当サークルの主催企画「第1回 世界遺産入門講座 - 日本とイタリアの世界遺産 -」開催リポート(2017.7.2)@日伊文化交流会
一年がかりで準備を進めてきました当サークルの「第1回 世界遺産入門講座 - 日本とイタリアの世界遺産 -」が無事終了しました
22名と多くの方にご参加いただき 世界遺産検定公式テキスト2級(旧版)と 「イタリア好き」VOL.29チレント特集まで参加者全員にプレゼント♪ また レジュメの他にも 和食や地中海ダイエットについて 協同組合が無形文化遺産に登録されましたというチラシ等も配らせていただきました
← 配布資料
← 「ご自由にお取りください」コーナーも充実♪
クイズを交えて 80枚を超えるパワーポイントを使っての講座では 「世界遺産ってなに?」を楽しく学ぶ「世界遺産楽(がく)」 自分で調べる時に知っていると役に立つコツ 世界遺産はどうして選ばれるのか+裏話をちょこっと(笑) なぜ富士山は自然遺産じゃなくて文化遺産なの?
今年の第41回世界遺産委員会は2017年7月2日からポーランドのクラクフで開催され 29件が審議されます 沖ノ島がどうなるか... 来年の長崎の教会群は...イタリアの世界遺産はどうなるか... ナポリピッツァの無形文化遺産への登録は? などなど
欧州は石の文化 日本は木の文化 アフリカは泥の文化ということ 暫定リストや無形文化遺産について 和食や地中海ダイエット 申請を取り下げる理由 今は産業遺産が増えている理由 イタリアの世界遺産51のグループ分け(全部覚えるのは大変なのでグループ分けすれば覚えやすい!)
終了後はメンバーでサークル結成10周年の打ち上げをやりました♡ 昔の写真(ベリッシモ先生を囲んで)を見たり いろんな話をしました 皆様のご協力あって今まで続けられました!!
今 イタリアの世界遺産の数は51で世界一ですが (世界で1052件) 2017年7月の世界遺産委員会の決定を受けて 2位の中国と数が並んでしまうかも? 来年はどうなるか...ハラハラ(ーー;) 毎年2件まで申請可能ですが うち1件は「自然遺産」でないといけない決まりがあります なので自然遺産に恵まれている中国が今増えているわけですね~
* * *
以下は 講座のまとめです:
世界遺産というと、日本で人気のあるのは 「マチュピチュ アンコールワット モンサンミッシェル そしてベネツィア」とのこと。ただし、ヴェネツィアについては、イタリア好きな講師の個人的な見解ですが。
そして、富士山は世界遺産条約が採択されて20年目の2013年にようやく世界遺産に登録されたものの、なぜか自然遺産ではなく、文化遺産。
最近は、富岡製糸場や軍艦島のような産業遺産が増えているのはなぜ?
そんな疑問を解決するべく、『世界遺産ってなーに?』をテーマに世界遺産の基礎知識を学びました。
世界遺産をひとことでいうと? 「未来に遺さなければならない人類共通の宝物」、つまり人類共通の遺産です。
具体的には、世界遺産条約に基づく国際会議(世界遺産委員会)を通じて「世界遺産リスト」に記載された『顕著な普遍的価値』を持つ文化財や遺跡、自然環境などを指し、文化遺産 自然遺産 複合遺産の3つに分類されています
この「世界遺産」という発想の原点は、「アテネ憲章」(1931年に採択された「歴史的記念建造物の修復のためのアテネ憲章」) にあり、当初は歴史的建築物の保護・保全を目的としたものでした。
2016年に登録された国立西洋美術館の設計者ル・コルビュジエもこの国際条約の実現に尽力した建築家のひとりでした。
そして 第二次世界大戦終戦の翌年1946年に、諸国民の教育、科学、文化の協力と交流を通じて、国際平和の維持と人類の福祉の促進を目的とする国際組織としてユネスコ(United Nations Educational Scientific and Cultural Organizaion/国際連合教育科学文化機関)が国連機関の一つとして設立されました。
ユネスコは、1972年、パリの本部で開かれた第17回ユネスコ総会で、貴重な文化財や自然環境を、世界遺産として登録保護し、国際協力によって保全することを目的とする「世界遺産条約」を採択し、世界の文化財や自然環境の保護・保全活動に着手しました。
← ユネスコ憲章(前文)
ユネスコ憲章(前文): 「戦争は人間と人種の不平等から生まれるものであり、相互の風習と生活を知らないことがその原因となった。戦争は人の心の中で生まれるものだから、人の心の中に平和の砦を築かなければならない」と記されており、「諸国間の交流を通じて、文化の多様性を理解し合い 国際協力を促し 世界平和を構築すること」というユネスコの基本精神を究極の目的とする世界遺産という概念が導入されました。
