ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

伊豆での稽古~(続)

2010-08-18 01:25:25 | 能楽

まあ、長い10年間のあいだには色々なことがありましたね~。本当に子どもたちと一緒に汗を掻き、笑い、泣きもした(泣いたことも本当にあります)10年間でした。

そうして今年からは ぬえが中心となって子ども能を進めていくことになりました。それまでの経緯にはいろいろとイヤなこともあったけれど、ぬえの能楽師としての生命の、じつに半分を占めている、この子ども能で得た経験はかけがえのないものです。まさか子どもたちからこれほど学ぶことがあるとは思いもしなかったけれど、ぬえはこの子ども能を必ず守り抜くでしょう。

さて、そんなこんなで今年も稽古が始まりました。例年よりもかなり遅れてしまったけれど、子どもたちは毎年 ぬえが嫉妬する、あの記憶力の良さで確実に台本を覚えていきます。ぬえは台本と首っ引きで「そこは右に廻って…ええと、そうだったかな…いや、左だ。左に廻って…」…こんなもんです。台本を書いたのは ぬえなのに~(T.T)

そんで、どうも みんなまだまだ暗記に余裕があるようなので、地謡を勤める低学年の子どもたちには仕舞もお稽古を始めることにしました。それがタイトルの画像~。 これは1~2年生だけで構成したグループの仕舞の稽古の様子です。左から せりな(小1)、きらり(小1)、すみれ(小2)の3人ですが、これできれいな着物を着せたら最強だろう~! これに勝てる番組はありえない~(^◇^;)

…とか言っている間に、伊豆長岡の中のある地区の敬老会から 子ども能に出演のオファーが舞い込んできました!

敬老会で子ども能? と不思議に思った ぬえですが、これは子ども能んび参加している子どものお母さんが、その地区の役員さんに相談したところから実現したことなのだそうです。高齢の方を前にして子どもたちが創作能を演じ、そうして子どもたちのサポートとして舞台での実演を助けるお母さん方がある。要するに三世代の交流を図ろう、という、地区の青少年育成会の方々の思いと、神社の秋祭りでの上演の前に、なんとか子どもたちに人まえで舞台を踏む経験を積ませてやりたい、というお母さんの気持ちがうまく一致したのですね。お母さん、がんばりました。

問題はその敬老会がわずか1ヶ月先に開かれるということ(!)。例年、半年ほどかけて子どもたちは稽古を積んで舞台に臨んでいたので、これはあまりにも時間が少ない… ちょいと突貫工事になりそうですが、せっかくのチャンスですから、なんとか活かしていきたいと思っています。

これからは子ども能もこういう生き方をしてゆくことになるでしょう。市民に愛され、その身近にいる子ども能…いいじゃないですか。もともと、子ども能のあるべき姿だったかもしれませんですね~