よく晴れた日曜日、午前中にジャガイモの植え付けをしてから、午後に山形テルサホールに向かいました。山形交響楽団の創立50周年記念イヤーのシーズンが始まるとともに、第300回記念の定期演奏会でもあります。そんなわけで演奏会パンフレットも気合が入っており、タイトルが金文字で表示されているだけでなく、これまでの定期演奏会の記録が収録されています。これはもう永久保存版ですね。
さて、本日のプログラムは、20世紀の音楽の中から、
というものです。
ホールに入り、ステージ上を眺めると、ざっと見たところでもいつもよりだいぶ編成が大きいみたい。最初のシベリウスでは、ステージ左から第1ヴァイオリン(10)、チェロ(6)、ヴィオラ(6)、第2ヴァイオリン(8)、左後方にコントラバス(4)の弦楽5部に、木管はフルート(2)、オーボエ(2)、クラリネット(2)、ファゴット(2)という普通の二管編成と同様ですが、金管はホルン(4)、トランペット(3)、トロンボーン(2)、テューバと強力で、これにティンパニとシンバル、トライアングル、バスドラムが加わります。団員の皆さんはいつもの黒一色ではなくて、以前のモーツァルト定期のようにカラフルなドレスで華やかさが加わります。指揮の村川千秋さんは現在89歳、創立名誉指揮者の称号からもわかるように山響の生みの親です。1972年に東北地方で初めてのプロ・オーケストラを立ち上げ、およそ30年間、心血を注いで育ててきました。特に、1995年から2001年まで、毎年冬の定期演奏会でシベリウスの交響曲を取り上げ、全曲演奏を行ったのが印象に残ります。聞くところでは米国留学中にシベリウスの甥が同期だったそうで、取り組みの熱意も格別のものがあったのでしょう。客席は満席、完売だそうです。
そんなわけで、これまで合唱つきバージョン、合唱なしバージョンとも、何度か聴いている村川千秋指揮のシベリウス「フィンランディア」、帝政ロシアの圧政に苦しんだ祖国フィンランドの独立の象徴とされたこともあった曲だけに、ロシアの侵攻に苦しむウクライナの人々のことを考えてしまいますが、堂々たるスケールの大きな演奏で、勇気づけられる思いがします。
次の「カレリア組曲」は、今はロシア領となっているカレリア地方を旅した際に作曲したものだそうで、カレリアのかつての首都サンクトペテルブルグは、ソビエト連邦時代にはレニングラードと呼ばれた街のはずで、ずっと昔から続くロシアの古都というわけではない、複雑な歴史があるのだなと認識を新たにしました。楽器編成は、10-8-6-6-4 の弦楽5部に Fl(3)-Ob(3)-Cl(2)-Fg(2)-Hrn(4)-Tp(3)-Tb(3)-Tuba-Timp.-Percussions となっています。Fl(3)のうち1はピッコロ持ち替え、Ob(3)のうち1はイングリッシュホルン持ち替え、パーカッションの内訳はトライアングル、タンバリン、シンバル、バスドラムとなっています。第1曲:間奏曲、ホルンの重奏主題を繰り返す短いけれど魅力的な音楽。第2曲:バラード、弦のピツィカートをバックにイングリッシュホルンの旋律が印象的です。第3曲:行進曲調で、と指示されていますが、2つ目の主題によるところが特にお気に入りです。
ここで15分の休憩です。後半は、いよいよR.シュトラウスの「ばらの騎士」です。