この世界遺産条約誕生の大きなきっかけになったのが、世界の50数ヶ国が協力して、アスワン・ハイ・ダムの建設(1959年)による水没の危機から「アブ・シンベル神殿」を救ったことでした。
因みに、 ユネスコには、現在、195カ国が加盟しており、そのうちの191カ国が「世界遺産条約」を締結しています。
それでは、『世界遺産条約を最初に締結した国はどこか? 』
歴史的な建築物が多く存在するヨーロッパの国ではなく、1973年に締結したアメリカでした。
アメリカは自然の保護に尽力していた国であり、その100年も前(1872年)に 世界で最初の「国立公園」という制度をつくった国なのだそうです。
文化財の保護に熱心であったヨーロッパの国々と 自然の保護に熱心であったアメリカがいっしょになって世界遺産という制度をスタートさせました。
だから、世界遺産は文化遺産と自然遺産の二本立てとなったという経緯があるそうです。
そして、1978年に イエローストーン国立公園(米)をはじめとする12件が 初めて世界遺産に登録されました。
注目してほしいのは、この中にセネガル(アフリカ)の「ゴレ島」という奴隷貿易が行われた地が登録されていることです。
それは、人類が行ってきた輝かしい記憶だけではなく、人類にとって二度と行ってはいけないことを記憶に遺すという負の遺産という概念を取り込んでいたことです。
例えば、日本の世界遺産である「広島の原爆ドーム」もこの負の遺産のジャンルに属しています。
そして2017年の今は、世界遺産は1,052件となりました。(2017年の世界遺産委員会で21件が誕生し、今日現在は1,073件)
さて 世界遺産に登録されるためには、申請国が世界遺産条約を締結していることを前提に、 暫定リストに記載、保有国が自薦、不動産であること、保有国の国内法で保護していることが絶対条件であり、さらに世界遺産委員会が制定している登録基準(10項目)を満たす(1つ以上)ことが必要です。 ← Wikipedia等で世界遺産について調べる時に この10項目(i~x)を知っていると違いますョ!
← 日本の世界遺産
さてここで世界遺産クイズです♡ ←けっこう皆さんよくご存じでした(-_-)/ ←景品はじゃんけんで♪
← クイズです! この中でどれが世界遺産?
条約締結国は、あらかじめ「暫定リスト」に候補物件を登録し、毎年2月1日にこの暫定リストに掲載している候補物件の中から翌年に審議してほしい物件をユネスコに推薦します。
そして、翌年の世界遺産委員会までの期間に専門家集団(文化遺産はICOMOS、自然遺産はIUCN)が現地調査、推薦内容の確認を行い、その調査結果に基づいて世界遺産委員会(7月)で審議されます。
時々、世界遺産委員会直前に推薦した物件を取り下げるケースが散見されます。
これは、世界遺産委員会で、審議結果が登録不可となると再度申請できないため 当概政府が大事を取って事前に「取り下げる」場合もあるらしいです。
日本では2013年の「鎌倉」、そして2016年の「長崎の教会群」の2回、推薦を取り下げたことがあったとのことでした。
それでは、富士山は、なぜ自然遺産ではないのかという件ですが、自然遺産に関する登録基準(4項目)をクリアできないために 自然遺産への登録を諦めたという経緯があります。
私たち日本人にとっては、富士山の美しさは格別なのですが、残念ながら、富士山のような成層火山は世界に多くあり、カムチャツカ等には、より規模の大きい、そして美しい成層火山があるなど、自然美だけでの富士山の自然遺産への登録は難しい状況にあったからです。
このため、日本政府は、ある時期から富士山の文化的価値に着眼して文化遺産への登録を進めてきました。
2017年に審議される「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群」は、古墳時代前期中頃(4世紀後半)から、平安時代(9世紀末)までの五百数十年にわたって、国家的祭祀が行われていた「神宿る島」であり、島全体がご神体であり女人禁制となっており、男でも、祭り(5月27日)の時に、禊ぎといって海中で体を清めた限られた人たちが上陸できるだけで、普段は島の神職者しか上陸できません。このために 対岸の福岡側にある神社から「遥拝(ようはい)」をします。(その後、世界遺産に登録が決定しました。)
