ぼけた親父を施設に預けて2か月
病院に連れて行く日
2か月ぶりに親父の顔を見る
2か月でここまで衰えるかとおもうくらい衰えが進んでいます
なんなのだろう
聴けば1日ほとんど寝ているという
病院に連れて行けば、待合室でも寝ている
預ける前は、杖をつきながらも普通に歩いていたが
いまではそれもおぼつかない
歩きづらそうなので手を取ると
異様に柔らかい
親父の手ってこんなにやわらかかったっけ
日立マクセルのボイラーマンを長年やっていた親父の手は
ごつかったのに
施設の人の話では
日立に入る前は、呉服の染物をやっていたと言う話
染物職人だったそうです
戦争までは、京都で染物屋をやっていたとか
そんな話は聞いたことがなかった
他人から聞く父親の過去の話は、鮮烈な印象を私にあたえました
母親にきくと、戦争で祖父が亡くなり
戦争後染物の仕事も無く、戦後のどさくさで
なんとかいう代議士にうまいこと土地建物を取られたという
うそかまことか
今更の話
わたしの記憶にあるのは
ボイラーマンの父親が、作業服で団地に帰ってくる姿しか知らない
家にあった、アルバムをめくると
若いころの親父の写真があった
20代であろうおやじの姿
古ぼけた長屋の前で笑ってる
ランニングシャツにズボン
ベルトは無く、荒縄で縛ってる
そんな時代か
夏物の衣料を実家にとりにいく
押し入れの中の夏物を引っ張りだしてると
押し入れの奥からいろんなものが出てきた
桐の箱がありました
中をあけると
釣り道具が入ってます
鮒釣りのテグス糸と針とうき
昔、近所の池に鮒釣りに行ったことが鮮明に思い出されました
竹竿に仕掛け
子ども心に退屈
でも池の岸には、ゴリがいっぱいいて
それを捕まえて遊んでいました
親父をつれて、ロイヤルホストで飯を食います
食欲はある様子。何でもいいという
肉は噛めない
何を食べさせる?
昔、ボイラマンのころの親父は
カレーが嫌いだった
カレーというと機嫌が悪くなっていた
むかしのカレーはまずかったからね
ハンバーグなら食えるだろう
ハンバーグとごはんのセット
ぺろりと平らげる
食欲だけはある
でもなにを食べたのかは覚えていない
カレーを食わせればよかったか
なんと言っただろうな
かけているメガネが壊れていると施設の人が言う
さすがにメガネ屋までは、行ってくれない
親父をつれて、メガネのミキへいく
ぼけてるので、今かけているのと同じ度数のメガネをつくってほしいという
ぼけてる親父に、似合う似合わないは関係ない
一番安いので丈夫な奴という
しかしミキの店員は、4万も5万もするフレームを平気な顔して持ってくる
なにを考えているのか
わしは、メガネ市場やJINで8000円のメガネをかけているのに
なんかいも同じことを言わせるなとむかつきながら
一番安いので丈夫なやつという
しぶしぶ持ってきたのが
25000円、レンズ代は別だという
こっちのしぶしぶ、それでいいという
レンズはいかがしますか?という
一番安いのいいというと
値段の高いUVカットを勧めてくる
なにを考えているのか
一番安い9000円のでいいときつめに言う
それでも34000円
こっちは8000円のメガネなのに
なぜ、ミキへ連れてきてしまったのか
後悔してもはじまらない
せめてこのメガネが無駄にならないことを祈っている
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