ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

子ども能…お揃いのTシャツが完成しました~(その3)

2010-11-01 02:42:15 | 能楽
昨日は新潟で催しがあって一日がかりでしたが、今日は久しぶりにな~んにも予定ナシ。でも、もう明々後日に迫った子ども能のための準備に追われていました。ぬえ自身が舞う「装束付き舞囃子」の『井筒』のために装束を出したり、子ども能の道具、その後見に抜擢したママの袴、子ども仕舞の扇…それから、これまでとは違って神社の祭礼の中に割り込ませて頂いての上演ですから、協力してくださる囃子方が神社で移動する便宜もこちらで整えなければならないのですが、実行委員の方々は、え~、何というか、偉い方々なんで、スリッパを用意してください、とは ちと言いにくい… ぬえが100均で買いました~(^◇^;) あとは子どもたちへのご褒美やら、待ち時間の間に楽屋で食べさせるためのお菓子とか… ぬえって何屋さん? (;^_^A

さてTシャツの件ですが、「子ども能」の指導を10年も続けている間に、だんだんと周囲の環境も変わってきまして…正直に言って、毎年「狩野川薪能」の実行委員会の方からは「来年は続けられるか分からないよ…」というお話はずっと聞かされておりました。それでも ぬえの知らないところで努力を傾注してくださって、途切れることなく上演は続いてきたのですが… 一度は本当に「ゴメン。来年は中止にします」というところまで来たのです。忘れもしない、一昨年の年末も押し迫った頃、子ども能の「反省会」の中で、それまでなぜかじっと黙り込んでおられた実行委員会の方から、最後に挨拶として飛び出た言葉… ぬえはその反省会の冒頭から、微妙に不穏な雰囲気を察しなかった訳ではないですが、さすがに決定事項として突きつけられると、目の前が真っ暗になりました…

その日は泊まってその翌日、葛城山の山頂にある葛城神社に参拝して、いつの日にかの再興を祈願しましたが、もう、この景色もこれで見納めかも知れない…と思うと、居たたまれない気持ちにもなってきます。なんだか長い間ずうっとベンチに座ったまま、誰も通りかからないままに、いつも持ち歩いているICレコーダーで野鳥の囀りや虫の音、風の音なんかを録音してみたり…

そのまま迎えた正月は、喜びも何も、なあんにもない正月でしたね。ところが正月も半ばに差し掛かった頃、実行委員会から突然に連絡を頂きまして、「能の催しを復活させたから」とのこと。あまりに唐突すぎて 訳が分かりませんでしたが、いろいろお話をまとめて見るに、どうやら催しとしての採算よりも、子ども能がこれまで成してきた成果を重視して頂き、これを出発点にして能の催しを再構築してくださったようなのです。これは嬉しいお言葉でしたし、何より ぬえは飛び上がって喜びました。

ただし採算面の都合によって切り捨てなければならなかった事もあります。まずは「薪能」ではなくなったこと。これは全国的に見ても薪能は減る一方で、なんせ経費が文化会館のようなホールで上演する場合の倍額かかるのです。雨天の場合の代替会場として、やはりホールは押さえておかなければならないし、野外に仮設の能舞台や見所の椅子、さらには受付、仮設トイレを建設し、交通手段も考えなければならず… それで当地でも、城山(じょうやま)というもの凄いインパクトのある岩山や、狩野川のせせらぎをバックに上演する、あの最高のシチュエーションの「狩野川薪能」を諦めて、「狩野川能」というホール能として再出発することになりました。

このとき、なんですね。ちょうど薪能からホール能に変わった時に、時を同じくして「薪能Tシャツ」もストックをほぼ使い果たし、それならばもう「薪能」ではない新生の催しなのだから、この機会に「子ども能」だけのためのTシャツを作っては? というお母さんからのアイデアが出されたのです。

とはいえ、その時にはそれ以上の盛り上がりは見せず終わってしまいました。

それからたった1年の間に すったもんだの経緯があって、子ども能それ自体が中止に追い込まれて…それは ぬえもここに書きたくもないような思いもしましたが、今年は主役を勤めるんだ!という子どもたちの要望も強く、「ご好意」により、子ども能は能楽公演とは離れる事とはなりましたが、これまで通り上演を続ける事になりました。ありがたや~(・-・)

今回は大きなホールではなくて神社の秋祭りに神楽殿での上演…存続はできても これで子ども能の出演者も半減か? と危惧したのですが、意外や20名以上の応募者を得て、しかも去年までのメンバーはほぼ全員顔を揃えています。(゜_゜;) おお、そうか。また一緒にがんばる~? は~い!(^^)V …ってなワケで、今年も子ども能の稽古を始めたのでした。例年と比べ、かなり遅いスタートではありましたが…

そうしたら、またしてもお母さん方から、「今度こそ本当にすべてが変わったのですから、ユニフォームのTシャツを新調したらどうでしょうか?」という…これは今度は強いメッセージとして ぬえに響いて参りました。よし、やってみるか!

…こうして新調することになったTシャツ。ところが ぬえはこういう事をやった事がありませんで、う~ん う~んと困ったあげく、ついにネットで どなたかTシャツのデザインを作ってくださいませんか~? (・_・、) と、公募まがいの事をしてみたのです。

そうしたら…これはミクシイに載せたメッセージに対して頂いた応募でしたが、kyoran(きょうらん)さんとおっしゃる方から思いがけずエントリーがあったのです。これを見て、まずは ぬえもビックリ。具体的なイメージの案まで頂いたうえでの応募で、これならば! と、すばらしい成功が直感されました!

すぐに kyoranさんにご助力のお願いを致しましたが…まさか その後、ぬえはkyoranさんに、あんなにご迷惑を掛けることになろうとは…(T.T)