そして、来年、2018年は、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」が審議される予定です。
この物件は、当初2015年に審議されるべく推薦されていたのですが、急遽、「明治日本の産業遺産群革命遺産」に変更されまして(裏話が...)、来年の登録を目指しています。 ← この話題で盛り上がった♪
また最近、「富岡製糸場」や「明治日本の産業遺産群革命遺産」のような「産業遺産」が日本だけではなく、世界的に増えているのはなぜ? これは、世界遺産登録が、ヨーロッパの歴史的建築物に集中する傾向がどうしてもあるため 比較的新しいものの、人類の生活環境の向上め改善に寄与した産業施設などの登録を推進している「グローバル・ストラテジー(世界戦略)」に基づいているものです。
一方で、広域にまたがる同じ価値の物件を登録する「シリアル・ノミネーション(serial nomination)」、国境を越えて複数の国々が保有する遺産「トランスバウンダリー・サイト(transboundary site)」の考え方をユネスコは推奨しており、上野の国立西洋美術館は、この考え方に基づいて登録されたル・コルビュジエの建築物群のひとつでした。
← ル・コルビュジエ
* * *
イタリアの世界遺産 ← やっと(笑)
イタリアの51の世界遺産(文化47,自然4)をグループ分けしてみると: 古代ローマ以前の遺跡(ヌラーゲ、アグリジェント他)←パエストゥムにあるチレントディァーノ渓谷国立公園がおススメ! ローマ帝国時代の遺跡(ローマ、ポンペイ等) 中世イタリア/都市国家とシチリア王国(シエナ、アッシジ、ヴェローナ、カステル・デル・モンテ等...) ルネサンス関連(フィレンツェ、ミラノ、ウルビーノ等) そして自然遺産(エオリア諸島、ドロミテ、エトナ山等)←ドロミテの松がヴェネツィアの潟に埋められているとのこと
← これなら覚えやすい!! 講師自らの案とのことですが これを知っただけでも講座開いてよかった~(笑)
ヴェネツィアは、「文化遺産」の代表。それと泰山 莫高窟(ばっこうくつ) この3つが文化遺産の6つの項目をすべて備えているとのこと。
そして、これから注目してほしいイタリアの世界遺産は、世界中で、宗教の対立、民族の対立が見られる今日、異教徒、異民族が共存していた世界として意味深い物件、「パレルモのアラブ=ノルマン様式建造物群およびチェファル大聖堂、モンレアーレ大聖堂」。
そのシチリア王国の遺産であるカステル・デル・モンテ、そしてこれを作ったフェデリコ2世についても色々お話いただきました ←来年の第2回ではもっと詳しく♡
← カステル・デル・モンテ
* * *
2017年7月の世界遺産委員会で審議予定なのは「15~17世紀におけるベネチアの防衛施設」(イタリア・クロアチア・モンテネグロ)です。(無事登録されました。)
イタリアのイブレーア/(ミラノの北のオリベッティの工場のある町)は 取り下げたそうです
「シーラ国立公園(Parco Nazionale della Sila-Sila,gran bosco d'Italia)は辞退
あとは「カルパチア山地とヨーロッパ他地域のブナ原生林(Primeval Beech Forests of the Carpathians and Other Regions of Europe)」がイタリアにまで範囲拡大を審議とのことですが...? (無事、承認されました。)
そして無形文化遺産登録を目指す「ナポリピッツァ」!! ←私もACCI GUSTOで署名しました~♡
← ナポリピッツァの登録は!?
日本の世界遺産は こちら
イタリアの世界遺産は こちら
「和食が無形文化遺産に登録」 については こちら
「地中海ダイエット等の食文化が無形文化遺産に登録」は こちら
最後の閉会の挨拶では 語学ばかりでふと日本について説明ができない自分に気づき 世界遺産を知り 開かずの扉が開いたという私のエピソードを語り 無事閉会となりました!!
← 挨拶の司会と講師
続きはまた来年2回目の「第2回世界遺産入門講座 - 日本とイタリアの世界遺産 -」で!! 7月初旬開催の世界遺産委員会の結果を受けて 7月22日(日)に開催予定です(^^)/ ← イタリア政府観光局の「イタリアの世界遺産」パンフをプレゼント♪
「第1回世界遺産入門講座 - 日本とイタリアの世界遺産 -」 開催のお知らせは こちら
サークルの主催企画を補助していただきました東都生協様に心よりお礼申し上げます。
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