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抱きしめることのできない

2006年07月15日 17時23分30秒 | Weblog
 抱きしめることのできない金魚かな   埼玉県 松本みゆき

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 今朝のNHK短歌の時間に放送された入選句。情感があふれていて、とても枯淡の俳句にはほど遠いが、わたしは人の情を感じて、捨てがたかった。

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 金魚もペットだろう。愛玩しているのなら、ペットであり得る。猫や犬だったら、情が移って胸にかき抱くこともある。でも、いくら可愛がっていても金魚を抱きしめることはない。作者は、それはおかしいと思ったのだろうか。

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 ぼくは、これは、じつは金魚を歌っていて、金魚を歌ってなんかいないのではないかと勘ぐってしまった。金魚は金魚のように可愛がっている人のことではないか。息子や娘のことではにか。遠くに離れてしまった人ではないか。

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 親子でも抱きしめ合うことはできない。反抗期になればなおさらである。怒ること叱ること教育することを優先するママも、もはやこどもを抱きしめることができない。抱きしめることは甘やかしになると教えられるとその夜から抱きしめることができなくなる。

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 抱きしめることはかほどに難しい。恋人のうちに、何度も強く強く抱きしめておくべきである。どうせこの世は無常である。会ったら別れなければならないのである。金魚を抱かなくていいから、心を込めて人を抱こう。抱いて受けとめよう。是非善悪、賢愚美醜、大小長短、どっちもいいではないか。目くじらを立てるな立てるな。みな一束にして抱こう。
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