8
ああ、豆ご飯が食べられた。豆は五月の恵みもの。ということは、老爺は季節の食事ができたということだ。
これを今日の嬉しいことにしよう。そうしようそうしよう。
9
蛸ご飯は駅弁などで手に入る。でも、この老爺は旅に出ているわけではない。駅弁は買えない。のに、食べられた。
これも今日の嬉しいことにしよう。一個追加だ。
8
ああ、豆ご飯が食べられた。豆は五月の恵みもの。ということは、老爺は季節の食事ができたということだ。
これを今日の嬉しいことにしよう。そうしようそうしよう。
9
蛸ご飯は駅弁などで手に入る。でも、この老爺は旅に出ているわけではない。駅弁は買えない。のに、食べられた。
これも今日の嬉しいことにしよう。一個追加だ。
4
此処にはもう一品が加えてあった。蛸が加えてあった。
5
だから豆ご飯であって、蛸ご飯だった。
6
蛸は口の中でくりくりした。くりくり跳ねた。
7
その間しばらくわたしは青い海になっていた。
1
朝食は豆ご飯だった。この豆はグリンピース。我が家の畑に実った豆。
2
もいできたのは我が娘。莢を剥いたのはこの老爺。料理したのは老嫗。
3
緑色の緑が白ご飯の中で冴え渡っていた。
7
虚空よ虚空よ。ああ、虚空よ。涅槃の虚空よ。衆生は、尽きない虚空の中にいて、そこで伸び伸びと無限大に広がって、今日の日を安らぐばかり。
願いが尽きるということがあろうか。仏陀の願いが尽きることがあろうか。
ああ、虚空が尽きるということがあろうか。
6
菩薩の願いが尽きるということがあろうか。仏陀の願いが尽きるということがあろうか。
尽きない願いの中に、わたしのいのちが活動している。
5
虚空は大空。夏空。銀河宇宙。いのちの宇宙。
今日の虚空は雨に煙っている。虚空は虚にして空であるが、なお此処に在って雨に煙っている。
4
肉体が尽きたとしても、願いが死に絶えるということがあろうか。死に絶えてしまうということがあろうか。
ああ、衆生の生きる虚空が、我が眼前で輝き渡る。涅槃がこの虚空へ吸い寄せられて来て、我が眼前で燦々と煌煌と輝き渡る。
3
虚空が尽きるということはない。生きとし生きる者がすべて死に絶えて尽き果てるということもない。
であれば、衆生が赴くところの涅槃界が尽きてしまうということもない。
であれば、仏道を歩む菩薩や如来の、衆生救済の願いが尽きてしまうということもない。
衆生救済の願いは、わたしの中でますます烈々として燃えているばかりだ。
2
衆生は生きとし生けるもののすべて。虫であろうが魚であろうが、動物であろうが植物であろうが、鉱物であろうが、ウイルスであろうが、命を持ってこの世を生きていこうとするもののすべて。
虚空は、その衆生の住み処とするところ。
涅槃は、その衆生のやがて赴くところ。活動を終わって静かになれるところ。
我が願いとは、自利利他の願い。
自利は「求菩提(ぐぼだい)」。菩提を求めるこころ。利他には欠かせない自己成長。
1
虚空尽き、衆生尽き、涅槃尽きなば、我が願いも尽きん。
☆
これは弘法大師空海が残した言葉。
☆
此処を今日は味わう。
甘露の飴玉にして。舌の上に載せて。転がして。溶けるのを待って。嘗めて嘗めて。