ノラ君はもう老猫に違いない。大きなからだをもてあましているようにも見える。
ときおり激しく身体をふるわせる。君はねこの生涯をまっとうしてほしい。
最近はシーバが牽制して追い払おうとする。よく観察すると、シーバはクロスケに対しても、排斥行為をしている。
みーちゃん母さん親子の既得権のような感覚をシーバは持っているのらしい。
お前はだれだ、よそ者だろう!
ノラ君は立ち位置を踏まえて控えたりする。
ノラ君は、家の界隈を夜になると高音で悲哀な鳴き声をあげていた。
台風の時など、車の下にドライフードを置いてあげたりした。
幸いと言おうか、近場にはまだ手付かずの薮の様な場所があり、おまけにある家の地階は、ノラ猫たちの溜まり場、排泄場になっていた(いる。)かれらはいつでも茂みに逃げ込むことも可能だ。
その茂みの近くまでアパートが3棟も建設され、ノラ猫たちの自由な空間は狭まれているのかもしれない。
しかし、彼らは隙間を生きる天才たちだ。
ノラ君がこの界隈をどのように生き延びてきたのか、分からない。悲しげな鳴き声に苛立っている隣人宅もあった。
いつの間にか我が家に入り込んできた。家の内外を出入りさせているみーちゃん親子の習性をまねたのらしい。
親子は、気がつくとベランダや縁側、車上、本棚の上で寝ている。
界隈を徘徊するのは主に夜だ。
さて、ボス猫のシーバは食事時間になるとノラ君を時に威嚇したり、首を噛んだり前脚で顔を払ったりする。ノラ君は一旦退いたり、降参のポーズでゴロンと横になる。
最近は庭に捨てられたか自らやってきた黒猫のクロスケが、遠慮がちにみーちゃん親子が食事を済んでから、食べるようになった。
お腹に乗ったりしていたクロスケの態様が変わってきた。
猫はこちらの心理を微妙に察しているのかもしれない。
みーちゃんとその子供達への愛情は特別だ。
クロスケは、黒猫の美しさを知った。温いお湯で洗ってあげて以来の黒毛の滑らかさに驚いた。
去勢してから変わったのだろうか。なぜかみーちゃんを追いかけたりしていて、その度に叱責しているせいだろうか。親密度が少し欠けてきた。それでも愛らしいなき声で食事をねだったりしている。
🐈のアイデンティティはなき声で分かる。猫は同じようになかない。