聴くことができないのが、まことに残念といえば残念です(^o^;)>poripori
なかばだまされた形ではありましたが、島に招待された四人の個性的な弦楽四重奏団員の目を通して、太平洋の諸島の住民の様子や、お金持ちが多いスタンダード島の特徴的な政治形態などを描きます。晩年のヴェルヌに見られる、ペシミズムの色濃い作品の系統で、島の破局の描き方は迫力があります。
ただし、19世紀当時には、こういった南海の諸島の住民の様子はそれだけで読ませるものだったのでしょうが、テレビカメラが世界のいたるところに入り込んでいる現代では、紀行文的な物珍しさはすでになく、その点での面白さはありません。むしろ、人工島の上で、弦楽四重奏団が時折開く演奏会のプログラムが面白いものです。
スタンダード島での最初の演奏会のプログラム(p.114)
(1) メンデルスゾーン 弦楽四重奏曲第1番
(2) ハイドン 弦楽四重奏曲第2番
(3) ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第10番
(4) モーツァルト 弦楽四重奏曲第5番
タヒチ島滞在時の演奏会のプログラム(p.208)
(1) ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第5番
(2) モーツァルト 弦楽四重奏曲第2番
(3) ハイドン 弦楽四重奏曲第2番 第2楽章
(4) オンスロー 弦楽四重奏曲第12番
引退した貧しい王様と王妃のための演奏会(p.241)
(1) メンデルスゾーン 弦楽四重奏曲第2番
(2) ハイドン 弦楽四重奏曲第3番「オーストリア讃歌」
(3) ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第6番
(4) モーツァルト 弦楽四重奏曲第10番
というものです。番号については、当時と今とは異なっている可能性がありますが(特にハイドン)、それにしても、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、メンデルスゾーンを網羅し、オンスローを加えているあたり、たいへんな音楽ファンだったというヴェルヌの趣味がしのばれます。
一般的なSFの範疇からは、『神秘の島』のほうが圧倒的なスケールの大きさでより上回っている作品かと思いますが、音楽ファンの立場からは、弦楽四重奏団を主人公にし、市民政治のあり方をテーマとした物語という意味で、いっぷう変わった面白さがありました。旅の合間に、登場した音楽をすぐに聴くことができないのが、まことに残念といえば残念です(^o^;)>poripori