佐藤孝子先生演出の女性だけの「執心鐘入」は澄んだ声音の女性だけの地謡の歌・三線が、劇場を清らかな空気に、凛とした雰囲気に包んだ。シンプルな清らかな、女性ならではの艶、コミカルさ、呼吸が感じられた。宿の女比嘉いずみのあの妖艶さ、蝋燭を吹き消し、自らの匂いを若松に注ぐかのようなしぐさ、着物の裾がそっとなでるように若松の足元に触れるさま、んんん、これは新しいセンスだと感服していた。そして女と男の応答の場 . . . 本文を読む
『執心鐘入縁起』のテキストを読むと、折口はどうも愛人(後の養子)藤井春洋をイメージしてこの作品を書いたことがうかがわれる。終戦後の焼け野が原に戻る玉城朝薫(1684-1734)と譜久原里之子の設定である。しかもその作品の中で「上り口説」を挿入している。作品の中で歌い踊る筋書きである。それもおかしい。朝薫が「上り口説」を作曲しているわけではない。屋嘉比朝寄(1716-1775)が江戸で流行したのを伝 . . . 本文を読む