ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

小学校で能楽デモンストレーション(その2)

2006-11-20 11:18:48 | 能楽

さてこの画像。。能の実演には違いないのですが。。曲目は『鶴亀』。そしてシテとして鎮座ましましているのはこの小学校の副校長先生(!)。じつはこれも ぬえが持っている子ども相手のデモンストレーション公演のワザのひとつです(ところで最近はどこもそうなのか、この学校では教頭先生、とは言わないらしい)。

小学校でデモンストレーションを行う事が決まってすぐ、ぬえは学校にお願いして、校長先生かそれに準ずる立場の先生。。つまり朝礼や全校集会でふだんお話をしていて、子どもたちにも馴染みの深い先生に、この『鶴亀』という出し物の一つに主役としてご出演をお願いし、そのスケジュールの都合に合わせてデモンストレーションの実施日を決めました。なんせこのデモンストレーションはPTA主催なので、どの学年の子どもたちも参加できるのです。やっぱりここは、参加する子どもたちみんなになじみ深いお顔の先生が主役を勤める番組がないと。

そして、あらかじめ『鶴亀』のシテの型付け(もちろん型は常よりもぐっと簡略にしてある)と型の説明書を作っておいて、さらにシテが舞う部分のテープも作って、これらを副校長先生に渡しておきます。そしてある日、一日だけ学校にお邪魔して先生にシテのお役のお稽古をつけておく、と。このシテの型も、たとえば「山河草木国土豊かに」とサシ分ケをするところを、見守る子どもたちの顔を右から左へ指し示し、また左から右へ慈しむように見廻すように改めるなど、随所に ぬえの工夫が入っているのです。

それにしてもやはり教育者は違うものですね。事前のお稽古で感じた事ですが、いくらあらかじめテープや詳細な解説書を渡しておいたといっても、そこはそれ、能の実技の説明など ちんぷんかんぷんだったはず。しかもシテには、かなり省略して譜を詰めたものとはいえ、「楽」まで舞ってもらう事になっていました。(^◇^;) ところが稽古が始まると、あれよあれよと納得して型をマスターしてゆきます。責任感があるからできる事でしょう。感心、感心。

もちろん当日も開演前に一回だけ副校長先生に稽古をしておくのですが、この時はもうすでに先生は問題なく型をこなしておられました。事前の稽古で手応えを感じていた ぬえは、この当日の開演前の稽古の先生の出来ばえに気をよくして、着物で舞う予定だった先生に、急遽 袷狩衣を着けてあげる事にしました。(^^;)

そして開演、子どもたちには『鶴亀』の中で「鶴」と「亀」を演じて? もらいます。ま、どのように子どもたちを能の役に巻き込むか、は企業秘密ということにしておきますが、まず子どもたちに『鶴亀』の物語をしてあげて、そこはそれ、唐代の玄宗皇帝では分からないでしょうから「王様がお正月に儀式をとり行います」というように教えて、それから「鶴」「亀」のお稽古? を簡単につけて、「はいっ!それじゃあみんなで王様を呼びましょう。せーのっ、王様~~~~~~!!」。。で王様登場。(^◇^;) ふだん見慣れない副校長先生の姿には、参観の保護者のみなさんもウケてましたな~。

ぬえは子どもたちの演技の指揮、ってな役割でして、鶴も亀も庭上で舞い遊び、王様に「へへ~~っ」とお辞儀をすると、王様も満足げに立ち上がって舞い始めます。緊張している王様の顔はちょっとこわかったけれど、無事に舞い納めて、正月の節会は滞りなく、めでたくお開きとなりましたっ (^^)v





先生方にもご協力願って、子どもたちも楽しめたと思います。やっぱり子どもたち相手では説明だけでは飽きられてしまって、実演して見せたって、「見ているだけ」ではどうしても限界があります。子どもたちにも参加してもらって一緒に遊びながら、ふだんテレビなどで触れているドラマや歌とは違った世界を垣間見るのはよい経験だったと思います。ここで休憩を取って、ぬえが実演する最後の番組となりまし