「山田錦-酒造好適米」
イネ(稲)の品種の一つ。主に日本酒醸造に用いられており、酒造好適米(酒米)の代表や「酒米の王」ともいわれる。食用も可能である。2022年時点で酒米のうち最大の生産量を誇り(推計27,992トン)、2位に「五百万石」(推計14,865トン)、3位に「美山錦」(推計3,760トン)が続く。同年時点でその生産量の約56%を兵庫県産が占めている。
誕生
1923年(大正12年)に兵庫県明石市の兵庫県立農事試験場(現:兵庫県立農林水産技術総合センター(加西市))で「山田穂」と「短稈渡船」を人工交配させて誕生した。1928年(昭和3年)に兵庫県加東郡社町(現:加東市)の酒造米生産地(現:酒米試験地)で産地適応性の試験が行われた。1936年(昭和11年)に「山田錦」と名付けられ、兵庫県の奨励品種になった。「山田錦」の「山田」は「山田穂」から取り、「錦」は命名当時の稲の品種名に一般的に用いられていたことから名付けられた。当初は「昭和」とする予定であったが、現在の名称に変更した経緯は不明である。1945年(昭和20年)7月6日の明石大空襲により、兵庫県立農事試験場本館が焼失し、この年までの資料を焼失した[12]。
酒造好適米の代表
一般的に、山田錦を酒米に使用した場合の日本酒の官能評価は、大吟醸酒で華やかな吟醸香とスッキリとした味わいに優れ、「やや甘みが強く味わいがある」とも評されている。
山田錦の登場以後、全国新酒鑑評会では酒米に山田錦を使用した日本酒が上位を占めるようになっていった。1985年(昭和60年)頃から、酒米に山田錦(Y)を、酵母にきょうかい9号(K)を使用し、精米歩合を35%まで高めれば、鑑評会で良い成績が獲れるとする「YK35」という公式のような言葉が酒蔵関係者の間で使われるようになった。このため、鑑評会では2000年(平成12年)度から山田錦の使用割合別にI部とII部を設け別々に品評した。
その後、山田錦以外の原料米の向上に伴い、越淡麗、千本錦、美山錦、秋田酒こまちなど山田錦以外の酒米の使用を主体とした出品酒の増加と、それらの酒と山田錦を使用した酒との評点の差が減少したため、2010年(平成22年)度からI部とII部は廃止された。しかし、同時点では依然として山田錦を主体とした出品酒の金賞受賞率が高く「山田錦の優位性を感ずるところ」と総括されている。
古酒にも適している。
品種の特徴
稈長と穂長を合わせた身長が約130cmと長いため風で倒れやすく、育つのに時間がかかり、病気や害虫に弱いので一般的な食用米に比べて作りにくい品種である。一般的な食用米の千粒ごとの重さは22グラム程度、一般的な酒米の重さは25 - 29グラムであるが、山田錦は27 - 28グラムと酒米の中でも比較的大粒である。米粒が大きいため砕米が少なく高精米が可能であり、粘度と強度の高い大きい心白は吸水性が良く麹菌が入り込みやすく醪に溶け出しやすいため吟醸造りに優れ、タンパク質とアミノ酸も少なく雑味が少ない酒に仕上がるため、大吟醸酒などの高級酒造りに適している品種である。
*Wikipedia より
*農研機構HP より