ステージ上には、10-8-6-6-4 の弦楽5部が対向配置、木管が Fl(3)-Ob(3)-Cl(4)-Fg(3)、ただしFl(1)はピッコロ持ち替え、Ob(1)はイングリッシュホルン持ち替え、Cl(1)はバス・クラリネットでバセットホルン持ち替えだそうで、さらに Fg(1)はコントラファゴット持ち替えとなっており、正面奥に並びます。金管の編成は Hrn(5)-Tp(3)-Tb(3)-Tuba というもので、Hrn(5)が左後方に、Tp-Tb-Tuba が右後方に順に並び、その奥に Timp、右側方にスネアドラム、シンバル、タンバリン、グロッケンシュピール、カスタネット、鐘、バスドラムと賑やかに。反対側の右側方には Harp(2) とチェレスタという具合で、やや横に変形したような配置になっています。その理由は正面最奥部の高い位置に歌手席が設けられているからのようで、抜粋とはいえコロナ禍の中で開催される演奏会形式のオペラ公演を意識したためでしょう。
今回の配役は、元帥夫人を林正子さん、オクタヴィアンを小林由佳さん、ゾフィーを石橋栄実さんというものです。ゾフィー役の石橋さんは娘らしい淡い緑色を含む明るいドレスで清純さを、オクタヴィアン役の小林さんは白いロングコート姿で若い青年貴族を表し、元帥夫人役の林さんは黒いドレスで年上の落ち着いた女性という印象を与える姿です。
指揮の阪哲朗さんによれば、「ばらの騎士」の抜粋を構想する際に、第3幕の三重唱を中心としてそれ以前の幕から三人の歌手が登場する場面を選び、オックス男爵のワルツはオーケストラだけで演奏する、という形を考えたのだそうです。その結果、選ばれたのが次のような各シーン。
Act1: 序奏〜元帥夫人とオクタヴィアンの朝のシーンと元帥夫人のモノローグ。字幕が出るとはいえベッドなどの舞台装置も演技もない歌だけですので、元帥夫人と若いツバメの濡れ場の後という印象は弱まります。でも、愛しているとはいうもののけっこう自己チューな若者に対する元帥夫人の独白は、年配者にはけっこうぐっとくるものがあります(^o^)/
Act2: バラの騎士の到着、銀のバラの献呈、オックス男爵のワルツ、そして幕切れ。オクタヴィアンとゾフィーの場面ですが、オーケストラで演奏されたオックス男爵のワルツが実に良かった〜。軽やかでフッと力を抜くような小粋なところも出ている演奏で、阪さんの本領発揮という印象です。
Act3: オックス男爵退場シーンのワルツ、元帥夫人・ゾフィー・オクタヴィアンの三重唱、ゾフィーとオクタヴィアンの二重唱、幕切れ、という構成。やっぱりこの三重唱はいいですね〜! ポーッとなっている若い二人に対し、諦めようとする元帥夫人の胸のうちが歌われます。それぞれがそれぞれの心情を歌いながら、それが一つの音楽になるという、まさにオペラの醍醐味です。オクタヴィアンは、元帥夫人にちょいと心を残しながらも、やっぱり若いお嬢さんを選ぶのですね。彼らの人生としてはそれが正解ですが、正しい愛し方をしようと決意し身を引く元帥夫人はやっぱり寂しい。でも、若いツバメを選んだ時点でそんな結末はわかっていることでしょう、などと辛口の批評をするのは野暮というものかも。R.シュトラウスの音楽は、世紀末ウィーンの空気を感じさせながら終わります。
ふだんよりもだいぶ増強されたオーケストラはテルサホールの容量を越えるほどのパワフルさで、なおかつ繊細な弱音の部分もしみじみと聴かせ、R.シュトラウスの大編成の音楽を存分に楽しみました。内部で少し異動もあったようで、いつもの顔ぶれがいつもの席というわけではなかったのも新鮮。また、楽員がドレスアップした姿での演奏は飯森範親さんとのモーツァルト定期でおなじみですが、R.シュトラウスでというのは初めてです。新境地かもしれません(^o^)/
(ヒッチコック監督風に、ちらりと出演)
なお、前日の土曜日の夜の演奏が、5月28日(土)、16:00〜16:55 にYBC(山形放送)テレビで放送予定だそうです。これも楽しみです。
