第53回 2014年4月1日 「おいしさ作る魅力の調理道具~三重 桑名 キッチン鋳物~」リサーチャー: 平山あや
番組内容
今回は三重県桑名のキッチン鋳物。入手まで2年半待ちという人気のフライパンや、高校生シェフと職人が共同で開発したキュートなご飯釜など、アイデア豊かな調理道具を次々に生み出している。完成までに、どんな職人ワザや試行錯誤が?イッピンリサーチャーの平山あやが製造現場に出向き、驚きの職人技に出会う。また実際に使ってみたり、料理を食べたりと、キッチン鋳物の実力を体感。料理が楽しくなる鋳物の魅力を伝える。
*https://www.nhk.or.jp/archives/chronicle/detail/?crnid=A201404011930001301000 より
「鋳物」(いもの)とは、アルミ、銅、鉄などの金属材料を溶かして型に流し入れて作る製品のことです。
三重県桑名市では、徳川四天王の一人である本多忠勝が桑名藩主となり、鉄砲の製造を始めたのが「くわな鋳物」の起源と言われています。
従来の工法に代わって、低コスト・大量生産に優れた天然産の砂を使って造形する「生型法」(なまがたほう)を導入したこと、隣村の小向(現在の朝日町)で「生型法」に最も適した鋳物砂が発見されたことから、鋳物は桑名の地場産業として確固たる地位を築いていきました。
そして明治、大正期を通じて、「東の川口、西の桑名」と呼ばれる、我が国二大鋳物産地が確立されました。
最初は製麺機や水道器具などの機械鋳物、次第にミシン鋳物など各種の機械鋳物が造られるようになり、昭和15年頃まではストーブ、鍋類、氷削機、ミシン、ガス器具などの日用品が多く製造しました。
終戦後は産業・経済の復興に続く高度成長の波に乗って近代化が進み、工業製品や建設材料を主力として発展しました。
現在、三重県桑名市には、およそ40軒の鋳物工場があり、「くわな鋳物」としてブランド化を図り、新たな商品開発へと踏み出しています。
桑名商工会議所にある鋳物の展示室には、家庭用たこ焼き器やステーキ皿など調理道具がずらりと並んでいます。
1.「魔法のフライパン」(錦見鋳造)
「錦見鋳造」の「魔法のフライパン」は、米NYのトップシェフも愛用する鋳物製フライパンです。
軽くて使いやすいのに、プロのような調理が出来ると人気で、生産が追いつかず、予約から手元に届くまで2年半待ちだそうです。
特徴1.鉄鋳物限界ぎりぎりの薄さ!厚さ1.5mm
従来、鉄鋳物の厚さは約4mm〜5mm。
厚いと重くて扱いづらいのですが、「魔法のフライパン」はその1/3の1.5mmで鋳造することに成功しました。
特徴2.他の製品に比べて軽い
1.5mmという薄さを実現することによって、飛躍的に軽量化させることに成功、その重さ1.15kgです。
従来の鉄製フライパンにはな薄さと軽さなので、段使いしやすく女性の方でも簡単に使用出来ます。
特徴3. 鉄製だから遠赤外線でふっくら焼ける
鉄素材なので「遠赤外線」が発生し、食材をふっくらと焼き上げることが出来ます。
また、表面全体に炭をコーティングしてあるので、食材を入れても温度が下がりにくい構造となっています。
そのため揚げものはカラッと仕上がり、チャーハンも簡単にパラパラに出来ます。
なお「魔法のフライパン」は、24cm、26cm、28cmの3サイズ用意されています。
極薄フライパンを開発したのは、「錦見鋳造」の社長・錦見 泰郎(にしきみ やすお)さんです。
錦見さんの工場は元々自動車部品などを作っていましたが、バブルが弾けて経営不振になったことから、生き残りをかけて薄いフライパンを10年かけて平成14(2001)年に「魔法のフライパン」の開発に成功しました。
「なぜフライパンだったのか?」
それは、錦見さんが食べることが大好きだったからだそうです。
鋳物は、溶かした金属を型に流し込んで作るので、複雑な形状のものを一体で形づくることが出来るのが特徴です。
これまで50年以上に渡って培ってきた精密鋳造技術を生かせば、世界初の薄い鉄鋳物の「フライパン」が作れるのではないかと感じ、「フライパン」づくりに着手したそうです。
鋳物は1500度に溶けた湯という鉄を使って作りますが、薄いフライパンをつくるためにはわずか1.5mmの型に湯を流し込まなければなりません。
すばやく湯を流んが型1つ当りに掛ける時間はおよそ2秒です。
錦見鋳造 三重県桑名郡木曽岬町栄262
2.ふっくら炊ける!キュートなごはん釜(桑原鋳工/高校生レストラン)
「高校生レストラン」で有名な、三重県立相可(おうか)高校が運営するレストラン「まごの店」では鋳物出来た丸みのある「ごはん釜」が使われています。
開発したメーカー「桑原鋳工」では、持ちやすい取っ手の形状、滑らかな鋳肌(いはだ)など、調理クラブの部員と顧問教諭である村林新吾先生の提案を基に3年間に及ぶ試作を経て、可愛いお釜が出来上がりました。
「ごはん釜」はフッ素加工を施してあるため、焦げ付きにくく、お手入れラクラク。
取っ手が大きく、持ち運びやすい。
1合炊き、2合炊きの水位線が設定してあります。
I H機器にも対応していて、勿論、ガスの直火もOKです。
この「ごはん釜」は炊飯以外にも、カレーやシチュー、肉じゃがなどの煮物料理に、土鍋の代わりに鍋料理として、アルミホイルで包んだサツマイモを入れてそのまま火にかければ「焼き芋」にと、いろいろ活用出来ます。
そもそも「桑原鋳工」は、マンホールの蓋や水道管の部品を手掛けるメーカーで、完成までには四苦八苦したそうです。
特にデザインには悩み、高校生シェフの意見を何度も聞きました。
桑原鋳工 三重県桑名市東汰上518
*https://omotedana.hatenablog.com/entry/Ippin/Mie/KuwanaImono より