ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

子ども能…大成功で終了しました~(その6)

2010-11-18 02:09:47 | 能楽
子ども創作能は、もう11年目を数えるのですが、作品もすでに3作目になるんですね~。

今回の演目『伊豆の頼朝』は、去年初演を迎えたのですが、その時は主役・準主役を勤める小学6年生がほとんど男子ばかりという、ちょっと子ども能の歴史の中でも異例の年でありました。やっぱり台本というものは、その主役候補の子どもたちの顔ぶれを見て考えるところが大きいです。それで去年は能『正尊』をベースにして新作の台本を作りました。…ところがヘンなところがマジメな ぬえ…題材が平治の乱のあと伊豆に流刑になった頼朝が挙兵するところ、と決まって、『吾妻鏡』や『源平盛衰記』を調査したまではよかったんですが…頼朝が読み上げる後白河法皇からの院宣の本文を、どうしても子ども用に易しい文章に作文する…というか改変することができなくて、『吾妻鏡』そのままの文章を6年生に謡わせちゃいました…これは酷だったかも。それでも頼朝役に決まった「瞭」は、立派に勤めを果たしました。子どもに助けられちゃイカンです…

それと、頼朝軍に敗れる平家の伊豆目代の山木兼隆。どうやって敗戦を表現するかに悩んで、その役に当たった「礼智」に特技を聞いたところ、側転なら楽勝、との答えでした(!)。能では考えられない型ですけれども、それならっ てんで型にしてしまいました。結果はお客さんのどよめきが起きる大成功の演技でした。子どもに助けられちゃイカンです…

それでまた今年。事情もあって稽古が少なかった理由もあって『吾妻鏡』の院宣はカットしましたが、なんと今年の6年生は女子ばっかりでした(!)。去年作った型は男子を想定していたので「側転」でもよかったのですが…女の子がやるかなあ??

意外や反応はすさまじくて、舞台上での側転やりたさに兼隆役が一番人気だったようです。結局 兼隆役に決まったのは ぬえが普段からお仕舞の稽古をしている 珠里(みさと)で、ん~、彼女は去年から ぬえに「側転できるよ~!」ってアピールしてましたな… 珠里は当日の上演本番では、とんでもない大声で謡って、あれで一挙に舞台が締まりました。おい、その声…稽古で聞きたかったぞ…

といううちに、山口宏子さんから子ども能の写真が送られてきました。せっかくだから、台本の説明とともにご紹介してゆきましょう。

治承4年8月。折しも三島大社の祭礼の夜、伊豆目代・山木兼隆の邸の兵もことごとく参拝に出払った折に、兼隆は宿直の侍をねぎらうために酒宴を催すよう命じます。



一方、高倉院と後白河法皇の度重なる宣旨によって挙兵した頼朝が登場。



伊豆山神社・三島大社。そして分けても源氏の氏神たる都・男山八幡宮をはるかに拝して戦勝を祈願した頼朝は、一路山木館に急ぐのでした。