さて、本日のプログラムは、20世紀の音楽の中から、
- シベリウス 交響詩「フィンランディア」Op.26
- シベリウス カレリア組曲 Op.11
指揮: 村川千秋、コンサートマスター:犬伏亜里、山形交響楽団
- R.シュトラウス 楽劇「ばらの騎士」Op.59 (抜粋)
指揮: 阪哲朗、林正子(Sp) 小林由佳(MS) 石橋栄実(Sp)
コンサートマスター:髙橋和貴、山形交響楽団
というものです。
ホールに入り、ステージ上を眺めると、ざっと見たところでもいつもよりだいぶ編成が大きいみたい。最初のシベリウスでは、ステージ左から第1ヴァイオリン(10)、チェロ(6)、ヴィオラ(6)、第2ヴァイオリン(8)、左後方にコントラバス(4)の弦楽5部に、木管はフルート(2)、オーボエ(2)、クラリネット(2)、ファゴット(2)という普通の二管編成と同様ですが、金管はホルン(4)、トランペット(3)、トロンボーン(2)、テューバと強力で、これにティンパニとシンバル、トライアングル、バスドラムが加わります。団員の皆さんはいつもの黒一色ではなくて、以前のモーツァルト定期のようにカラフルなドレスで華やかさが加わります。指揮の村川千秋さんは現在89歳、創立名誉指揮者の称号からもわかるように山響の生みの親です。1972年に東北地方で初めてのプロ・オーケストラを立ち上げ、およそ30年間、心血を注いで育ててきました。特に、1995年から2001年まで、毎年冬の定期演奏会でシベリウスの交響曲を取り上げ、全曲演奏を行ったのが印象に残ります。聞くところでは米国留学中にシベリウスの甥が同期だったそうで、取り組みの熱意も格別のものがあったのでしょう。客席は満席、完売だそうです。
そんなわけで、これまで合唱つきバージョン、合唱なしバージョンとも、何度か聴いている村川千秋指揮のシベリウス「フィンランディア」、帝政ロシアの圧政に苦しんだ祖国フィンランドの独立の象徴とされたこともあった曲だけに、ロシアの侵攻に苦しむウクライナの人々のことを考えてしまいますが、堂々たるスケールの大きな演奏で、勇気づけられる思いがします。
次の「カレリア組曲」は、今はロシア領となっているカレリア地方を旅した際に作曲したものだそうで、カレリアのかつての首都サンクトペテルブルグは、ソビエト連邦時代にはレニングラードと呼ばれた街のはずで、ずっと昔から続くロシアの古都というわけではない、複雑な歴史があるのだなと認識を新たにしました。楽器編成は、10-8-6-6-4 の弦楽5部に Fl(3)-Ob(3)-Cl(2)-Fg(2)-Hrn(4)-Tp(3)-Tb(3)-Tuba-Timp.-Percussions となっています。Fl(3)のうち1はピッコロ持ち替え、Ob(3)のうち1はイングリッシュホルン持ち替え、パーカッションの内訳はトライアングル、タンバリン、シンバル、バスドラムとなっています。第1曲:間奏曲、ホルンの重奏主題を繰り返す短いけれど魅力的な音楽。第2曲:バラード、弦のピツィカートをバックにイングリッシュホルンの旋律が印象的です。第3曲:行進曲調で、と指示されていますが、2つ目の主題によるところが特にお気に入りです。
ここで15分の休憩です。後半は、いよいよR.シュトラウスの「ばらの騎士」です。
