第41条 国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。
第43条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
「日本国憲法」より
2009年8月30日の第45回衆議院議員総選挙が行われた。結果は周知の通りで、
自民党:119議席(解散前:303議席)
民主党:308議席(解散前:112議席)
※その他省略
となった。選挙で政権交代が起こったのは、戦前の1924年。いわゆる大正デモクラシーで、清浦圭吾首相を支援する党が惨敗し、護憲三派が勝利し、加藤高明内閣が成立し、男子普通選挙法が制定された。これにより有権者が国民全体の5%から一気に25%にまで増加し、世の中が激変した。1947年の片山哲内閣(社会党他)と、1993年の細川護熙内閣(日本新党他)も衆院選後に政権交代となったが、これは衆院選後に単独過半数を獲る党がなく、選挙後の数合わせによって誕生した内閣で、どちらも短命に終わった。今回の選挙は前者に近く、85年ぶりの選挙による政権交代と定義することができる。
加藤高明内閣以後、日本の政党政治は、立憲政友会と憲政会(後の立憲民政党)による二大政党制となり、「憲政の常道」とよばれる政権交代が時代がおよそ10年ほど続いた。すなわち、与党の政党の過失があると、もう一方の政党が政権を担うという「政権交代制度」である。しかし、これは今日のような「二大政党制による政権交代制度」とはシステムが明らかに違う。まず、明確に違う点は「過失の判断は民意によるものではなく、主権者たる天皇(実質は元老院)に由来する」という点である。当時の首相は天皇による指名で行われており、選挙による政権交代ではない点が現代と大きく違う。このシステムは、多くの問題を抱えていたが(詳しくはこのブログの2008年12月29日項「大日本帝国憲法の制度的限界」参照)、元老院がそれなりに民意をくみ上げたことにより、ある程度の民主主義が確立されたと言える(しかし、完全に民意をくみ上げていたわけではないため、国民の不満は蓄積し、結果不況による国民不満の爆発とあいまって軍部の台頭を許し、政党政治が終了した原因の1つとなったのは言うまでもない)。
そして現代。日本国憲法に主権者は国民と定義されてはや60年余。システムとして「議会制民主主義」は確立されたが、それが現代まで有効に機能してきたかと言うと怪しい。すなわち、与党の政党の過失があると、もう一方の政党が政権を担うという「政権交代制度」を国民は選択できるにも関わらず、選択しなかったのだ。それが「55年体制」という万年与党・自民党と万年野党・社会党の「1.5党政党制」だった。そして長きにわたる自民党政権で国民には「自民党以外の党に政権担当能力がないのでは?」
という意識を植え付けてしまったのである。
その意識がついに昨日壊れた。これで真の「二大政党制」の完成を見ることができるのか。ここで、2つの新聞の社説を紹介したい。
「今回の総選挙を、政権交代の可能性が常に開かれた『2009年体制』への第一歩にできるかどうか。それは、2大政党のこれからにかかっている。」
(2009年8月31日付け朝日新聞の社説)
「民主党がつまづく可能性はかなり高い、と私は思う。その際に政権交代可能な政党がないと、日本の議会制民主主義は大きな危機を迎える。民主党が緊張感を持って政権運営にあたるためにも、あえて『消えるな!自民党』とエールを送りたい。」
(2009年8月31日付け産経新聞の社説)
2つの新聞は、おおよそ対極だと言えるくらい普段から大きく論調の違う新聞で知られるマスメディアである。その新聞の社説の結論がおおよそ同じ方向に向いていると感じられないだろうか。両紙は二大政党にともに「民主党に緊張感を持った政治を期待」し、「自民党に政権交代可能な準備」を求めている。
日本の有権者は、今回の政権交代で「自民党以外の党に政権担当能力がないのでは?」というアレルギーを超えることができた。そしてもうひとつ日本の有権者に隠れたアレルギーがある。「自民党は利権政党であり腐敗政党だ。」というレッテル。これが、自民党が野党になることで時期に消えることになるのではなかろうか。そして、民主党の支持者にも自民党の支持者にもアレルギーがなくなり、2013年までにはある次回の衆院選で、「政党ではなく政策で投票」「政権与党の実績で投票」という真の議会制民主主義による選挙が行われるのではないか、と期待している。
そう考えると、朝日は政権交代が可能な体制を「2009年体制」と評しているが、実は2003年から二大政党制は始まってとも言える。2003年の衆院選(自民党:237議席VS民主党:177議席)、2005年の衆院選(自民党:296議席VS民主党:117議席)とも自民党が二大政党制の中で勝利を収めたと言えるので、その意味では日本の政権交代可能な二大政党制を「2003年体制」と言うことができるかもしれない。
