電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

ジャレド・ダイアモンド『文明崩壊』下巻を読む

2010年06月19日 06時13分06秒 | -ノンフィクション
草思社から刊行されている、ジャレド・ダイアモンド著『文明崩壊』下巻を読みました。
上巻第2部「過去の社会」の続きで、第9章「存続への二本の道筋」では、崩壊に至らず存続してきた例が示されます。もっとも、ニューギニア高地やティコピア島などの例は、あまりなじみのない話ですが、

森林資源の損なわれた江戸時代の日本
徳川幕府の解決策
なぜ日本社会は崩壊しなかったのか?
成功を収めた社会の例

などの章は、なかなか興味深いものです。日本でも、他の例と同じように、建築用材や燃料などの用途から、森林破壊は行われていたのですが、17世紀後半に方針転換が行われ、人口抑制や石炭消費による木材消費の削減、全国統一の植林政策などが幕府の手により行われた、とあります。
もちろん、一定の降水量が見込める温帯地域であるという地理的条件が大きいのでしょうが、これは日本文化の古来の伝統的特質というわけではなくて、江戸幕府の為政者の優れた政策によるものであろうと思います。

この後に続く章は、次のとおり。

第3部 現代の社会
-第10章 アフリカの人口危機ールワンダの大量虐殺
-第11章 ひとつの島、ふたつの国民、ふたつの歴史ードミニカ共和国とハイチ
-第12章 揺れ動く巨人・中国
-第13章 搾取されるオーストラリア
第4部 将来に向けて
-第14章 社会が破滅的な決断を下すのはなぜか
-第15章 大企業と環境ー異なる条件、異なる結末
-第16章 世界はひとつの干拓地

ごらんのように、単純な環境決定論ではないところに味があります。フツ族とツチ族の対立構造の背景にあるものなど、思わず目からウロコでした。
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