ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

海に花火に、そうしてお稽古!(その4)

2010-08-08 00:24:52 | 能楽
まあ、去年の子ども能は原典の『吾妻鏡』や『源平盛衰記』に割と忠実に台本を作ったので、これでちょっと ぬえの気も済んで (^_^; 今年は台本に大きく手を入れることができました。

今年は頼朝も最後に敵の大将・山木兼隆と一騎打ちになるし、そのまえの源平の郎党の合戦場面も、お客さんにちょっと笑いを頂けるように面白く作り替えてみました。そしてなんと言っても台本を半分ぐらいに削ったことが大きな変更でしょうか。これは今年の上演までの稽古日が少ないので仕方がなく短くした、という理由が大きく、そのために泣く泣く削った場面もあります。たとえば頼朝が挙兵を心に決めた時に北条政子が戦勝祈願のために神楽を奏する場面(これは史実ではないですが)。こういうところは来年以降は少しふくらませて、小学生に略式の中之舞を舞わせるところぐらいまでは行きたいな~、と考えています。これまでは夏休みの子ども能上演だけを目標に子どもたちと稽古を進めていましたが、最近は年間を通じて稽古をしてくれる子どももいるので、それだけの稽古量があれば舞を舞うことも不可能ではないかも。

さて前置きが長くなりましたが、実際に稽古を始めてみたところ、意外にもみんな よく予習ができているようです。これまた稽古の日数が少ないため、台本をあらかじめ配っておいて、またすべての謡の部分をあらかじめ録音して渡しておいたのですが、これが良かったようで、みんな楽しみにして稽古に臨んでくれたようです。

とくに立ち方は、今年は女の子ばかりで、果たしてどうなるかな? と多少危惧は持っていたのですが、まあ、みんな おてんばさんで…よかった。(^◇^;) これなら面白い切り組の場面ができそうですね。切り組場面はだいぶ工夫して作ったので、去年の倍ぐらいの時間を掛けて演じることになりそうです。



問題は…声の大きさだなあ。まあ、これは毎年問題になるところですが、どうしても大きな声を出すことができない。いずれ演技に自信が出てくれば、そうして、役を勤めるということに責任感が生まれてくれば、自然に声は出てくるものなのですが、稽古時間の問題もあって、早めに彼らのやる気を引き出していきたいと思っています。

ところで子ども創作能では毎年 小学6年生に主役級の役を演じてもらい、5年生にそれに準ずる立ち方の役を、それ以下の低学年の子どもたちには地謡を勤めてもらっています。でも、動きたい盛りの小学生に地謡だけを強いるのは どうもかわいそうで。一方、小学校を卒業して中学生になった 子ども能OBやOGの中にも、子ども能への参加を希望してくれる子も何人もいまして。

そこで去年までは、中学生には子ども能では地謡として熟練の技で(?)後輩たちのサポートをしてもらうほか、古典の曲にもトライしてもらおう、というわけで、仕舞を演じてもらいました。そうして低学年の、地謡の子どもたちには大小鼓の連調を経験してもらったり。その分稽古は科目が増えるわけで大変ではありますが、毎年 良い成果も得ています。

今年は中学生、小学校低学年とも、仕舞を演じてもらうことにしました。このときがその仕舞の初稽古だったわけですが、これまたみんな すぐに覚えられそうです。稽古初日から、秋に向けて 手応えを感じた ぬえではありました。ん~、みんな、頼もしいねえ!