またも来よ柴のいほりをいとわずばすすき尾花の露を分け分け 良寛
*
もちろん相手は貞心尼。また来てくださいね、わたしの住んでいる国上山の中腹の、粗末な柴の庵がお嫌でないのなら、すすき尾花の茂る山道の、露に濡れぬようにして、草をかき分けかき分けて。
*
と良寛さまは歌を贈られたが、さて、それから、しばらく貞心尼の訪れがない。良寛さまはお寂しくなられた。そこでまたもう一首をお作りになった。
きみや忘る道や隠るるこの頃は待てど暮らせどおとづれのなき 良寛
あなたはわたしをお忘れになられたのだろうか。それとも来る道をお忘れになられたのだろうか。あなたにお会いするのをしきりに待っているが、ここのところあなたは顔を見せてくれない。
*
えええん、えええん。良寛さまの泣き声が聞こえてきそうに直截な、遠慮も羞恥ない、ラブコールである。純情可憐な幼さのまま。七十を越した禅師なのに、まるでこれはやんちゃ坊なみだ。もうすぐ死ぬというのに、死ぬまで、かくもひたむき。
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もちろん相手は貞心尼。また来てくださいね、わたしの住んでいる国上山の中腹の、粗末な柴の庵がお嫌でないのなら、すすき尾花の茂る山道の、露に濡れぬようにして、草をかき分けかき分けて。
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と良寛さまは歌を贈られたが、さて、それから、しばらく貞心尼の訪れがない。良寛さまはお寂しくなられた。そこでまたもう一首をお作りになった。
きみや忘る道や隠るるこの頃は待てど暮らせどおとづれのなき 良寛
あなたはわたしをお忘れになられたのだろうか。それとも来る道をお忘れになられたのだろうか。あなたにお会いするのをしきりに待っているが、ここのところあなたは顔を見せてくれない。
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えええん、えええん。良寛さまの泣き声が聞こえてきそうに直截な、遠慮も羞恥ない、ラブコールである。純情可憐な幼さのまま。七十を越した禅師なのに、まるでこれはやんちゃ坊なみだ。もうすぐ死ぬというのに、死ぬまで、かくもひたむき。