第43条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
「日本国憲法」より
2009年8月30日の第45回衆議院議員総選挙が行われた。結果は周知の通りで、
自民党:119議席(解散前:303議席)
民主党:308議席(解散前:112議席)
※その他省略
となった。選挙で政権交代が起こったのは、戦前の1924年。いわゆる大正デモクラシーで、清浦圭吾首相を支援する党が惨敗し、護憲三派が勝利し、加藤高明内閣が成立し、男子普通選挙法が制定された。これにより有権者が国民全体の5%から一気に25%にまで増加し、世の中が激変した。1947年の片山哲内閣(社会党他)と、1993年の細川護熙内閣(日本新党他)も衆院選後に政権交代となったが、これは衆院選後に単独過半数を獲る党がなく、選挙後の数合わせによって誕生した内閣で、どちらも短命に終わった。今回の選挙は前者に近く、85年ぶりの選挙による政権交代と定義することができる。
加藤高明内閣以後、日本の政党政治は、立憲政友会と憲政会(後の立憲民政党)による二大政党制となり、「憲政の常道」とよばれる政権交代が時代がおよそ10年ほど続いた。すなわち、与党の政党の過失があると、もう一方の政党が政権を担うという「政権交代制度」である。しかし、これは今日のような「二大政党制による政権交代制度」とはシステムが明らかに違う。まず、明確に違う点は「過失の判断は民意によるものではなく、主権者たる天皇(実質は元老院)に由来する」という点である。当時の首相は天皇による指名で行われており、選挙による政権交代ではない点が現代と大きく違う。このシステムは、多くの問題を抱えていたが(詳しくはこのブログの2008年12月29日項「大日本帝国憲法の制度的限界」参照)、元老院がそれなりに民意をくみ上げたことにより、ある程度の民主主義が確立されたと言える(しかし、完全に民意をくみ上げていたわけではないため、国民の不満は蓄積し、結果不況による国民不満の爆発とあいまって軍部の台頭を許し、政党政治が終了した原因の1つとなったのは言うまでもない)。
そして現代。日本国憲法に主権者は国民と定義されてはや60年余。システムとして「議会制民主主義」は確立されたが、それが現代まで有効に機能してきたかと言うと怪しい。すなわち、与党の政党の過失があると、もう一方の政党が政権を担うという「政権交代制度」を国民は選択できるにも関わらず、選択しなかったのだ。それが「55年体制」という万年与党・自民党と万年野党・社会党の「1.5党政党制」だった。そして長きにわたる自民党政権で国民には「自民党以外の党に政権担当能力がないのでは?」
という意識を植え付けてしまったのである。
その意識がついに昨日壊れた。これで真の「二大政党制」の完成を見ることができるのか。ここで、2つの新聞の社説を紹介したい。
「今回の総選挙を、政権交代の可能性が常に開かれた『2009年体制』への第一歩にできるかどうか。それは、2大政党のこれからにかかっている。」
(2009年8月31日付け朝日新聞の社説)
「民主党がつまづく可能性はかなり高い、と私は思う。その際に政権交代可能な政党がないと、日本の議会制民主主義は大きな危機を迎える。民主党が緊張感を持って政権運営にあたるためにも、あえて『消えるな!自民党』とエールを送りたい。」
(2009年8月31日付け産経新聞の社説)
2つの新聞は、おおよそ対極だと言えるくらい普段から大きく論調の違う新聞で知られるマスメディアである。その新聞の社説の結論がおおよそ同じ方向に向いていると感じられないだろうか。両紙は二大政党にともに「民主党に緊張感を持った政治を期待」し、「自民党に政権交代可能な準備」を求めている。
日本の有権者は、今回の政権交代で「自民党以外の党に政権担当能力がないのでは?」というアレルギーを超えることができた。そしてもうひとつ日本の有権者に隠れたアレルギーがある。「自民党は利権政党であり腐敗政党だ。」というレッテル。これが、自民党が野党になることで時期に消えることになるのではなかろうか。そして、民主党の支持者にも自民党の支持者にもアレルギーがなくなり、2013年までにはある次回の衆院選で、「政党ではなく政策で投票」「政権与党の実績で投票」という真の議会制民主主義による選挙が行われるのではないか、と期待している。
そう考えると、朝日は政権交代が可能な体制を「2009年体制」と評しているが、実は2003年から二大政党制は始まってとも言える。2003年の衆院選(自民党:237議席VS民主党:177議席)、2005年の衆院選(自民党:296議席VS民主党:117議席)とも自民党が二大政党制の中で勝利を収めたと言えるので、その意味では日本の政権交代可能な二大政党制を「2003年体制」と言うことができるかもしれない。
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