ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

子ども能…大成功で終了しました~(その4)

2010-11-08 02:07:27 | 能楽
明日から3日間、東北~関東北部で学校公演に出かけてくる ぬえでございます~

さて子ども能の当日は快晴で、少しだけ雪を頂いた富士山もみごとに映えて見えました。開演時刻は午後ですので、子ども能のお手伝いをお願いした能楽師のみなさまには、それまでの時間をちょいと市内観光を楽しんで頂くことにして、伊豆の国市の最高峰・葛城山に登って頂きました。

とはいえ もちろん登山をさせたのではなくて、山頂までロープウェイが通じているんです。ここから見渡す駿河湾・淡島・沼津・箱根。富士山はまさに絶景。不思議なことに伊豆から富士山が見えるのは秋~春までに限られていまして、4月を過ぎるとなぜか富士山は霞に隠れて見えないんですよね。この日は富士山もよく見え、また気温もさわやかで、葛城山頂からの眺望はさぞや素晴らしかったと思います…と人ごとのように言うのも、ぬえは上演準備があるので、能楽師のみなさんをロープウェイ乗り場までお連れして、あとは昼食を召し上がって頂いてからタクシーで楽屋に来て頂くことにして、ぬえはひと足早く楽屋に行ったからなのでした。



ちなみに昼食も ぬえお勧めのお店をご紹介しました。ここがまた…とろろ麦飯屋さんなのですが、これが美味しいのよね~

さて楽屋となったのは神社のお隣の保育園。まさに子ども能の楽屋には うってつけでした。(^◇^;) そのうえこの日は神社の祭礼とて、出店もた~くさん出ていまして、お客さんも大勢集まっておられます。ぬえの昼食は、この出店の焼きそばに決定。(;^_^A

上演の準備を進めながら、午前11時に上演される、この神社に伝わる「三番叟」を拝見しました。

じつは子ども能が今年から民間レベルの催しになった際に、一番の問題となったのは上演の場所なんです。まさか大きなホールを借りる費用なんてありませんし、もし借りることができても宣伝費もないので、お客さまに来て頂くことは不可能…そこで実行委員会さまの提案で、市内の神社のお祭りの場での上演となったのです。

それだけではなくて、当地にはいくつかの神社に、江戸時代から伝わる郷土芸能の「三番叟」が今でも残されていて、祭礼の際に上演されるのです。この「三番叟」に「子ども能」をぶつけて上演する、というのが実行委員会の計画なのですね。

「三番叟」は古くから当地に伝わっているわけですが、それは当地に金山があったことが大きく関係しています。伊豆には金山がいくつかあって、江戸時代には金山奉行が幕府から派遣されていました。どうもそれが当地に能を持ってきたようで、能から民俗芸能へと形を変えて、それぞれの神社に「三番叟」という形で残されている、ということのようです。

で、その「三番叟」なのですが、ふむ…詞章は『翁』…というか、やっぱり『三番叟』と同じようですね。小鼓三挺に大鼓、という囃子の編成も『三番叟』と同じ。ただ、笛は能管ではなく篠笛のようでしたが。

そうして特徴的なのは、登場した三番叟の役と面箱持ち…なのか千歳なのかの役が、子どもが勤めていることです。しかも二人とも顔に化粧をして、そうしてそのうえに舞の後半部(『三番叟』で言う鈴之段)では、その白塗りの顔の上に黒式尉のような面を掛けるのです(!)。