静岡市清水区はかつては清水市として独立した地方自治体でしたから、行政機関や図書館なども今でも当地の情報を濃密に残しています。今回の取材は静岡市役所から始まったのですが、そこでも清水区の区役所や、清水の事情に詳しい方をご紹介頂きました。なるほど、やはり詳細な調査は地元に足を向けるに限りますね。
その中でも今回特筆すべきは静岡市立清水中央図書館に展示されているエレーヌの遺品の数々です。…どうもエレーヌの遺品がどこぞに展示されているらしい、という情報は ぬえも以前に耳にした気はするのですが、ついに現物に巡り会うことができました。
こちらが展示の全貌です(許可を得て撮影させて頂きました)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/da/f6de62e00abda1a07b5fd81731bf824a.jpg)
以下、各展示品について見てみましょう。
こちらはエレーヌ手製の長絹。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/02/1bcbda645748db8fda33a093ea951164.jpg)
これは「羽衣」専用の長絹を写したものと思われます。これと同じような文様の長絹もないではないですが、本来は鳳凰の「背中」を金地の長絹いっぱいに織り出したもので、鳳凰の頭はないのです。この長絹を羽織ったシテの頭が、そのまま鳳凰の頭に見立てられる、という凝った趣向の長絹で、両袖に鳳凰の翼がいっぱいに表わされます。金剛家の所蔵になる長絹が著名ですが、ぬえの師家にも同じ文様の古い長絹があります。
この長絹…だいぶ厚い生地で作られていまして…ぬえの推測では、おそらく厚手のカーテンではないかと思います。袖露にあたる部分に「房」がつけられていますが、これもカーテンをまとめるためのものを転用したのではないかと思います。平絽に織られた長絹の軽やかさは出しにくいでしょうが、おそらく素材まではわかりにくかったであろう写真を参考にしたもので、そのうえ鳳凰の図はエレーヌが自ら描いたのだそう(!) …展示こそされていませんでしたが、ほかにも天冠もエレーヌの手製で、かなり驚異的な才能と情熱によって作られたものだということは すぐに胸に迫ってきます。
さてこちらはエレーヌが所蔵した面。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/4e/0f32a9b14a79a10f13aabfc91d3afa0d.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/19/87dde77f9cd3b85ed93c44a51087b04e.jpg)
面裏に「春若」と記されているそうです。春若(しゅんわか)は室町時代の面打ちで「六作」と数えられた人ですが、おそらく女面は残されている例はないと思います。確かに古面ではあるようですが、春若の真作であるかは…ちょっとわかりません。作としてはあまり優品とはいえないと思いますが、戦争直後のフランスでこういう時代のある面が手に入った、ということの方を驚くべきでしょう。…ただ、残念なことに剥落が多くて、エレーヌが愛用した時代から比べて見てもあまり保存状態はよくないようです。
その中でも今回特筆すべきは静岡市立清水中央図書館に展示されているエレーヌの遺品の数々です。…どうもエレーヌの遺品がどこぞに展示されているらしい、という情報は ぬえも以前に耳にした気はするのですが、ついに現物に巡り会うことができました。
こちらが展示の全貌です(許可を得て撮影させて頂きました)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/da/f6de62e00abda1a07b5fd81731bf824a.jpg)
以下、各展示品について見てみましょう。
こちらはエレーヌ手製の長絹。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/02/1bcbda645748db8fda33a093ea951164.jpg)
これは「羽衣」専用の長絹を写したものと思われます。これと同じような文様の長絹もないではないですが、本来は鳳凰の「背中」を金地の長絹いっぱいに織り出したもので、鳳凰の頭はないのです。この長絹を羽織ったシテの頭が、そのまま鳳凰の頭に見立てられる、という凝った趣向の長絹で、両袖に鳳凰の翼がいっぱいに表わされます。金剛家の所蔵になる長絹が著名ですが、ぬえの師家にも同じ文様の古い長絹があります。
この長絹…だいぶ厚い生地で作られていまして…ぬえの推測では、おそらく厚手のカーテンではないかと思います。袖露にあたる部分に「房」がつけられていますが、これもカーテンをまとめるためのものを転用したのではないかと思います。平絽に織られた長絹の軽やかさは出しにくいでしょうが、おそらく素材まではわかりにくかったであろう写真を参考にしたもので、そのうえ鳳凰の図はエレーヌが自ら描いたのだそう(!) …展示こそされていませんでしたが、ほかにも天冠もエレーヌの手製で、かなり驚異的な才能と情熱によって作られたものだということは すぐに胸に迫ってきます。
さてこちらはエレーヌが所蔵した面。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/4e/0f32a9b14a79a10f13aabfc91d3afa0d.jpg)
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面裏に「春若」と記されているそうです。春若(しゅんわか)は室町時代の面打ちで「六作」と数えられた人ですが、おそらく女面は残されている例はないと思います。確かに古面ではあるようですが、春若の真作であるかは…ちょっとわかりません。作としてはあまり優品とはいえないと思いますが、戦争直後のフランスでこういう時代のある面が手に入った、ということの方を驚くべきでしょう。…ただ、残念なことに剥落が多くて、エレーヌが愛用した時代から比べて見てもあまり保存状態はよくないようです。