「蕾」
庭の姫林檎が蕾を着けたぞ。
ほんのり赤いぞ。
まあるくふくらんでいるぞ。
わくわくわくわくだろうな、心中。
膨らみの中は全部丸いわくわく粒だろうな。
粒がぐるぐる回転しているだろうな。
こうして五月現在の中心生命体本部は、
そこら中、球体の明日でふくれあがる。
大空から光がありったけ下りて来て包む。
包みきれない光はまわりにあふれだす。
おいらはそれを見ている。
見ているだけなんだがそれでいい。
内なる小宇宙が一杯になって満ちる。
だというのに蕾のわくわくが、
心拍の心臓目掛けて弾け飛んで来て、
おんなの人のような指で撫でて、
おいらを見たこともない無限歓喜世界に、
連れ出そうとする、しきりにしきりに。
姫林檎が蕾を今日三つ着けたぞ。
みんなほんのりほんのり赤いぞ。