ステージ上には、10-8-6-6-4 の弦楽5部が対向配置、木管が Fl(3)-Ob(3)-Cl(4)-Fg(3)、ただしFl(1)はピッコロ持ち替え、Ob(1)はイングリッシュホルン持ち替え、Cl(1)はバス・クラリネットでバセットホルン持ち替えだそうで、さらに Fg(1)はコントラファゴット持ち替えとなっており、正面奥に並びます。金管の編成は Hrn(5)-Tp(3)-Tb(3)-Tuba というもので、Hrn(5)が左後方に、Tp-Tb-Tuba が右後方に順に並び、その奥に Timp、右側方にスネアドラム、シンバル、タンバリン、グロッケンシュピール、カスタネット、鐘、バスドラムと賑やかに。反対側の右側方には Harp(2) とチェレスタという具合で、やや横に変形したような配置になっています。その理由は正面最奥部の高い位置に歌手席が設けられているからのようで、抜粋とはいえコロナ禍の中で開催される演奏会形式のオペラ公演を意識したためでしょう。
今回の配役は、元帥夫人を林正子さん、オクタヴィアンを小林由佳さん、ゾフィーを石橋栄実さんというものです。ゾフィー役の石橋さんは娘らしい淡い緑色を含む明るいドレスで清純さを、オクタヴィアン役の小林さんは白いロングコート姿で若い青年貴族を表し、元帥夫人役の林さんは黒いドレスで年上の落ち着いた女性という印象を与える姿です。
指揮の阪哲朗さんによれば、「ばらの騎士」の抜粋を構想する際に、第3幕の三重唱を中心としてそれ以前の幕から三人の歌手が登場する場面を選び、オックス男爵のワルツはオーケストラだけで演奏する、という形を考えたのだそうです。その結果、選ばれたのが次のような各シーン。
Act1: 序奏〜元帥夫人とオクタヴィアンの朝のシーンと元帥夫人のモノローグ。字幕が出るとはいえベッドなどの舞台装置も演技もない歌だけですので、元帥夫人と若いツバメの濡れ場の後という印象は弱まります。でも、愛しているとはいうもののけっこう自己チューな若者に対する元帥夫人の独白は、年配者にはけっこうぐっとくるものがあります(^o^)/
Act2: バラの騎士の到着、銀のバラの献呈、オックス男爵のワルツ、そして幕切れ。オクタヴィアンとゾフィーの場面ですが、オーケストラで演奏されたオックス男爵のワルツが実に良かった〜。軽やかでフッと力を抜くような小粋なところも出ている演奏で、阪さんの本領発揮という印象です。
Act3: オックス男爵退場シーンのワルツ、元帥夫人・ゾフィー・オクタヴィアンの三重唱、ゾフィーとオクタヴィアンの二重唱、幕切れ、という構成。やっぱりこの三重唱はいいですね〜! ポーッとなっている若い二人に対し、諦めようとする元帥夫人の胸のうちが歌われます。それぞれがそれぞれの心情を歌いながら、それが一つの音楽になるという、まさにオペラの醍醐味です。オクタヴィアンは、元帥夫人にちょいと心を残しながらも、やっぱり若いお嬢さんを選ぶのですね。彼らの人生としてはそれが正解ですが、正しい愛し方をしようと決意し身を引く元帥夫人はやっぱり寂しい。でも、若いツバメを選んだ時点でそんな結末はわかっていることでしょう、などと辛口の批評をするのは野暮というものかも。R.シュトラウスの音楽は、世紀末ウィーンの空気を感じさせながら終わります。
ふだんよりもだいぶ増強されたオーケストラはテルサホールの容量を越えるほどのパワフルさで、なおかつ繊細な弱音の部分もしみじみと聴かせ、R.シュトラウスの大編成の音楽を存分に楽しみました。内部で少し異動もあったようで、いつもの顔ぶれがいつもの席というわけではなかったのも新鮮。また、楽員がドレスアップした姿での演奏は飯森範親さんとのモーツァルト定期でおなじみですが、R.シュトラウスでというのは初めてです。新境地かもしれません(^o^)/
(ヒッチコック監督風に、ちらりと出演)
なお、前日の土曜日の夜の演奏が、5月28日(土)、16:00〜16:55 にYBC(山形放送)テレビで放送予定だそうです。これも楽しみです。