たのしい夢日記

京都奈良寺社巡り・思い出・読んだ本…日々のあれこれを写真と共に。

お袋の味

2011-09-13 01:04:30 | 母の記憶
土曜日の夜には同居人と、よく近所の蕎麦屋や焼き鳥屋で晩御飯を食べることがある。

先週の土曜日は「わたみんち」で。ここの「蕎麦茶」がお酒の全く飲めない私にはちょうどいい。

旬の秋刀魚の炭焼き、焼き鳥など。そして居酒屋メニューは濃い、くどいものが結構多いから、大抵私は茄子の浅漬けを頼む。

そこで思い出した。私が茄子の浅漬け好きなのは、昔母が作っていたからだ。
母はキャベツや胡瓜、茄子の浅漬けを作って、袋に入れて店で売っていたのだ。むろん家でも食べた。居酒屋で出てくる長茄子のスライスしたものではなく、かなり小振りの茄子で、食べるときは半分に切った形で食べていた。

そこで思ったのが、いわゆる「お袋の味」だ。

作家の渡辺淳一が、母の作る美味しいイクラは、母が亡くなってしまってからはもう、味わえなくなってしまった、と言う事をエッセイに書いていたのだが、そういうのが「お袋の味」であろう。その人しか出せない味だ。
しかしながら、私が茄子の浅漬けが好き、と言うのはそれとはちょっと違うだろう。昔母が作ったものはもう味わえない、というような感じ方ではないからだ。

そういったものは…つまり、母でしか出せないような味のもので、今は食べれられないようなものは…あまりないようである。


「渡辺淳一の『母のイクラ』みたいな、お袋の味ってある?」と同居人に聞いてみる。

「自転車で魚を売りに来るおじさんがいたんだけど、その人が来るのが楽しみだった。父親が道楽で囲炉裏を作ったから、そこで鮎を焼いて食べた」

焼いて食べた魚はお袋の味とはいえないだろう。「懐かしい故郷の味覚」というものだろう。

「もつ煮を食べたな」

うんうん、それならお袋の味っぽい。

「俺が作ったんだ」

「じゃあ『俺の味』じゃあないの?」

「まあ、そうだなあ」

「あとは?」

「ゆで卵ダイエットと鶏肉ダイエットで、一緒にゆで卵とか鶏のムネ肉食べた」

…それは「お袋の味」から相当ずれているような…

「だからやっぱり、お袋の味ってないなあ」

ウチの母も、同居人の母親も、どちらも家が店や会社で、忙しい日々を送ってきた人たち、あまりじっくり料理に向き合う時間はなかったせいだろう。


さて、今日は中秋の名月。
中秋の名月はいつも満月なのかと思ったらそれは関係ないそう。今年はたまたま満月に当たったと言う事らしい。お月さまは真ん丸である。





白玉粉を買ってきて、お月見団子を作ってみた。ススキも飾る。
本当なら三方に山形に載せるものだろうけれど、そんなに作ったら食べきれない。というかあれは飾りだけなのか?

ウサギ型のものの周りを団子で囲い、なんだか寂しいのでベランダからゴーヤの花と若い葉をつんで飾ってみる。ウサギの目は紫蘇の葉だ。なかなかかわいらしく出来た。

団子を丸めながら思ったのは、「これを最後にしたのは母といっしょだったな」と言う事。別に月見に関係なくよく作っていたおやつだった。

まだ実家にいた時の事だから、学生時代かもっと前の子供の頃かもしれない。
一人暮らしの時に団子作って食べたりしないし、オーストラリアでやってたらびっくりだ。
大阪に来てからも作ったことはない。

子供の頃は白玉団子を丸めるのが楽しかったものだ。丸めて、親指でくぼみをつけて、できたものから鍋に放り込む。
「耳たぶくらいだよ」と母が教えてくれたその感触はよく覚えているものだ。
そうそう、こんな感じ。


今日は月見団子だから、真ん丸に仕上げる。
なんでまたくぼみをつけたんだろ?と今更ながらに思うが、おそらく、餡子でなく砂糖蜜で食べていたので、絡みやすくしたものなのだろう。さて、これは祖母がそうやっていたのだろうか?
母と二人でしていた時はなんの不思議もなかったのだけれど。

帰ってきた同居人も月見団子を見て喜び、テーブルに飾って、紫蘇の目のウサギを食べてみる、という。甘いものはあまり、それも和風のは食べない人なのだが珍しかったからだろう。

餡子は嫌うので、砂糖蜜を作って、「これならあんまり甘くないから」と勧める。

「昔はこうして母親と白玉団子を作って、餡子じゃなくて砂糖蜜で食べたんだよ」

「『お袋の味』か!?」

それもちょっと違うような…そうなのかな…


母はあの世で今日白玉団子を作って食べただろうか?くぼみのある団子を。
明るい月空を見ながら考える。雲はずいぶんあるけれど、雲のある方が月夜は良いものだ。

つい最近、知っている人がまた、そちらに行ってしまったけれど…月見団子でもてなしてあげてほしいな、などと思う。まだそちらの生活には慣れていらっしゃらないだろうから。





コメント (6)
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